脳梁(のうりょう)欠損症という病気を知っていますか?
脳梁欠損症とは、脳の中央にある脳梁(のうりょう)という構造が、生まれつき一部またはすべて形成されていない病気です。脳梁は右脳と左脳をつなぐ橋のような役割を持ち、情報のやりとりや発達の調整に関わっています。欠損の仕方によって「部分欠損」と「完全欠損」に分かれています。
息子さんが、脳梁がまったく形成されていない「完全脳梁欠損」と診断された@kiii_kobaさんは、息子さんの病気についてSNSで発信しています。
そこで@kiii_kobaさんに、息子さんについて話を聞きました。
医師から「赤ちゃんの脳室が拡大している」と…
@kiii_kobaさんは妊娠後期まで特に問題はなく、赤ちゃんは順調に成長していました。ところが、定期健診でエコーをした際、医師から「赤ちゃんの脳室が拡大している」と伝えられます。
詳しい検査が必要とのことで、緊急で胎児MRIを受け、赤ちゃんの脳を詳しく撮影したところ、脳梁が形成されていないことがわかりました。
診断されたときは、それまで何の問題もなく順調にきていたのに「なぜ私が」と思った@kiii_kobaさん。
旦那さんと脳梁欠損症について調べ尽くし、不安でいっぱいになりました。毎日泣き続け、楽しみにしていた育児準備もすべて中断してしまったといいます。
それでも旦那さんと話し合い「どんな子でも愛して育てていこう」と心に決めた@kiii_kobaさん。毎日感じる力強い胎動から「この子は頑張って生きている」と息子さん自身が教えてくれているように思えて、不安は少しずつ愛情へと変わっていったのです。
出産の緊張と奇跡の瞬間
診断後は、定期的にエコーで脳室拡大の進行がないか確認してもらっていましたが、幸いにも大きな進行はなく、無事に出産の日を迎えることができました。
出産は予定入院で誘発分娩を行ったのですが、2日目に使用した誘発剤の副作用で胎児心拍が低下し、緊急帝王切開に。
脳梁欠損症の合併症で、生まれてすぐに頭の手術が必要になるかもしれないと説明を受けていたのですが、手術は不要なほど元気に生まれてきてくれたといいます。

「正直、生まれてみないとわからない」と言われ、不安だった@kiii_kobaさん。しかし、緊急帝王切開が決まり、医師の「赤ちゃん生まれるよ!」という言葉に緊張が走り、その直後に聞こえた息子さんの大きな産声に「この子は大丈夫」と強く感じ、自然と涙があふれたと振り返ります。
全身状態の確認を終えた後、助産師さんが息子さんを@kiii_kobaさんの顔のそばに連れてきました。差し出した人差し指を力強く握った瞬間「僕、強く生きるよ」と言ってくれているようで、胸がいっぱいになったと語ってくれました。
出生後は呼吸のサポートが必要となり、2週間ほどNICUで過ごしますが、脳梁欠損症による合併症はなく、呼吸も安定して無事に元気な姿で退院することができました。
一つひとつの成長と共に…
息子さんはNICUで哺乳瓶に慣れていたため、退院前の直接母乳には苦労しました。毎日助産師さんのサポートを受けましたが、哺乳瓶以外はまったく受け付けず、体をそらして泣く姿を見て、@kiii_kobaさんは「脳梁欠損が影響しているのかな」と不安を感じたといいます。
しかし退院後、自宅で少しずつ練習を重ねるうちに直接母乳も飲めるように。
首すわりや寝返り、お座りなど発達の節目を一つずつ乗り越え、母乳も卒業。今では離乳食をたくさん食べられるようになりました。
また、名前を呼ぶとにこっと可愛い笑顔でこちらを見てくれるようにも。
「笑顔や泣き顔で自分の気持ちをしっかり伝えられるようになり、絵本が大好きで、お気に入りのおもちゃもできました」と@kiii_kobaさん。

こうして一つひとつ成長を重ねていく姿を見ていると、病気ではなく「息子さん自身の成長」を実感できるといいます。さらに、医師からは「奇跡の子」と言われるほど元気に育っており、その言葉に@kiii_kobaさん家族も大きな励ましをもらいました…と語っていました。

@kiii_kobaさんの願いは、息子さんが病気にとらわれることなく、自分らしくのびのびと育ってほしいということです。
「周りと比べるのではなく、自分のペースで成長しながら、思いやりを持って人と関われる子になってほしい」といいます。
「そのために、私たち親もずっとそばで支え続け、どんなときも息子の一番の味方でありたいと思っています」と話していました。
「病気があっても、できることはたくさんある」と伝えたい
@kiii_kobaさんがSNSを始めたのは、息子さんの成長を記録として残したいと思ったことがきっかけでした。
最初は呟く程度でしたが、息子さんの笑顔や病気と共に生きる姿勢に「元気をもらえる」「癒される」と言う人が増え、多くの人に見てもらえるように。
@kiii_kobaさんがSNSを通じて伝えたいのは「病気があっても、できることはたくさんある」ということです。
「病気や障がいがあると、できないことばかりに目を向けられがちですが、実際はその子なりのペースで、できることを一つずつ積み重ねていけます。その姿を見て一緒に喜んでくれる方が増えることが、私にとっても大きな励みになっています」

@kiii_kobaさんは、同じように病気や障がいのある子どもを育てるご家族に、少しでも「この子なりのペースで成長していけるんだ」と思える希望を届けたいと話します。
「息子の姿を通して、病気にとらわれるのではなく、その子自身の成長や魅力を見つけていける社会になってほしいと願っています」
そして、何より息子さん自身が、将来もし何かにつまづいたときに「あなたは生きているだけで、すでに多くの人の希望になっていたんだよ」と伝えたいと語っていました。
小さな優しさを大切に、家族で歩む未来
@kiii_kobaさんは今後、たとえ困難なことがあったとしても、息子さんの得意なことを見つけて伸ばしてあげたいといいます。
「料理や音楽、体を動かして遊ぶこと、さまざまな場所へのお出かけなど、たくさんの経験を一緒に楽しんでいきたいです」
また@kiii_kobaさんの家には小さなペットが2匹いて、息子さんが小さな生き物を優しく撫でることを覚えたことに、驚いたと話します。
「息子の中にある優しさを感じ、この優しさをこれからも伸ばせるように、家族みんなで温かい気持ちの家庭を作り、育てていきたいと思っています」と語ってくれました。
障がいや病気があると、そのことに着目しがちです。しかし、その人自身に注目し、できることや魅力を見つけることが大切なのかも知れません。そうした社会になるよう願います。

