臨床獣医師として動物病院に勤務した経験を持ち、現在は研究員として、がんを含めた難治性疾患の病態解明や新規治療法の研究を行っている獣医にゃんとすさん。ブログやSNSで、猫の飼い主向け情報や、最新の獣医学研究を発信しています。

3月には、ブログを書籍化した「猫をもっと幸せにする『げぼく』の教科書」を出版しました。

『猫をもっと幸せにする「げぼく」の教科書』(獣医にゃんとすさん提供)

情報発信の理由

獣医にゃんとすさんが、情報発信を始めたのにはきっかけがあります。

臨床獣医師の時にユリ中毒の猫を診察し(ユリ科の植物は猫にとっては猛毒)、その猫は治療の甲斐なく亡くなってしまったそうです。飼い主が、自分の知識不足を責めていたのを見て、「ユリ中毒を詳しく説明したサイトは山程あるが、こうした情報にアクセスするには自分で検索する必要がある。知らない情報に自分でアクセスするのは非常に難しい」と考えました。

そこで、飼い主が猫に関する専門的な知識を受動的に得ることができる機会を作りたいと思い、SNSで情報発信をはじめたそうです。

研究論文から科学的根拠に基づいた情報を

獣医にゃんとすさんは、一般の人が自分で調べることが難しい、研究論文などの科学的根拠に基づいた、正しい情報発信を心がけています。

例えば、レーザーポインターなどの光を使った遊びが猫のストレスの原因になる可能性があるという投稿は、Twitterで注目を集めました。

「猫の狩猟行動は、『隠れる→追いかける』『飛びかかる→捕まえる(→食べる)』という一連の流れがあるので、『捕まえる』がないことがストレスになっている可能性が高いと考えられます」

レーザーポインターの光が目に入って視力が低下したり、失明したりという事例は今のところはないそうですが、猫や犬の眼には人間にはない反射板があり、人間よりも網膜を傷つける可能性は高いといいます。

猫が暮らしやすくなるためのヒントも

獣医にゃんとすさんは、「これが危険!」という情報だけではなく、猫が暮らしやすくなるためのヒントも多く発信しています。

例えば、猫じゃらしなどのおもちゃを使った遊びは猫にとって良いそうです。その場合、数回に一度は捕まえさせて狩りを成功させてあげることが大切だといいます。また、猫の狩猟行動は食事の一部でもあるので、シンプルにカリカリ(ドライフード)を投げる遊びもおすすめだそうです。

猫は、私達人間の生活に柔軟に対応してくれているように見えますが、ヤマネコ時代の感覚や習性が多く残っている動物です。「隠れる→追いかける」「飛びかかる→捕まえる」という狩猟行動の一連の流れを意識すると、良い遊びになるということです。

こうした情報発信の背景には、獣医にゃんとすさんが伝えたい飼い主へのメッセージが隠されています。

「猫ちゃんは大切な家族の一員ですが、『猫は人間ではない』ということをもう一度再認識し、猫ちゃんとの生活を今一度見直してみてください」

獣医にゃんとすさんが発信する情報は、知っているつもりでも知らない猫のことを理解する、大きな手助けになるでしょう。

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