香川県丸亀市飯山町にツバメが集う場所があります。讃岐富士の麓にある桃農園「谷渕農園」の納屋には、約30個のツバメの巣があります。

「毎年彼岸入りのころにツバメがやってきて、1個の巣に卵を4~5個産むんですよ」

そう語るのは、ツバメが集う納屋の持ち主である谷渕農園の谷渕夫妻です。

納屋の梁に約30個のツバメの巣

谷渕さんの納屋にツバメの巣ができたのは、約8年前。それからツバメの成長は谷渕さんの生活の一部となっているといいます。

「毎朝、納屋に行って『おはよう』ってツバメに挨拶するのが日課なんです。ツバメはね、案外遅く起きてくるんですよ。でも一羽が鳴き始めるとほかのツバメも一斉に鳴き始めますね。ツバメも『おはよう』って言い合ってるんですかねえ」

谷渕さんは穏やかな表情で話してくれました。

ツバメたちが安心できる環境を

谷渕農園の周りの水田はツバメのエサの宝庫

讃岐富士のふもとにある谷渕農園。そのまわりには青々とした水田が広がっています。

「家の周りには青々とした水田がたくさんあるから、ツバメたちは餌に困らない。ツバメたちのメインディッシュは、大きなトンボなんですよ」

「蛇やカラスが天敵だけど、人間には安心してるんかね。近づいても特に何も。納屋の中でも、一番高い梁に巣をつくるツバメもいて、最初はびっくりしましたよ」

もうすぐ巣立ちを迎えるツバメのひなを見上げる

谷渕さんは、納屋だけでなく家の軒下にも板を打ち付けて、ツバメの巣が落ちないようにしているそう。そして床の汚れにもツバメのことを考えて対応していました。

軒先にあるツバメの巣

「人によっては傘を巣の真下につるしておけば(床が)汚れないという人もおるけど、ツバメが怖がってもいけないと思って。私たちは、巣の下に段ボールの箱を置いて新聞紙を敷いて、毎朝取り換えてますがね」

周囲の環境と谷渕夫妻の温かい人柄がツバメたちの安心につながっているのかもしれません。

人の間を縫うように飛び交う親ツバメたち。ひなは可愛らしい顔を巣からのぞかせています。その様子を見ようと近所の人や子ども達がよく遊びにやってくることもあるそうです。

「巣立つその日まで」

巣立つために飛ぶ練習をするツバメ

しばらくすると、バサバサッと羽ばたきを巣の中で始めたツバメ。

「その子にもよるけど、もうすぐ巣立ちの頃になると、ああやって、飛んでいくための練習を始めるんですよ」

もうすぐ巣立ちの時が近づいています。

「ツバメの育成日記」をつけているという谷渕さん。今年はツバメたちのどんな成長の記録を刻めるでしょうか。

家族のような温かさで迎え入れる夫婦とツバメたちの夏の日々は続きます。

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