2020年10月27日、ある喫茶店が岡山県中央部の高原地帯、吉備中央町にオープンしました。

お店の名前は「あわい」。

経営するのは山本修さん・満菜さん夫妻。

お二人は2020年3月まで小学校教員として働いていましたが、安定した仕事を辞め、田舎にある古民家を改修し喫茶店を開きました。

「あわい」には懐かしくも新しい、ゆったりとした時間が流れています。

写真左から”あわい”を経営する山本修さん、満菜さん

好きだったお店では素直な自分になれた

「昔から古着屋や喫茶店が好きだった。」

と、話をしてくれたのは修さん。

大学生時代にはほぼ毎日通った行きつけの喫茶店や、用がなくとも他愛もない話をしに行くお店があり、自らの居場所となっていました。

そこで時間を過ごしているうちに自分が豊かになっていく感覚があり、自分もこんなお店がしたいと思うようになっていったそうです。

 

「誰かの居場所を作りたかった。」

そう話す満菜さんも、大学生時代に自分のありのままを受け入れてくれるお店や居場所に出会われていました。様々な年代の人が集い、好きなものを好きと言っていい、こんなことやあんなことがしたい、そう思った時にすぐに口に出せる場所。彼女自身の居場所がそこにあったように、将来はそんな誰かための場所を作りたかったと話します。

  

子供たちがありのままでいられる空間づくりをしたいという思いから教員の道へ進んだ二人。教員として子供達と関わる日々の中で

「人になんと言われてもいい。自分が叶えたい理想を追いかければいい。」

そう言いかけた時にふと気がついたことがありました。

 

“子供達に言おうとしていることを、自分は今がむしゃらにできているのだろうか?”

 

そして二人は教員を辞め、空間づくりに特化していくことを決めます。

学生時代に心地よい居場所があったように、誰かの居場所を作るためのお店作りをスタートさせることとなりました。

あわいへの入り口は趣のある土間

「あわい」という空間

2020年の初頭、修さんのご家族の知人が住んでいた吉備中央町の古民家が空き家になっており、そこを店舗として使う事が決まりました。

 家はきれいな状態で保存されていましたが、長年使われていなかったため、床の張り替え、壁の塗り直し、土間の再生など、店舗として利用するにはかなりの労力を要したと言います。

地元の仲間や学生時代の友人などたくさんの人の手に助けられ、あわいは完成しました。

 

現在は改修された一室と土間をカフェスペースとしており、そこには2人が大切にしているアート作品やレコードが並べられています。

それぞれの座席に種類の異なる家具が置かれており「今日は縁側にしようか、奥のソファ席にしようか」と、来るたびにどこに座るのかを考えるのも楽しみ方の一つです。

座席ごとに異なる家具が配置されている

あわいという名前の由来

 「あわい」という言葉は「間」という漢字の読み方の一つ。

店名の由来をお二人に伺ったところ

 「世の中は何かと白黒はっきりさせたがっているように見える。白と黒の間にはいろんな濃さのグレーが存在するし、0と100の間にも無数の数字がある。だから全ての物事をどちらかにはっきりさせる必要はなくて、混じっていたっていいんじゃないかなあ。そんな気持ちが学生時代の頃からありました。そういった意味での間(あわい)や、誰かの一日の中にある時間であったり、人と人との間であったり、いろんな間を自分らしく大切にできたらいいなと思ってこの名前に決めました。」

 と、修さんが語ってくれました。

古民家を店舗としたあわいにはゆったりとした時間が流れており、心地よく居座ることができる空間づくりがされています。温かい珈琲と美味しいお菓子をただただゆっくり味わったり、ついつい誰かと長話をしてしまったり。また、アートや本、音楽に触れることで全く知らなかった新しい自分に出会えたりもして、自由な過ごし方ができるお店となっています。

こだわりの自家焙煎珈琲と無添加お菓子

修さんこだわりの自家焙煎珈琲は、まず焙煎の前に珈琲の生豆の状態が良いものだけをピッキングするところから始まります。それによりムラがなく均一な煎り加減となるのです。また、営業日に合わせてその都度焙煎を行うため、いつでも新鮮な珈琲を味わうことができます。

修さんが淹れるこだわりの自家焙煎珈琲

そんな珈琲にぴったりな満菜さんの手作りお菓子の数々。 

現在あわいではフロランタンや日替わりケーキ、珈琲プリンなどを頂くことができ、どのお菓子も素朴で優しい甘さが口いっぱいに広がっていきます。

フロランタンやケーキは、小麦粉の代わりに米粉を使用しているため小麦粉アレルギーの方でも安心して口にすることができるようになっています。

 

修さんと満菜さんが珈琲やお菓子作りで目指しているのは、

 "日常に溶け込んで、日々を少しだけ豊かにすること"

 かつてふたりの日常の中に喫茶店があったように、ここでもまた誰かの新たな日常が生まれるのかも知れません。

満菜さんが手作りする無添加のお菓子

自らの生活を楽しむことで人が繋がっていく

 最後にあわいとしての将来の展望を聞いてみました。

 「ん〜そうですねえ〜、僕たちは僕たちでただただ生きることを楽しむだけかなあと思っています(笑)。そんな生活の中で、あわいでたくさんの人が繋がって仲良くなってみんなでわいわい話す。そんなことをずーーっと続けていきたいです。」

 

現在あわいは店舗での営業の他、毎週土曜日に美作市上山にある大芦高原キャンプ場で出店をしています。

キャンプ場管理棟の受付横で出店するあわいの二人

キャンプ場を地元の方々や旅の途中ちょっと一息つきたい人も気軽に立ち寄れたりするような場所にしたいと考えていたオーナーと意気投合し、出店することが決まりました。

今後はキャンプ×コーヒー×映画など、人と人が繋がり語り合えるイベントも企画していくそうです。

さらに人々の繋がりを広げていくであろう「あわい」から目が離せません。

NPO法人英田上山棚田団 三宅七帆