10月17日、大阪市でロボットコスプレイヤーたちが集結するイベント「第2次スーパーロボコス大展」が開催されました。そこでひと際注目を集めたのが、アニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』に登場する多脚思考戦車のタチコマです。このタチコマ、人が入り、自走し、腕を動かすこともできます。

制作者は、関西を中心に活動している大学時代の同級生コンビ、Heinzさんともえてつさん。Twitterアカウント(@CosTeam5)で作品を紹介したところ、「こんなん作っちゃうなんてこの人たち頭おかしいよ…」「コスプレは着る時代から乗る時代に」などリアルすぎるタチコマへ驚くようなコメントが多く寄せられました。今回は、これらのコスプレについて、Heinzさんに話を聞きました。

―コスプレのきっかけを教えてください。
コスプレイベントをたまたま見て、その時『面白そうだな。ただ顔を出すのは恥ずかしい』と考えました。顔を隠すとそういう羞恥心もなくなるなぁと思い、ガワコス(※)を作りました。初めて参加した日本橋ストリートフェスタで、大きいプラモデル屋さんの前に毎年ロボコスの人たちが集まっているのが通例になっていて、それを見て『(ロボットコスプレを)やってみよう』と思いました。そして作ったのがメタルギアソリッドの作品になります。
(※)諸説あるが、この記事中では顔を隠すマスクのような外側があるコスプレのことを指す。

ゲーム『メタルギアソリッド』のメタルギアREX。Twitterやブログで調べながら制作したそうです。(@CosTeam5さん提供)

―キャラクターを選ぶ基準はありますか。
2人が共通で知っているもの、好きなもの、作っていて楽しいと思えるもので選びます。クリエイターの方はみんなそうだと思うのですが、作っていく中でやっぱり一番難しいのがモチベーションの維持だと思います。
今回は、もえてつが「タチコマ作りたい」と言ったことと、Netflixオリジナルで攻殻機動隊の最新作が出たということがありました。もちろん今までの全作品見ていましたし、ロボットでありながら1人格も持っていてキャラクターとしてもみんなの記憶に残るタチコマを作ることにしました。

ゲーム『アーマード・コア』よりホワイト・グリント。2人でやるから「自分も頑張らないといかん」と、モチベーションの維持ができるそうです。(@CosTeam5さん提供)

―タチコマを作る中で難しかったところはありますか?
腕・指を動かす仕掛けを作ったところです。このような場合は、マジックハンドを流用して使うことが多いのですが、今回は人がいる場所から動かす腕や指が遠いのでそれが出来ませんでした。カラクリ人形のような形でワイヤーや滑車を使いましたが、そこを最終まで落とし込むまでにやっぱり一進一退ありました。
まずは材料の選定やどのように設置するのかとか、別の部品と緩衝しないようにするにはどうすればいいかのようなことです。物理の基本は高校以来忘れていたのですが、最初は滑車を上手く使って軽い力で動かそうといっちょまえに考えていたのですが、そんなことできるはずもなかったです。

もえてつさんが設計をして型紙をつくり、Heinzさんはそれをもとに造形していくそう(@CosTeam5さん 提供)

―なぜ指を動かす事にこだわったのですか?
ぶっちゃけて言ってしまえば、(ロボコスというより)乗り物ではあるんです。Twitterでのコメントも「これってコスプレじゃないよね」の中に、いろいろな意見の方もいたと思います。一応我々としてはタチコマという1人格の感情表現はどこで表すかといった時に「足を動かすのは無理でも指や肘はちょっと頑張ろうよ」というのがありました。

―制作期間はどのくらいですか。
構想、つまり紙におこす前の話し合いの段階から入れて、8か月です。

―金額はいくらくらいかかりましたか?
今回数字を言うとドン引きされるかもしれないのですが、600万はかかっていますね。「こいつらマジか」って思うかもしれないですが……。
ツイートの組み立て動画を見てもらえば分かるのですが、最初にフレームを組んでいるんですよ。これはもう車のフレーム的な考えで、(動かすための)動力、バッテリー、フレームも合わせて、そこに人が乗って乾燥重量200kgはいくだろうというのは分かっていましたし、やっぱり安全に作らないといけないというのもあって、(お金は)かかりましたね。

―それにしてもすごい額ですね。
指・腕だけではなく、タイヤも一進一退あって、特に前輪の特殊なタイヤになるのも紆余曲折を経てここまでいきました。

―第2次スーパーロボコス大展でのお客さんの反応はいかがでしたか。
「Twitterで拝見してこれを目当てに来ました」という方がいました。反応でいくと「喋らないんですか?」というのはありました。仕込める場所はあるので、もし公式の人からお許しがあればぜひ挑戦したいですね。

取材を終えて

アクションRPG『デモンズソウル』のキャラクター。2人でやっていると、目の前で動いているのをすぐに見られるのが嬉しいとのことでした。(@CosTeam5さん提供)

この話だけを聞くと、「ガワコスってお金がかかると思うかもしれないですが、馬鹿みたいにお金をかける必要はない」とHeinzさんは伝えたいそう。また、「コスプレは見るのも楽しいですが、やるのはもっと楽しいですよ」とも。まだまだコミュニティーが小さいので作りたいと思ってくれる人がいると嬉しいとのことでした。

Heinzさんともえてつさんは、Twitterアカウント(@CosTeam5)のほかに、Instagram(costeam2501)でもコスプレ作品を紹介しています。2人のこだわりのコスプレ活動に注目です。

この記事の写真一覧はこちら