美しい自然、芝生広場やキャンプ場など、子どもからお年寄りまで年間を通じて楽しく利用できる香川県高松市の公渕森林公園。その一角にさぬき動物愛護センターしっぽの森(以下しっぽの森)はあります。

この施設は、犬の殺処分の多い香川県において、その改善を図るために2019年3月に設立されました。県内に5か所ある保健所から、健康管理や人馴れの訓練をすれば家庭で飼えるような犬や猫を引き取って、譲渡までの間のケアを行っています。

そこで2020年4月から所長として働く有岡彰則さんに、殺処分の現状や具体的な活動について聞きました。

しっぽの森・所長の有岡彰則さん

香川県で犬の殺処分数が多いわけ

香川県の2019年度の犬の殺処分数は920匹で全国ワースト1位、殺処分率は41.5%でワースト5位となっています。

有岡さんによると、香川県は瀬戸内式気候と呼ばれる1年中の安定した温暖な気候により、子どもの野良犬が越冬できることで繁殖が盛ん。また、野良犬の住みかである野山と人家が近いことによって餌が得やすいこと、保護のない餌やりなども要因となってその数が増え、結果的に殺処分が多くなってしまっているということです。

施設の完成で少しずつ改善

しっぽの森では、少しでも動物の殺処分数を減らすため、動物の愛護と適切な管理の普及、保健所に収容される犬や猫の譲渡の推進、動物由来感染症対策の推進、災害時の動物対策の推進などの活動を行っています。

譲渡する動物にはマイクロチップを入れ、迷子になるのを防止している

最大で犬60頭・猫30頭を収容可能なこの施設の職員は、獣医6名、事務員4名、ケアスタッフ11名の計21名。保健所よりも、よりきめ細やかな健康管理、ケアスタッフによる行き届いたしつけトレーニングなどを行うことで、少しずつ譲渡が増えているそうです。

施設完成前の2018年度に比べて、香川県全体での譲渡数は、2020年度(速報値)で犬が278匹、猫が145匹の増加。殺処分数は犬が952匹、猫が397匹の減少と大幅な改善が見られます。

とは言っても、譲渡数を増やすために見境なく譲渡を行っているわけではありません。

「安易に飼うのではなく、しっかり考えたうえで飼ってもらいます」

譲渡希望者には必須の譲渡前講習会を受けてもらい、本当に現在ペットを飼える環境にあるか、犬や猫の平均的な寿命の15~20年先のライフステージを想定し、最後まで飼うことができるかなどをしっかりと考えさせます。また、飼うにあたってのルールやマナーについてもしっかりと譲渡希望者に伝えたうえで、希望する犬や猫とのマッチングを行い、相性を確認したうえで譲渡します。

譲渡された人が動物を手離してしまうと、不幸の連鎖を生んでしまう

動物に寄り添うケアスタッフ

「一般的なしつけをやってみてもうまくいかないことが多くて」

そう語るのは、ケアスタッフの澤部孝太さん。施設に来る動物のほとんどが野良のため、人に対する警戒心がもともと高く、難しいことは多いそう。1匹1匹性格の全く異なる動物たちが、どうしたら心を開いてくれるのかを試行錯誤する日々だと言います。

譲渡先が見つかったときは嬉しくもあるが、離れ離れになってしまう寂しさも

それでも、真剣に動物たちに向き合い、愛情を注いで育てるのは、シンプルに動物が好きだから。懸命にケアするからこそ、譲渡した動物がしばらくして元気に遊びに来てくれた時や、感謝の手紙をもらった時の喜びもひとしおです。

新しい飼い主からの手紙もやりがいの1つ

不幸な命が増えることのない世の中に

譲渡ボランティアやイベントの手伝いなど、周りの人の協力があって活動ができていると語る有岡さん。理想は、保健所に収容される動物が1匹もいなくなることです。

「動物を飼っている人は、動物から癒される。ペットは飼い主に愛情をもって最後まで飼われることによって幸せに生活できる。飼われている動物も飼われていない動物も、不幸な命の増えることのない世の中になるように、みんなが動物愛護・管理に気持ちを向ける社会になるのが一番いいんです」

保健所の収容が0匹になるのは少し先の未来だとしても、しっぽの森の活動は、さらに多くの動物の命を繋げること、そして動物愛護に関する関心の輪のひろがりに寄与することでしょう。