新型コロナウイルス感染拡大の中、各地でさまざまなイベントの中止や縮小が伝えられています。そんな中、勇気を出してイベント開催を決意した人が岡山にいます。ハワイアンイベント「Aloha Pā’ina(アロハ・パイナ)in OKAYAMA」主催者の篠岡 里栄(ささおか りえ)さん。2017年以来毎年行っているイベントを、今年も12月12日・13日に開催するため、準備を進めています。篠岡さんの思いや、後押しするものはなにか、アトリエを訪ね、話を聞きました。

ハワイとの出会い、そしてフラとの縁でグッズづくりを始める

 アトリエにずらりと並ぶのは、ハワイの植物や伝統柄などに彩られたカラフルな生地で仕立てたリゾートウェア、バッグ、人形など。篠岡さんはこれらすべて自分で製作し、イベント会場やネットで販売しています。

着せ替えができる人気のフムちゃん人形、バッグ

 もともと大阪のアパレル会社でパタンナーとして働いていた彼女がハワイに出会ったのは、社員旅行がきっかけ。「ミーハーなイメージしかなかったハワイ。でもそこにはフラ、音楽、言葉などの豊かな伝統文化がありました。今も大切に守られ、継承されていることに大きなカルチャーショックを受け、単なる観光地ではない魅力にあふれたハワイをもっと知りたいと思うようになりました」。

 その衝撃から数年後、結婚して帰岡。子育てを通じて知り合った友人がフラを習っているのを知り、自分も始めることに。そのうち、フラのニーズに合わせたグッズづくりを思い立ち、衣装を入れるガーメントバッグ、洋服など次々に浮かぶアイデアを形にしていきました。彼女のグッズは好評で、身近なイベント会場で販売するとたちまち完売。手応えを感じながら、本格的に製作を始めるように。今から15年ほど前、まだオリジナルのハワイアングッズを扱う店が岡山には少なかった頃でした。

デザイン、パターン作成、縫製まですべて手がける篠岡さん

 さらに県外へも目を向け、自らイベントを探しては、週末になると車に商品を詰め込み、横浜、名古屋、京都、四国、九州などへ出向いた篠岡さん。

「県外のハワイアンイベントの多くは、ショップやフラステージが一体となって、ハワイの雰囲気がゆったり楽しめる心地よい空間でした。こんなイベント、岡山にはないし、作家さんやハワイに関わる人たちとつながりができるにつれて地元でもやってみたいと思うようになったんです」。

満を辞して開催し、大成功を収めた第1回 Aloha Pā’ina

 思いを行動に移したのは2017年春。篠岡さんを中心にアロハパイナ実行委員会を立ち上げ、地元での開催を決定。イベントに出向くたびにフライヤーを配っては出店や参加を呼びかけました。そして12月3日、海の近くのホテルを会場に第1回Aloha Pā’inaを開催したのです。

 「Pā’ina(パイナ)」とは「パーティー」を意味するハワイ語。フラのステージ、洋服や雑貨、飲食などのショップ、音楽やクラフトのワークショップ、ロミロミなどまで盛り込み、さまざまなハワイ文化をパーティーのように楽しもうというもので、運営には友人や有志のボランティアたちが協力。おかげでイベントは大成功し、翌年、翌々年は2日間に拡大して開催するほどになりました。

2019年12月に開催されたAloha Pā’inaのフラステージ

販売ブースにはさまざまなショップが並ぶ

新型コロナウィルス感染症で大きなダメージ。でも負けてはいられない

 ところが、2020年は新型コロナウィルス感染症の拡大で状況は一変。各地のハワイアンイベントはすべて中止となり、実店舗を持たず出店で生計を立てる作家たちは大きな痛手を被ることになります。かろうじてネット販売や給付金でつなぐものの状況は厳しく、篠岡さんは意を決して立ち上がりました。

 会場となる倉敷市の商業施設の協力も得て、アロハパイナ実行委員会主催で7月にAloha Pā’inaより小規模でカジュアルな内容のイベントを開催したのです。もちろん不安がなかったわけではありません。「少しずついい兆しが見え始めた頃とはいえ、イベント開催には正直、迷いもありました。時期が早いのではとの声も多かった。でも、私たちにとっては死活問題だし、このままじっとしてはいられない。開催することで少しでもみんなを元気づけられたらと思って」。

 感染予防に気を配りつつ、緊張感のなかで臨んだ本番はひとまず無事終了。フラの出場者や出店数は減ったものの、参加者からの「やっと出店できた」「踊りを発表できる場があってうれしい」という喜びの声は篠岡さんを勇気づけ、8月に広島県神石高原で、10月には岡山市内でのイベント開催へとつながっていきました。

県外のフラチームも多数参加した

みんなの元気な笑顔を来年につないでいくために

 そして今回の2020 Aloha Pā’ina。昨年に比べ出店数は3分の2、フラチームも半数と、大幅に規模を縮小しての開催となります。一番気がかりな感染予防対策は、マニュアルを作成して参加者全員に周知し、現場での徹底を呼びかけ、万全の体制で臨むとのこと。

「この状況での開催に背中を押してくれたのは、何より参加してくれる人たちです。たとえ売れなくても参加することのメリットや、踊る場所があることに喜びを見出し、前向きに応援してくれるのが心からうれしい」。

2020 Aloha Pā’ina in OKAYAMAのポスター

 厳しい運営資金は、クラウドファンディングを立ち上げたり、イベント協賛などの支援でなんとか賄っているそう。「やることに意味があると思っています。そしてみんなが元気になり、来年につないでいくことができたらいいな、と。緊急事態宣言が出ない限り、やります」と力強く語る篠岡さんの姿が印象的でした。

 スペシャルゲストにスラックキーギターの第一人者・山内アラニ雄喜さんなどを迎えてライブも行われるAloha Pā’ina。今回もたくさんの笑顔に会える、すばらしいイベントになることに期待したいですね。

【2020 Aloha Pā’ina in OKAYAMA】
■開催日時:12月12日(土)10:00〜18:00 / 13日(日)9:00〜18:00
■会場:コンベックス岡山 小展示場

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