文化も言葉も異なる海外での生活は、期待と同時に、予期せぬ驚きや感動に満ち溢れています。
今回お話を伺ったのは、フィリピン出身・20代のアルバイト、マリアさん(仮名)。初めて日本に足を踏み入れた時の驚きから、日本での温かい出会いまで、その体験を語っていただきました。
静寂に包まれた日本の空港に衝撃
3年前の春、初めて日本にやってきたマリアさんが、成田空港で降り立った瞬間に最も驚いたのは、その静けさでした。
「マニラはいつも活気があって、車の音や人々の話し声が絶えないんです。だから、空港から出た時の、まるで音が吸い込まれるような静けさには本当にびっくりしました。多くの人がいるはずなのに、皆落ち着いていて、大きな声で話す人もいなくて…一瞬、息を呑んでしまいました」
カートを引く音だけが小さく響く到着ロビー、整然と並んだタクシー、そして静かに待つ運転手さん。澄んだ空気と少しひんやりとした感触も、マリアさんにとって忘れられない日本の第一印象となりました。
静けさの中に宿る秩序と礼儀…日本社会の奥深さに気づき
空港での静かな体験は、マリアさんの日本に対する印象を大きく変えました。
「最初は、その静けさに少し寂しさも感じたんです。でも、電車の中や街の様子を見るうちに、その静けさには、人々がお互いを尊重し、公共の場を大切にする気持ちが表れていることに気づきました。整然と並ぶ列や、ゴミ一つ落ちていない街並みを見て、日本はただ便利なのではなく、人々の心の豊かさや社会全体の調和が大切にされている国なんだと感じました」
最初は戸惑った日本の静けさも、今では心地よく感じるようになったというマリアさん。それは、他者への配慮が生み出す安心感なのかもしれません。
高熱で心細い私を救ってくれた店長の優しさ
日本での生活で、マリアさんの心に深く刻まれた感動的なエピソードがあります。アルバイトを始めて半年ほど経った頃、体調を崩して高熱を出してしまった時のことです。
「一人暮らしで、どうしたら良いか分からなくて心細かった時、アルバイト先の店長が私のことを心配して、わざわざ家まで来てくれたんです。熱で朦朧としている私に、冷たいタオルで額を冷やしてくれたり、スポーツドリンクやおかゆを買ってきてくれたり…『無理しないでゆっくり休んで。何かあったらすぐに連絡して』という優しい言葉が、本当に嬉しくて、涙が止まりませんでした」
異国の地で一人、不安でいっぱいだったマリアさんにとって、店長の温かい行動は、まるで家族のような存在に感じられました。「言葉や文化の違いはあっても、人の優しさや思いやりは、国境を越えて伝わるものだと実感しました」と語るマリアさんの言葉には、感謝の気持ちが溢れています。
日本の魅力は「温かい人々」「美しい自然」「豊かな文化」
マリアさんは、自身の経験を通して、日本での生活の魅力をこう語ります。
「日本には、親切で温かい人がたくさんいます。街は清潔で治安も良く、四季折々の美しい自然や、歴史ある文化も魅力です。言葉の壁や文化の違いに戸惑うこともあるかもしれませんが、積極的にコミュニケーションを取り、日本の文化を尊重する気持ちがあれば、きっと素晴らしい経験ができると思います。困った時は、遠慮せずに周りの人に頼ってみてください。きっと、誰かが助けてくれます」
初めて日本を訪れた時の驚きと、その後の温かい出会いを通して、マリアさんは日本での生活を心から楽しんでいます。彼女の体験は、私たちに日本の魅力と、そこに住む人々の温かさを改めて教えてくれます。
