アフリカ大陸のちょうど真ん中に位置するルワンダ。日本は今年、この国との友好関係樹立60周年を迎えた。かつては凄惨な内戦が起きたルワンダだが、ここ数十年で「アフリカの奇跡」と呼ばれるほどの発展を遂げ、現在はコーヒーの新たな産地としても知られている。
今回取材したのは、井上貴絵さん。来年JICA海外協力隊としてルワンダに派遣され、現地のコーヒー農家たちと生産現場で活動する予定で、取材の一週間前にJICA二本松訓練所に入所したばかりの訓練生だ。

コーヒーとの出会い

井上さんがコーヒーと出会ったのは大学3年生の時の事。「大学生ってカフェでバイトとか憧れますよね」。そういって笑う井上さん。ちょうどオープニングスタッフを募集していた東京吉祥寺のミカフェートでアルバイトを始めた。

笑顔がまぶしい井上さん

ミカフェートは、José.川島良彰さんが経営するコーヒー店。川島さんは、世界各地のコーヒー農園で長年コーヒー栽培の技術指導を行い、マダガスカルでは絶滅危惧種マスカロコフェア種の発見・保全に成功、フランス海外県レユニオン島では絶滅種ブルボン・ポワントゥを発見し、産業復活プロジェクトを立ち上げたことなどから、「コーヒーハンター」としても知られている。現在、JICAのコーヒー技術の専門員やJICA海外協力隊の技術顧問としても活躍中だ。

そんなミカフェートでのアルバイトをきっかけに、井上さんはコーヒーの奥深さや品質管理の大切さ、そして、コーヒーのもたらす幸せを学んだ。井上さんは、JICA海外協力隊で再び川島さんと仕事ができることに運命を感じているという。

コーヒーと関わっていく井上さんの決心

ミカフェート時代の店長(右)と再会して

井上さんはこれまでミカフェートをはじめ、純喫茶店、駅中のカフェなど様々なスタイルで提供するコーヒー店に勤務してきた。勤務の傍ら、社会人が通える学校でコーヒーについての知識を得て、資格取得にも励んだという。

日本で消費者として、そしてコーヒー提供者としての経験を積んできた井上さんはある日、「これからもコーヒーと関わっていくのならば、生産者の目線も知らないといけない!」と一念発起した。

そして長期的にじっくりと腰を据えて挑戦したいと思い、「コーヒー 長期ボランティア」でインターネット検索すると出てきたのが、JICA海外協力隊だった。 

合格通知を受けて挑戦したのが、鳥取県南部町で実施している、JICA海外協力隊グローカルプログラム。ルワンダではコーヒーの生産者と活動予定の井上さんだが、これまで農業経験はなく、ここで初めて農業の経験をした。

鳥取県南部町で農作業中の井上さん

最初は何からしていいか分からなかったが、町の人々に助けられながら、自分から動けるようになった。そうして、農業のことはもちろん、自分から動くことの楽しさを知ったという。

ルワンダ人に美味しいコーヒーの味を知ってほしい

現在60人の仲間と二本松訓練所で言語の習得や様々な講義を受けている井上さんは、講義時間外も前任者の報告レポートなどを読みこんでいるそう。

歴代の前任者がそれぞれ報告レポートに記載しているのが、生産者はコーヒーに親しみがないということ。飲んでも苦いし、高価で、輸出するものという意識があるようだと報告レポートから分析している。

生産者にも、美味しいコーヒーやフードペアリングや楽しさなどを知ってもらいたい。そして、コーヒー生産へのモチベーションをあげてもらえればと目を輝かせる。

ルワンダではきっと、消費者のニーズやコーヒーがもたらす幸せを伝える橋渡し役となるだろう。現地の人々とコーヒー片手に大笑いしている井上さんの姿が今から目に浮かぶ。

国旗の前で協力隊同期と一緒に

そんなルワンダと日本との関わりについて学べるセミナーとルワンダコーヒーの試飲会が、12月11日に岡山コンベンションセンター(岡山市)で開催される。井上さんが来年挑戦する世界を、一足先に味わってみてはいかがだろうか。

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