酒テロ(夜、おいしそうなお酒と食事風景を配信する)動画をYouTubeで配信するクリエイターの酒村ゆっけ、さんが8月30日、小説『酒に溺れた人魚姫、海の仲間を食い散らかす』(KADOKAWA)を出版しました。

酒村さんは2019年12月にYouTubeアカウント「世界一のゆっけ」を開設し、登録者数は8月27日現在で約36万人。TikTokアカウントは約50万人ものフォロワーがいます。

そんな動画界の有名人かつ個性的なクリエイター、酒村さんに小説出版の裏側について話を聞きました。

―今回の小説について教えてください。

すべてのストーリーは、自分の普段の生活で動画投稿を終えて、とりあえず疲れたからお酒を飲んで、お酒でなんとなくほろ酔いになり目を閉じると、妄想ではないですが、まぶたの裏に映像が流れていくような、考えなくても訳の分からないそういう映像が流れてくるので、それを書き起こしたものです。夢十夜ではないですけど、わたしが酔っ払ったときに脳内でどんな映像が流れていき、それがどんなふうに文章化されたかに着目してほしいと思います。特殊な状況下で特殊な書き方をした不思議な作品です。

―以前はエッセーで、今回初めての短編小説集の出版となりますが、普段どこでどんな風に小説を書いていますか?たぶん自宅ですと(飼い猫の)しゃっけちゃん、ぽっぴーちゃんがいるので、どこで執筆しているのかなと思いまして。

近所にカフェとかがないので、家しか書く場所がないですね。たまに外出先でとかはあるんですけど。基本的に家ですね。

―2度目の本の執筆になりますが、1度目の執筆と違った点は?

前回のエッセーは普段している動画配信の延長線上にあって、割と動画の要約という感じでしたが、今回は小説で行きましょうとなったときに、完全に真っ白な状態で。特に書きたいテーマだとか、何か伝えたい事というのがあった状態で始めたわけではないので、真っ白な状態をどう埋めるのかというのが前回と違った点だと思います。

―小説を書く中で最も難しかったことは?

エッセーを書いた時と同じですが、時間の締め切りが難しかったです。お酒を飲んで気持ちよくなり寝てしまって、それが毎日繰り返されて。ぎりぎりで動画配信と並行して執筆していくのが大変でした。

―締め切りという部分以外に何か苦労されたことはありましたか?

小説を書いたことがなかったので、どうやって書けばよいのかわからなかったというのが、締め切り以外で難しかった点ですね。小説の書き方が分からないっていう。普段は小説をたまに読んでいるんですけど、めちゃくちゃ読んでいるわけではなかったので、小説ってどんな感じだったっけなーと思って、いろいろ著名な本を再び読んだりもしていて、執筆の時間が追われていくというのがありました。

―時間がない中、どういったスケジュールで動いていましたか?

スケジュールを組むのが極端に苦手でして。午前中には起きれないというのがいつもの流れで、最悪のスタートダッシュから始まっていたという記憶があります。それに加え、動画は20時半にいつもUPしてますが、その締め切りを一度崩してしまうと永遠に崩し続けてしまうという自分の傾向があるので絶対にあげています。そうなると必然的に執筆が20時半以降になってくるので、小説の執筆自体は夜中に始まっていたような気がします。

―独特のワードセンスはどうやって身に着けましたか?

受験で国語の論文、作文などありますが、あれは苦手ですね。そもそも文章にすごく自信があるわけではないです。ロジックが使われた文章じゃないものを書いたときにたまたま、YouTubeで視聴者の方が面白いと言ってくださった感じです。語彙力をどこで勉強したというのは特になく、動画中によく表現するお酒の擬人化みたいなのも自分の妄想の延長線上にあります。大学時代に勉強していたとかもないです。自然に身についたのかもしれないですね。

―いまは動画作品で出演していますが、昔から人前に出るのは好きだったんですか?

好きでも嫌いでもなく。あまり自分からしゃべれないタイプなので。例えば部活やサークルに所属しても話しかけられないと孤立して、幽霊部員になる確率が高いです。拾ってくれる人がいたら、その人によってポジションが決まるみたいな。他力本願で進んできたので。LIVE配信は対人型だと思うんですけど、Youtubeで上げている動画作品は人前というよりは、自己完結型に近いと思うので、目立つ目立たないの概念を特に感じずに投稿していました。

―創作活動でこだわっていることはありますか?

本や動画、作詞なども、すべて作品という風にとらえていて。自分の伝えたい世界観をどうやったら文章や動画で表現できるのかなというのを考えながら制作しています。映画や小説などのストーリー、筋立てが好きなので、それと同じようにどうやったら物語とすることができるのかなと。

―今後の夢や展望は何かありますか?

作品を作れる場所を増やしていきたいです。Youtubeの動画や本だけではなくて、ミュージックビデオとか短編映画などの映像作品や、作詞という点で音楽とか。そういういろんな挑戦を、いろんな媒体でしたいなというのと、自分一人では成長というか、いろんな視点が持てないので、自分の好きな監督さんやアーティストさんなどその分野のプロの人と一緒に何か創作をしてみたいなというのはあります。ただ、そういう自分が好きな人ほど、会うとしゃべれなくなってしまう傾向があるので、まずはコミュニケーション能力を高めていきたいと思っています。

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