保育所や幼稚園に通う子どもたちにとって遊びは学びの連続。そして遊んだ後の「片付け」も、子ども達の成長にとって大切なことの1つです。しかし、保育所や幼稚園内にとどまらず家庭においても、子どもの「片付け」で頭を悩ませている人は多いのではないでしょうか。
例えば、「子供が片付けようとしない」「スッキリ片付かない」「取り出しにくい」など……悩みはつきもの。香川県高松市国分寺町にある「tanaya(たなや)」では、元保育士の松本祐一さんと田中伸祐さんがそんな悩みに応えてオーダーメイド家具を製作しています。

左が田中伸祐さん、右が代表の松本祐一さん。tanaya工房にて。

保育士時代に「ないなら作ろう!」

松本さんも、田中さんも、元保育士。20年以上保育の現場で子どもたちと過ごしてきました。

「ここにちょっとした棚が欲しいという要望は常々ありましたが、角が丸くてケガしないような子ども向けの家具を購入するにはコストがかかりすぎたり、欲しいサイズがなかったりと、なかなか要望に合う棚が見つかりませんでした。そこで、ないなら作っちゃおう!というのがはじまりでした」
当時は、子どもたちの保育に関わりながらも、合間を縫って木工作業をしていたのだとか。現在も、勤務していた保育所では2人が作った家具が使われています。

もともとあった色紙を入れるキャビネットを利用しながら、ハサミ置き場や画用紙などの置き場も作り、色紙遊びに関連するものが一挙に揃う棚に。

保育士の視点や経験を活かした家具づくり

「保育士として長年同じ保育所に勤務していましたが、棚づくりのニーズは絶えなかった。次々に“こうしてほしい”という要望が出てくるんですね。だったら、ほかの園でも困っている人はいるんじゃないかな、と思って独立を考え始めました」と松本さん。

「私も保育士時代に、収納のことではストレスを感じることが多々ありました。鍵盤ハーモニカがきちんと収納できる棚がないんです。片づけている棚が鍵盤ハーモニカのサイズに合っていないので、棚からはみ出ている状態。これは、保育士をしながらずっと気持ち悪いなぁと思っていました」と田中さん。

ほかにもお道具箱を積み重ねて置いていたので、下のお道具箱だけを取り出そうとするとなだれが起きてしまい、うまく取り出せないということも。
そこでお道具箱のサイズに合わせて収納棚を作り、子どもたちだけで取り出しやすく片づけしやすい棚を開発しました。

お道具箱収納before

お道具箱収納after

「子どもにとって“自分でできた”という経験が大切なのに、それができないのは収納環境のせいだとしたら?それは子どものせいじゃなくて、大人のせいなのでは?と思うんですよね。子どもが自分で取りに行って、きちんと片づけできたら褒める。それが子どもにとって自信になるんです」と松本さん。

天板の上で遊ぶことをメインに考えた「あそべる棚」。下の棚は仕切りをなくして、おもちゃを両サイドから取り出せるように設計。

こうして生まれたtanayaの家具は、元保育士の目線を活かし、子どもが能動的になれる設計になっています。そして、tanayaのコンセプトである“子どもも大人も、楽しく・楽ちん”であることに通じています。
今では保育所や幼稚園だけでなく、一般の家庭用の家具もオーダーで製作しています。現場に行ってどう使うかをしっかりヒアリングするからこそ、使いやすいオリジナルの形が出来上がります。

子どもがケガしないよう角は丸く。集成材も厚みのある20mmを使って強度を持たせたり、塗料は木にも人にもやさしいオイルステインをメインに使用しています。

子どもにとっては、“自分でできる”から自信になり、大人にとっては空間や使い方に合った収納があることでストレスフリー。tanayaのオーダーメイド家具は、使う人目線のやさしい設計が魅力です。

保育士の経験を生かし、“子どもも大人も、楽しく・楽ちん”に過ごせる環境を整えていくことをコンセプトに家具を製作しています。

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