18歳のとき、事故で頸髄を損傷し「一生歩けない」と言われた三代達也さん。2年間のリハビリを経て退院後は悩む時期もありましたが、挑戦を続け、車いすで国内外を旅する様子を発信するようになりました。
車いすで世界一周も経験し、今度は自分の足で「車いすでは見られなかった、諦めていた景色を見てみたい」と新たな挑戦を計画しています。
そこで三代さんに、挑戦し続ける理由などを聞いてみました。
頸髄の損傷、一生歩けないと言われ…
三代さんは18歳のときに事故で頸髄を損傷し、手足が不自由になり「一生歩けない」と告げられました。
すぐには自分ごととして受け止めることができず、当時は「苦手なスポーツをもうやらなくていいんだと、現実逃避のような不思議な思考になっていました」と振り返ります。家族は悲しみながらも「達也をサポートするぞ!」と気持ちをひとつにしてくれたそうです。
三代さんは車いす生活となり、段差や天候、移動手段、宿泊先など、日常のさまざまな場面で不便を感じることもありました。その一方で、街の人やお店のスタッフが気さくに声をかけてくれることが、大きな励みになったといいます。
車いすトラベラーとして見た世界と気づき
三代さんは車いすトラベラーとして、SNSで旅の様子を発信しています。きっかけは「車いすでこんなところに行ける!」「こんなチャレンジもできる!」など「誰かの一歩につながる旅」をテーマに発信したいと思ったからでした。
事故に遭うまでは海外経験がなかった三代さんですが、23歳で初めてハワイへ一人旅をした際、車いすでも楽しめる世界が広がっていることを実感しました。

「勇気を出して一歩を踏み出してみたら、人生が変わった」と、それから車いすで約9ヶ月間、世界一周の旅にも挑戦。
「海外には、日本よりはるかにバリアフリーが進んでいる国も多くあります。だからこそ、情報や体調が整っていれば、もっと多くの人に旅をしてほしいと思っています」と語ります。

世界一周を経て、三代さんは「この体だからこそ届けられる価値がある」と感じるようになり、自分の発信が誰かの一歩につながっていることに生きがいを見いだせたと話します。
歩きたいという気持ちが芽生えて…
さらに三代さんは、新たな挑戦への思いと“歩きたい”という理由を見つけます。車いすトラベラーとして約8年間活動するなかで「最近は挑戦できていない」と感じていた頃、脊髄損傷の再歩行を支援するジム「J-Workout」と出会い、再び歩きたいという気持ちが芽生えました。

「どうせ歩くなら、前回の世界一周では車いすから見られなかった “立ったからこそ見える景色” を見たいと思い、挑戦を決めました」と三代さん。

そして、16年間諦めていた歩行練習を再開。思うように動かない足に落ち込むこともありましたが、諦めなかったのは、かつての自分のようにリハビリを諦めている人や、セラピストに「脊髄損傷だから仕方ない」と思わせないため、“諦めない、諦めさせない”というメッセージを届けたいからでした。
声に出すことで見つかる味方とチャンス
三代さんは、世界中の人たちは日本も含めて「想像以上に優しい」ということを強く感じるといいます。そのうえで違いを挙げるとしたら、その優しさを「行動に移せるか」という点が大きいと…。
海外では気さくに声をかけてくれる場面が多く、日本では相手を思うあまり声をかけにくい人もいると感じたそうです。

そこで「日本人は“気づき力”が世界的にも群を抜いていると思うので、気さくに声をかけ合える社会になったら素晴らしいと思っています」と三代さん。
また三代さんは入院中、同じ車いすユーザーの人に「チャンスは足元にいくらでも落ちている。見つけられるかはお前次第だ」と言われたことがありました。その言葉は今でも覚えており「だからこそ、俺には無理だと諦めるのではなく、どうやったらできるか”を探す一歩が大切だと、今は強く感じています」と語ります。
「車いすに限らず、誰でも大変な思いをしながら生きています。もし現状を変えたい、成長したいと思っている人がいるなら、ぜひ声に出してその思いを発信してほしいです。必ず味方になってくれる人が現れます」

三代さんは現在、福祉教育、ユニバーサルツーリズムのコンサル、講演会YouTubeを含む動画コンテンツの制作・発信・プロモーション、執筆活動を行っています。
「これからも挑戦し続ける人生を歩みたい」と語り、直近の目標は2026年2月23日から始まる約2ヶ月の世界二周に挑戦し、成功させることです。
挑戦すること自体が勇気のいることですが、挑戦を続けるのはさらに大変です。車いすでの旅行に加え、歩いて世界二周目に挑戦する三代さんの行動力は、車いすユーザーに限らず多くの人の心を動かすでしょう。

