香川県観音寺市にある、讃岐うどん店「讃岐麺処山岡」。香川でも珍しい「極太麺」のうどんを提供しています。そして店内のあちこちで、店長・山岡幸雄さんのからの、柔らかくも熱い決意や、感謝のメッセージを見ることができます。

うどんを提供するため、なかなか店頭に出られない山岡さんの、訪問する方へのメッセージ

山岡さんの信条は「人生一度きり」。自分を信じる気持ちを一杯の讃岐うどんに込め、開店するまでの道のりを、取材しました。

駐車場の奥にあるのが、店舗です

困難を乗り越えて向き合った「人生一度切り」の信条

山岡さんは若い頃に心の病を経験し、その時から人生について深く考え、真剣に向き合うようになりました。

「生きていること自体が奇跡だと思うんですが、人生をより豊かにするにはどうすればいいだろう?どんな行動を起こせばいいだろう?と、日々自問自答しています」

2020年4月、緊急事態宣言が全国へ発令された頃のこと。何気なく「うどんでも作ってみようか」と思い、スーパーで小麦粉を購入してうどんを自作。するとその美味しさに魅了され、毎日うどん作りに夢中になりました。自分が好きな太麺を追求し、独学で試行錯誤を重ねました。

趣味が“夢”になったのは、約2か月後のこと。それまでダイエットコンサルタントとして活動していた山岡さんですが、「香川で生まれ育ったからには、うどんで勝負したい!」と決意。それから半年後に、自宅を改装して「讃岐麺処山岡」をオープンさせました。

セルフリノベーションで作った店内。立ち食いコーナーもあります

「自分が作った独学のうどんが通じるのか、と不安もありました。けれど、人生は一度きり。明日どうなるか分からないけれど、やらない後悔をしたくなかったんです」
自分を信じようとする一念が、山岡さんの挑戦を支えたのです。

香川の讃岐うどんでも珍しい“極太麺”

「讃岐麺処山岡」の特徴は、多くのうどん店がある香川でも珍しい「極太麺」。杵付で打たれたうどんは、「もちっ」とした噛み応えのある食感。讃岐うどんと言えば「のど越し」という、飲み込むような食べ方を耳にしますが、山岡さんのうどんを楽しむなら、「かみしめる」という表現がベストです。

「お客様が太く長くいい人生になってほしい、という意味合いも込めて製麺しています」

「山芋卵醤油うどん(冷)」 写真の(小)は税込350円

メニューも醤油うどんを中心に、ぶっかけうどん、かけうどんとシンプル。醤油うどんは、トッピングに山芋や卵が選べます。うどんはスクリュー型に丁寧に盛られています。

「最初は醤油だけにしようと思ったくらい。醤油うどんを食べるならここ、と思わせたかった。究極の醤油うどんを食べてもらいたかったんです」

手書きのイラストメニューや紹介文に、山岡さんの思いがにじみ出ています

ブレンドした醤油をかけて食べるうどんの味は、あえて誰からもアドバイスをもらわずにたどり着きました。
「自分がこれ!と思う味を信じて提供しています。自分の人生の主人公は、自分なんです」

自分の挑戦を信じて、出会えた人たちに感謝

「太麺好きの讃岐うどんファンからは『太麺がたまらん』との声が届きます。お客様から野菜をいただいたり、『うどんに感動した』と匿名で扇風機などをプレゼントしていただいたこともあるんです」と、少しはにかんだように笑う山岡さん。

山岡さんやスタッフが着ているロゴ入りシャツも、常連客からの贈り物だそうです。山岡さんは店の奥でうどんを茹でているため、店頭でなかなか客と話す機会はありませんが、常に感謝の気持ちを持ちながらうどんを作っています。

力強いロゴの入ったシャツは、常連客からの贈り物

うどん店開業という自分の挑戦が、新しい人との出会いにつながった感動と喜びをかみしめながら、次は「関わってくれる人たちと幸せを共有できるように」2店舗目を作るのが夢だと、言葉に力が入ります。

「自分を信じる」ことで生まれた、山岡流讃岐うどん。誰もが「人生は一度きり」。その人生観を、一度は体感してみてもいいかもしれません。

麺を食べた後に残る卵と山芋を、ぐぐっとすすると「二度おいしい」味に

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