3年半の不妊治療の末、生まれた五つ子 →25年後の現在の姿に「自然な距離感」「やりきった」

3年半の不妊治療の末、生まれた五つ子 →25年後の現在の姿に「自然な距離感」「やりきった」
赤ちゃんのころ(渡邉さんより提供)

“五つ子”と聞くと、妊娠、出産、子育てはどんな感じだったのだろう?と思う人も多いのではないでしょうか。

今回は、五つ子のお母さんであり、株式会社ナガセビューティケァでビューティコンサルタントとして働く渡邉さんに話を聞きました。

家族の言葉が背中を押した「産みたい」という決断

渡邉さんは、約3年半の不妊治療の末に妊娠。最初に確認されたのは4人の胎児で、医師からは「リスクが高いため、妊娠を続けるか1週間以内に決めてください」と告げられました。

エコー写真(渡邉さんより提供)

「4人です」と聞いた瞬間、頭が真っ白になったという渡邉さん。不安が大きく、すぐに旦那さんに電話をしたものの声が沈んでしまい「なんでそんなおめでたいことを、そんな声で言うの?」と返されたそうです。

その言葉に「当たり前に喜んでくれる人がいるんだ」と気づき、心がふっと軽くなったといいます。さらに、義母や両親とも相談をして「産みたい」と医師に伝える決意ができました。

エコー写真(渡邉さんより提供)

その後の検査で、胎児はまさかの5人に。しかし医師からのフォローもあり出産に踏み切りました。

絶対安静の5ヶ月、そして帝王切開へ

渡邉さんは妊娠4ヶ月目から約5ヶ月間、絶対安静の入院生活に入りました。

最初の1ヶ月は点滴を受けながらトイレのみ許可される状態で過ごし、その後の手術で軽い破水が起きてからは、完全なベッド上で安静に。トイレもベッド上で行う24時間寝たきりの生活が続きました。

さらにお腹の張りを抑える点滴の副作用で激しい動悸が常に続き、まるでマラソンをしているような苦しさに。精神的にも不安定になる日々が続きましたが、渡邉さんは耐え抜きました。

出産の目標は、胎児の肺が完成する妊娠8ヶ月0日。この時期に帝王切開を予定していたためです。
「1週間で出産の決断、1ヶ月後に入院」と、目まぐるしい日々だったと振り返ります。

そして妊娠8ヶ月0日、予定通り帝王切開を実施。出産には20〜30人の医療スタッフが対応し、5人の赤ちゃんを1分ごとに次々と取り出していきました。赤ちゃんたちは約800gの超未熟児で、すぐに人工呼吸器を装着して保育器へ。しかし5人全員が同じ病院には入れず、県内の複数の専門病院に分散して搬送されました。

生まれたばかりの5人の姿を見た瞬間、多胎妊娠のリスクや不安を乗り越え、無事に出産を迎えられたことに「最後まで頑張れてよかった」と心から思えて涙がこぼれます。

赤ちゃんのころ(渡邉さんより提供)

しかし出産後、渡邉さん自身の体調が急変。血圧が急上昇し、酸素マスクをつけて暗い部屋で安静に。また声が出なくなり、体重も大きく減少したそうです。

それでも「5人の命を無事にこの世に送り出せたことは、想像を絶する経験の中で得た、かけがえのない喜びでした」と語ってくれました。

体調不良、病院通い…5人分の健康管理

生まれた五つ子は、娘さん1人と息子さん4人の五卵性でした。

成人式(渡邉さんより提供)

目まぐるしい毎日の中で五つ子の成長をサポートし、1歳頃からは、資格を持つ保育者の自宅で10時〜16時に預かってもらう「保育ママ制度」を利用し、育児を分担し始めます。

赤ちゃんのころ(渡邉さんより提供)

保育園に入園する2歳までは、義理のお母さんやご両親の協力も得ながら、日中の育児を乗り越えました。風邪はすぐに兄弟間でうつり、病院通いが頻繁に。複数の医療機関を使い分け、感染症のたびに体調管理に追われる日々が続きました。

渡邉さん自身はもともと虚弱体質でしたが、育児中は気が張っていたため、寝込むことはほとんどなかったといいます。

小さいころの家族写真(渡邉さんより提供)

幼い頃の5人は仲の良い兄弟で、常に一緒に行動していたそうです。小学校ではクラスが分けられ、中学校では全員が別のクラスに。その頃から、少しずつ個々の距離感が生まれていきました。

小さいころの家族写真(渡邉さんより提供)

さらに中学生になると、一人が「みんなと一緒に寝たくない」と言い出し、それをきっかけに兄弟間にも自然な距離感ができるように。高校は全員が別々の学校へ進学し「五つ子の○○」とひと括りにされることもなくなりました。

「それぞれが自分らしい道を歩むようになり、結果的に良い方向に働いたと感じています」と渡邉さんは話します。

進路も別々に…それぞれの道を歩む5人

現在、25歳になった5人は、全員が一人暮らしをしています。そして必要なときに連絡を取り合う、無理のない自然な距離感を保っているそうです。

家族で(渡邉さんより提供)

渡邉さん自身は全員が巣立った今「やりきった」という達成感があり、寂しさは感じていないと話します。子どもたちが自立したことで、自分の時間を持てるようになり、精神的にも楽になったとも。

また、子どもそれぞれがときどき顔を見せてくれることで、ちょうど良い家族のつながりが築けています。

渡邉さんは五つ子の子育てを通じて、他の多胎児家庭や医療関係者との交流が生まれ、地域や社会とのつながりが自然と深まっていきました。

子どもたちの退院時には、ニュースにも取り上げられ、育児雑誌にも掲載されました。そうした経験を通じて、5人の育児という現実に向き合う中で柔軟な考え方や前向きな行動ができるようになり、自分の枠を外して、前向きに生きる力を得ることができたと話します。

自分だけで頑張ろうとしないでほしい

渡邉さんは妊娠前にナガセビューティケァの商品を紹介され、顧客として利用を開始。

子どもたちが1歳半の頃、ビューティコンサルタントに誘われてお仕事を始め、現在は一次代理店のマネジャーとして活躍しています。

仕事をはじめる上で、大切にしていたのは「家庭とのバランス」でした。

子育て中は空いた時間で無理なく活動し、現在もそのスタンスは変わらず、家族を最優先にしながら自分のペースで働ける環境が整っている仕事先に感謝していると話します。

現在の渡邊さん(渡邉さんより提供)

かつては「人前に出るのが苦手」「特にやりたいこともなかった」という渡邉さんでしたが、仕事を通じて、自分の個性や本音を大切にできるようになっていきました。

渡邉さんは「子育てには大変なこともたくさんありますが、子どもの成長を見守る中で親自身も成長していきます。“親育て”とも言える過程には、苦労の中に喜びもあり、2倍の充実感があるように思います」と話します。

また、孤独になりがちな子育てについて、仕事・趣味・コミュニティなど、子育て以外の世界とつながることが大切だといいます。
「誰かと一緒に、何かと並行して取り組むことで、心がふっと軽くなることがある。私にとってのその居場所が「ナガセビューティケァ」でした。」

渡邉さんは、これから出産・子育てを迎える方々へこのようなメッセージをくれました。
「決して一人で抱え込まず、自分だけで頑張ろうとしないでほしいです。どうか無理せず、でも前向きに。あなたらしい子育てを心から応援しています!」

5人の子どもを育てていくうえで、渡邉さんはたくさんの人と繋がり、気持ちも変化していきました。子育ては一人で抱え込まず、周りの人に協力してもらうことや、相談する場が必要だと感じた人も多いでしょう。

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