災害時には、あらかじめどのように避難をするのかを考えておくことが大切です。さらには、障がいを抱えている人など、1人では避難することが困難な人については適切なサポートも必要です。

車椅子ユーザーのはつみ(@sekisonhatsumi)さんは、飛行機トラブルなどで避難が必要になったときのサポートの仕方についてX上に持論を展開しました。

はつみさんのポスト(1枚目)(@sekisonhatsumiさん提供)

投稿には5.1万いいねとともに、多くのコメントが寄せられ話題になっています(2024年2月10日現在)。

これまでの対応は

飛行機に搭乗すると、CAさんから「有事の際はどのようにお手伝いしたらよいですか」と聞かれるというはつみさん。障がいにより車椅子ユーザーであることから避難の方法が難しく「皆が自分にかまっていたら被害者が多くなってしまう」という思いから、本心は「迷惑をかけたくないのでお先に逃げてください」と考えているというはつみさん。

しかし、そう言うわけにはいかず、これまではつみさんは「立てないので持ち上げてもらえれば…」と半笑いで答えていたといいます。

そう応える理由は、365日一緒に暮らす家族ですら、正しい介助やはつみさんが求めている介助、体の特性を理解できない部分があるからです。
障がいの特性は人それぞれで型にはめられません。そのため、CAさんがほんの数十秒の会話のなかで、はつみさんの障がいを理解することは難しいと思ったといいます。

また、はつみさん自身もどう説明していいのかわからず、短い時間ではどうせわかってもらえないという思いもあったそうです。
そのような理由から、はつみさんは「大丈夫ですよ」と曖昧な返事で返し、早く会話を終わらせて映画でも見ようというような対応をしていました。

事故を機に、変化した考え

しかし、2024年1月に起きた飛行機事故を境に、はつみさんの考えが変わります。曖昧な答え方ではなく、しっかり答えようと思い直したはつみさんには次のような理由がありました。

「この考えが変わったきっかけは、クルーの方が機転をきかせてお客さんの避難に全力を尽くしていたことです。また、機長が最後まで確認をしてから1番最後にシューターで降りていて、1人も亡くなった方がいませんでした。さらに後ほど、車椅子の障がい者の方が2名いたということを知り、健常者だけでも無事に誘導するのが大変なのにどのように車椅子の方を運んだのだろうかと思いました。『障がい者でも本当に助かるんだ』というのが本心です」

また、機長やCAの仕事に対する姿勢もきっかけの一つだったといいます。それぞれに家庭や事情があるなかで、自身にリスクがあってもお客さんを避難させている尊い仕事だと感じ、これからは真剣に向き合って、感謝して答えるべきだと思ったそうです。

いざというときに「どう伝えるべきか」

はつみさんは、投稿に寄せられたコメントについて、次のように話しました。

「みなさん一緒に考えてくださり『助からないなんて思うなよ俺が助けてやるから』という寄り添ってくれる言葉だけでもとても励みになりました。また、具体的に救助道具を教えてくださったのがとても助かりました。簡易的な担架のようなものの購入を検討しています。そして本業の方やマニュアルをご存知の方からは『置いていきたくても、そういう決まりなので置いて行けません』という意見があり、それは本当にそのとおりで、絶対私を助けなきゃいけないなら、迷惑かけないように協力しようと、積極的な気持ちになりました」

しかし、いざというときに車椅子ユーザーがとった方がよい行動についてはまだわからない状態だといいいます。
はつみさんがお風呂で転落しかけたとき、家族が駆けつけても、家族もはつみさん自身もどう支えて起こせばよいのかわからず試行錯誤するそうです。そのような経験から「とりあえず私のような足が動かないタイプは後ろの首根っこを掴むか、肩を羽交い締めのようにして引きずってシューターに落としてもらうのが1番かな」と考えているといいます。それでも飛行機の床の素材によっては相当力が必要とのことです。

はつみさんは「人生で1回くらい練習できたら具体的にお願いできそうですね。私が積極的にできることは、体に管を入れることがあるのですが、管をつけていると避難のときに面倒だし私も思わぬ怪我をしそうなので、管はなるべく外していようと思いました。そして体重を自堕落に増やさない、ですね」と、自分にできそうなことを話していました。

車椅子ユーザーになった経緯

はつみさんはブログを運営していますが、そこで得た収入はすべて寄付しています。それは、自身の入院の経験から、医療者、患者共にサポートが必要だと身に染みて感じたことが理由だそうです。

はつみさんが車椅子ユーザーになったきっかけは、仕事中の転落事故でした。
工場の屋根の上の清掃を自主的にやっていたところ、梁ではなく弱い部分を踏み抜いてしまいコンクリートの地面にお尻から落下。1番重い障害等級の脊髄損傷の完全麻痺となり、今の医療では再生医療でも治らないだろうといわれました。 

車椅子ユーザーになったことで気づいたことについて、はつみさんは次のように話します。

「車椅子ユーザーになってから気づいたことは、航空機、鉄道などで必ず声をかけてもらい、大変配慮していただいてるなと思いました。鉄道では、私はエレベーターで移動、スロープを持った駅員さんは階段を走るということがあります。航空機では、格安航空のときは大変で、私だけのために輸送車のような大きな車で搭乗機まで運んでもらいます。私のためにたくさんの方が動いてくださってありがたいです。そして、荷物として預けた車椅子はとても丁寧に運んでくださいます。車椅子になってからまだ3年ですが、みなさん優しくて助けていただいてばかりです」

そして、はつみさん自身ができることについて「道案内や、落とし物のお声がけなど車椅子でもお役に立てることもあるようです。自分を甘やかさず、体力をつけて元気でいることが社会の一員としての私に役割だろうと思っています」と話していました。

はつみさんが話していたように、どのような障がいを抱え、どのようにサポートするのがいいのかは人それぞれ異なります。いざというときのことを考えることは大切ですね。

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