大阪市平野区にある、鉄工所をリノベーションしたパンの店「GO to BAKERY(ゴートゥーベーカリー) ゴトウセイサクショ」。外観だけでは「本当にパン屋さん?」と疑ってしまうほど、鉄工所らしさが残っています。理由を取材すると、そこにはオーナーの後藤和子さんの、大切な父との思い出がたっぷりと詰まっていました。

元鉄工所ならではの良さを存分に活用

店のオープンは2015年12月。2013年までは40年近く、後藤さんの父が鉄工所として事業を営んでいましたが、突然他界。後藤さんには兄弟もいますが、府外で仕事をしていたたため鉄工所を引き継ぐ人がいませんでした。

一時は鉄工所を貸し出すという話も出ていましたが、話し合いの末「いつかパン屋さんをやりたい」と思っていた後藤さんが、リノベーションをして店をオープンすることに。

レシピも全て後藤さんが考案

「丸ごと改装せずに、鉄工所らしさを残したのはぶっちゃけ言うとお金の問題だったんです」と話す後藤さん。しかし、客からは「味があっていいね」と言ってもらえることも多いそうです。

鉄工所当時のままの外観

元鉄工所という広いスペースを生かして、飼い犬も一緒にイートインスペースを利用できるようにしています。店では後藤さんが作った犬用のパンや、仕入れている犬用おやつなども販売しています。

「これだけ広いから大型犬を連れてくるお客さんも多いんですよ。私も元々わんちゃんが好きですし、お客さんも喜んでくださるので嬉しいです」

犬用の手作りおやつ「ワンコッペ」

リノベーションをするとき、特に大変だったことは洗浄でした。

「もとが鉄工所だったので、油や鉄くずが凄かったんですよ。飲食店にして、万が一混入なんてしてしまったら大変ですから、洗浄には一番気を遣いましたね」

人も犬も広々と使える空間

新しい形で父の思いを引き継いでいきたい

鉄工所らしさが残るのは、見た目だけではありません。実は店名にも、後藤さんの思いが込められています。

「鉄工所だったときの『後藤製作所』という名前をどうしても残したかったんですよね。鉄工所をそのまま継ぐことはできなかったから、せめて名前だけでもと思っていました」

最初は『後藤製作所』という名前のまま、店をしようと思っていた後藤さんですが「パン屋さんらしさがない…」と周囲に言われ、「後藤」と「GO to」をかけて「GO to BAKERY」に決定。残したかった「後藤製作所」はカタカナ表記にして、小さく残す形となりました。

こだわりの店名「GO to BAKERY -ゴトウセイサクショ-」

「正式名称はめちゃくちゃ長いですけど、父が喜んでくれているといいなと思います」と後藤さん。幼い頃からペンキ塗りなどを手伝っていた後藤さんにとって、鉄工所は父との大切な日々の思い出が詰まった場所です。

客の中には同級生や父の知り合いも多く、これからも鉄工所ならではの特性を生かしながら、地元密着型の店として、細く長く続けていきたいと語ってくれました。

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