香川県高松市の、海の近くにある『手打ちうどんひさ枝』。一般的な讃岐うどんだけではなく、季節の食材が入った利益のほぼゼロのメニューや、うどん店では珍しい「替え玉」システムなど、驚きのサービスが満載のお店です。今回は、10月1日から販売を開始した「マツタケうどん」や店のこだわりなどについて、店主の久枝了さんに取材しました。

マツタケうどんが誕生したきっかけは

すだちうどんを始めて、自分ではすだちうどんが冷たいものだという思い込みがありました。でもお客さんから「熱いすだちうどんが食べたい」言われて「できるけど、大丈夫?」と聞いたら、「いける」とおっしゃったので、出しました。

すだちうどん(税込500円) 冷たいうどんで夏に食べるのが一般的(店舗提供)

熱いすだちうどんの何が美味しいのかなと思いましたが、自分でも食べてみると『意外においしいな。これ松茸を入れると土瓶蒸しみたいになるんじゃないか』と思い、それからマツタケうどんを作りました。

マツタケうどん1本のせ(税込2400円) 松茸は入れれば入れる程出汁が出るという。(店舗提供)

マツタケうどんは本当に利益がないぐらいで提供しています。この時期だけ来るお客さんもいて、楽しみにしてくれています。やっぱりお客さんに応えたいなという気持ちがありますね。

マツタケうどん(税込1000円) しっかりと松茸の風味があり、まさに土瓶蒸しのような出汁の味がする。

雰囲気づくりへのこだわり

600店舗以上うどん店があって、出来立てのうどんを食べたらどこでもある程度はおいしい。いろんな店に客として食べに行くが、「おいしい」「おいしくない」というのは、入った瞬間から決まっている。

自分としては『うどんを極める』というよりも、『おいしい雰囲気作り』の方を極めていっている。ふと「何屋でもよかったのかな」と思うんです。

昼前には天ぷらがずらりと並ぶ

おすすめは100円の替え玉

初めての人は挙動や顔でわかる。「一番普通なのは、かけうどんよ」って勧めます。うちは替え玉(※)を100円でやっているので、かけうどんを1玉食べてもらって、次は違ううどんを勧めている。

例えば、かけうどんを食べて次は釜揚げ、そして窯揚げしょうゆを食べるとお餅を食べているみたいになって、次はそれに卵をかけたら釜玉。そういうのを食べ比べてもらっています。

初めて来た人には思いつかないような食べ方を勧めます。そうすると(お客さんは)びっくりします。そういうのを見ると「やったな」と思います。「ええ感じやな」と。

かけうどん(税込300円)

だからいっぱい食べる人もいます。最初はお出汁があるやつにしてだんだん出汁を減らしていって。「そうするといっぱい食べられるよ」とアドバイスすると、結局9玉食べてしまった人がいる。今までで最高じゃないかな。味を変え、出汁を変え、冷たさを変え、そういう風に楽しんでもらえたらいいなと思います。

(※)香川県でも珍しい、ひさ枝ならではのシステムで、2杯目からプラス100円で違う種類のうどんを替玉できる。肉などの具材は別料金。

取材を終えて

店を始める前、「実はうどんには興味がなかった」と話す久枝さん。ただ、子どもたちに剣道を教えていたので、朝早く、夜も早く帰ることができる仕事。それがうどん店でした。

しかし「お店に来て、食べてくれた人が他の人を連れて来て、『美味しかったよ』ってその人も言ってくれるのは、ありがたいです」と話す久枝さんは、うどん店という仕事に誇りを持っているように感じました。

マツタケうどんや100円替え玉などのサービスはもちろん、店主が大事にしている「おいしい雰囲気」もまた、人気の理由なのでしょう。

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