2022年1月に行われた「全国U15バスケットボール選手権大会(通称:Jr.ウインターカップ)」で、男子準優勝。同時期に開催された「U15ジャパンクラブバスケットボールゲームス」で女子優勝。近年、躍進を続けているバスケットボールクラブが、大阪の「KAGO CLUB(以下、KAGO)」である。
KAGOは、大阪・福岡・東京を中心に活動しており、小・中学生を対象としたバスケスクールの運営も手掛けている。クラブの生徒を合わせると、その数は約700名。そんなKAGOの設立者であり、ヘッドコーチを務めているのが丸田健司(まるたけんじ)さんだ。

丸田さんは、2021年の「全国高等学校バスケットボール選手権大会(通称:ウインターカップ)」を制した福岡大学附属大濠高校でスキルコーチも務めていて、現在、多方面から注目されている指導者だ。KAGOが持つ強さの裏には、丸田さんが重視する「ある考え方」がある。

考え方の背景にあるアメリカ留学

丸田さんは中学生の頃、アメリカで開催されたマイケル・ジョーダン主催のバスケットボールキャンプに参加した。その経験に刺激を受け、19歳でアメリカへ留学する。2年間の海外生活で痛いほど感じたのは、自ら行動を起こすことの大切さだったという。

「当時はスマホもなく、インターネット環境も十分ではありませんでした。自分で足を運ばなければ、何も得られなかったんです。アメリカではバスケ関係者だけでなく、通訳者やアーティストなど、さまざまな分野の人に出会いました。その積み重ねで、視野が大きく広がりましたね」

アメリカでプレーする丸田さん(写真:丸田さん提供)

丸田さんが自ら行動することで得た経験は、現在のバスケ指導につながっている。

「子どもたちを指導するとき、僕はよく、自分なりに目的を整理して独自の練習メニューを作るんです。メニューを作るときの発想は、アメリカでの出会いや経験がなければ身に着かなかったと思います」

指導で大切にしていること

KAGOでは、「私生活=バスケットボール」という考え方を大切にしている。「私生活でできている部分・足りない部分が、バスケットボールに表れる」という考えで、整理整頓や話を聞く態度などを細かく伝えているという。

子どもたちが脱いだシューズは、綺麗に並べられている(写真:丸田さん提供)

「私生活もバスケも、すべて『自分自身』を構成する要素です。成功も失敗も、『自分自身』が招くもの。だから、私生活で足りない部分は、バスケにも出ると思うんです」

私生活=バスケットボール。丸田さんは、それをコーチ陣にも徹底して伝える。

「もちろん、僕自身にも言えることです。大人も子どもも、同じですから。私生活で欠けていることをごまかすと、成長にはつながらない。逃げているところがあれば、指導にも出てきます」

大人たちが自らを見つめ、バスケに真摯に向き合う。だからこそ、子どもたちもコーチを信頼し、その指導を糧に前進できるのだろう。

道しるべを与える関係性

KAGOの子どもたちは、コートの内外で積極的に言葉を交わし、自分たちで問題解決を図ることが多いという。子どもたちに自立心が生まれる。それも、私生活=バスケットボールという日々の積み重ねによる、副産物のひとつだろう。

「何か問題が起きても、僕が指示する前に、子ども同士で解決しようとする場面は多いですね。僕はあくまでアドバイス役で、子どもたちが育つのを待つ。そうして、折々に道しるべを与えられるような、そんな関係性を目指したいと思います」

KAGOで指導をする丸田さん(写真:丸田さん提供)

KAGOでは、中学生と小学生が一緒に練習していて、「年上の子が年下の子に教える」という構図を徹底している。ここにも、丸田さんの狙いがある。

「身近な人に憧れている状態って、ものすごいエネルギーを出せると思うんですよ。年上の子は、年下の子にとって憧れのお兄さん・お姉さんになってほしいです。それに、自分ができるからこそチームメートに教えれば、自分のレベルもさらに高められる。現状に満足せず、その先へ目を向け続けてほしいと思っています」

いずれは日本の育成を引っ張る指導者に

自身の経験をもとに、独自の指導法を行ってきた丸田さんだが、過去には「自分が周囲とズレている」と感じた時期もあった。しかし、近年の大会での結果やOB・OGたちの活躍が、過去に感じたズレを肯定している。日本では当たり前になっている技術や考え方が、世界ではどうなのか。常に世界基準を考え、スタンダードを見直してきた。

「日本だと当たり前になっている練習メニューに対しても『ちょっと違うんじゃない?』と思うことが結構あったんですよ。でも最近は、KAGOが全国大会で優勝を争えるレベルになって。子どもたちの活躍を見ていると、自分の中にあった"ズレ”は間違っていなかったんじゃないかと思います」

試合中に指示を出す丸田さん(写真:丸田さん提供)

KAGOを全国レベルのチームに成長させた丸田さん。今後は、さらに視野を広げながら、子どもたちが成長できる土壌を作りたいと考えている。

「僕自身は、日本全体の育成を引っ張っていける存在になりたいです。子どもたちが成長できる環境を作るために、自分自身の足りない部分に目を向けながら、もっと、もっと学び続けます」

丸田さんは、これからも新たな道を切り開くだろう。彼が築く道は、たくさんの子どもたちにとって、明るい未来への道しるべになるはずだ。

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