香川県高松市にあるセルフフォトスタジオ「モアナ」では今、ワンちゃんの撮影が人気です。

セルフフォトスタジオは予約制で1組だけがスタジオを使用するので、ワンちゃん連れでも気軽に使えるのが魅力です。また、完全貸切スタイルは密集を避けることができ、コロナ時代の新しいビジネスモデルとしても注目されるでしょう。

セルフフォトスタジオモアナ(香川県高松市) 倉庫だった場所にペイントを施してフォトスタジオに

今回は、モアナを立ち上げた杉本智美さんにインタビュー。立ち上げの経緯と、その前段である起業のきっかけについても紹介します。

ドレス販売とセルフフォトスタジオの2事業を展開する杉本さんには2児の母としての顔も(画像提供:杉本智美さん)

起業のきっかけとなったカラオケ発表会

今から遡ること13年前。杉本さんが第1子を出産し育児に明け暮れていた頃のことです。母親に連れられて行ったカラオケ発表会で、新しい世界に触れました。

「母と同世代、またはそれ以上の年齢の方たちが派手なコスチュームを身にまとって、自慢の歌声を披露する姿に、強烈なインパクトを受けました。と同時に、母も含めてみんながキラキラしていたんです。そこで見た人たちは、皆さんが輝いていました。生きがいを持つことって、こんなに大切なことなんだと思ったんです」

その衝撃を受けたあとには、「この人たちを応援したい!」という気持ちが芽生えたといいます。

何ができるか考えたときに、まずは自分を知ってもらう必要があると考えた杉本さん。最初に取り掛かったのがフリーペーパー「カラオケ新聞」の発行でした。発表会などのイベント情報や参加者の写真を掲載したフリーペーパーを作り、カラオケ喫茶に置いてもらうことにしたのです。努力の甲斐あってたくさんのカラオケ喫茶に置いてもらうことができ、次第に認知されるように。香川県全域のカラオケ喫茶に毎月配布するようになり、業界での認知度も高まってきました。

その頃、杉本さんにも大きな変化が。顧客の要望を受けて、ドレスを販売することになったのです。「この業界を盛り上げたい」という強い気持ちが支持され、カラオケ用衣装の販売というビジネスを誕生させることになりました。

「カラオケ新聞」は人気を呼び、その手法を知りたいと県外からもオファーが。ついにはフランチャイズ形式で「カラオケ新聞」は全国区に。

しかし、カラオケ喫茶に親しんでいる世代が減っていけば、ドレス販売のビジネスは立ち行かなくなります。

「10年をめどに新規ビジネスの種を探したい」
そんな思いを抱え、ドレス販売をしながら、次のビジネスの柱になるものを模索していました。

香川県初のセルフフォトスタジオオープン

そんな時、韓国の友人からセルフフォトスタジオが韓国で流行っているという情報をキャッチします。調べると当時まだ日本にはセルフフォトスタジオが1軒しかなく、「これはおもしろい」とリサーチを実施。そして、挑戦することにしました。2019年のことです。

韓国で流行っている制服とポップなカラーのスクールシチュエーション。子どもだけでなく、大人にも人気!(画像提供:杉本智美さん)

「創業当時はママが子どもの成長を記録するスタジオとして使ってもらえたらいいな、という気持ちだったんですが、コスプレイヤーの撮影やペット撮影などが増えてきました。これは想定外でしたね」

意外なところからの反響もあり、セルフフォトスタジオは少しずつ認知されていきます。

スタジオ内には、多様なシチュエーションがあり、表現したい世界観を実現できると好評です。(画像提供:杉本智美さん)

セルフフォトスタジオを立ち上げた後も、カラオケ用衣装の販売は続けていましたが、2020年のコロナウイルス感染拡大により、カラオケのイベントはすべて中止に。当然ドレスも売れなくなりました。

「コロナが落ち着いたら、またドレス製造販売のビジネスは待って頂いている方に届けたいと思っています。でもあの時は新しいビジネスがあったから、なんとか乗り越えられました。新規ビジネスの立ち上げのタイミングが2年前というのも偶然ですが、本当に助かりましたね」

そして、ペットの撮影が増えてきたことを受け、不動在庫になっていたドレスをペット用ドレスにリメイクし、レンタル衣装をオプションに付けると、SNSでたちまち話題に。過去のビジネスが、今のビジネスに活きてきたのです。

飼い主とペットがお揃いで着られるドレスもあります。愛犬家ならずとも気になるコスチュームがいっぱい。(画像提供:杉本智美さん)

写真に収める特別な日を彩るために

愛犬家たちには、ワンちゃんの誕生日やイベントを大切にする人が多いそう。そんなハレの日に、ドレス撮影は最高の記念になります。杉本さんのこれまでの経験が、少しずつ線で結ばれていくように、ビジネスが広がっているように見えます。

ワンちゃんのドレスレンタルという付加価値も、セルフフォトスタジオの大きな魅力になっています。(画像提供:杉本智美さん)

それでも、「今もまだ途上」と話す杉本さん。

「もっともっとお客さまの要望に応えられるようなスタジオにしなくちゃといろいろ考えています」
杉本さんの「お客さまのために」という情熱は、ドレス販売のときも、セルフフォトスタジオの今も変わりません。

「お客さまのニーズはアイデアの宝庫。だから挑戦するのみ。たとえ失敗しても楽しまなくちゃ。失敗はうまくいくために必要不可欠なものだと思います。だからこれからもニーズを大切に、求められるシーンを提供していきたいですね」

杉本さんの挑戦はこれからも続きます。

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