1歳半から3歳頃の子どもは、自己主張が強くなって自分の気持ちを押し通そうとする、いわゆる「イヤイヤ期」と呼ばれます。なかなか言うことを聞いてくれないので、親としても困ってしまうことがあるでしょう。

今回紹介するのは「イヤイヤ期の娘にかけてもらった優しい言葉」についてのエピソードです。

イラスト:23ca

イヤイヤ期真っただ中の2歳の娘

妊娠8か月だったユキ(仮名)さんはイヤイヤ期真っただ中の2歳のミト(仮名)ちゃんと一緒に徒歩8分のスーパーへ買い物に行きました。普段はベビーカーで行くのですが、下の子が産まれたらミトちゃんはベビーカーを譲ることになるため、手を繋いで歩いていくことに。

ミトちゃんも「ベビーカーいや!歩く!」と言うので、ちょうどいいと思ったユキさん。「ママはお腹大きいから、荷物も多いし抱っこって言われてもできないからね?最後まで歩いてね?」とミトちゃんと約束をして出発。

しかし、帰り道のあと5分…というところでミトちゃんの「もういや、抱っこ!」という声。ユキさんは両手に荷物をいっぱい抱えています。そのうえお腹も張っていたので、手を繋ごうとしたところ、ミトちゃんはしゃがんでうずくまってしまいました。

いろいろな工夫や声かけをしても効果がまったくなかったというユキさん。いつもなら「ママ先行くよー」と言って歩き出すところ、今回は車通りが多くて狭い歩道でした。ユキさんは「車が来たらどうしよう…」との焦りから必死に呼びかけを続けていました。

頑なな娘を動かしたのは…

すると、突然ミトちゃんの目の前にしゃがみこんだ人がいたのです。ユキさんは、「一瞬誰か倒れたのかな」とかなりびっくりしましたが、そこには年配の優しそうな女性がミトちゃんと同じ格好でしゃがみこんでいました。

ユキさんが何て声をかけようかオロオロしていると「どしたん?おばちゃんも一緒に休憩していい?」と女性はミトちゃんに声をかけてくれました。「イヤイヤ期の娘のことだから、絶対ギャン泣きする」とユキさんはヒヤッとしたといいます。しかし、意外にもミトちゃんは女性を見つめて固まったままでした。

『イヤイヤ期の娘にかけてもらった優しい言葉②』イラスト:23CA

すると女性はミトちゃんの手を握って「おばちゃんも疲れちゃったから、一緒に歩いてくれへん?」とミトちゃんに問いかけました。するとミトちゃんは「いいよー」とすんなり立ち上がり、2人で歩き出したのです。

女性とミトちゃんの間で「何歳?」「2歳ー」との会話が続いている後ろで、2人にせっせとついていくユキさん。すると信号待ちの場所で、女性が「この年頃の子はほんまあっという間やで。うちは孫も皆大きくなってしもたから、もうこのお手々が可愛くてたまらん。お母さんお腹大きくて大変やけどなぁ。毎日宝物が隣にいるのは、ばーさんからしたら羨ましくてかなわんわ」とユキさんに話しかけてくれました。

その後、女性はマンションの下までミトちゃんと手を繋いでくれて、階段についたら「一緒に歩いてくれてありがとう。お母さん、お腹に赤ちゃんおるんやて!今度はお母さん助けてあげてな」とミトちゃんに笑いかけてくれたのでした。

心が救われた言葉

このときの出来事について、ユキさんに話を聞きました。

ー女性に声をかけてもらえたとき、どう思いましたか?また、なんと伝えましたか?
最初は急に人がしゃがみこんだので、とても驚き、なんて声をかけていいかわからず困りました。また、女性が娘に話しかけたときも、きっと娘が泣き出すと思いヒヤッとしました。しかし、結果とてもありがたいエピソードとなりました。「きっと良いお母さん、おばちゃんとして生きてこられた方なんだろうなぁ」と思いました。
イヤイヤ期の娘にイライラと焦りでいっぱいでしたが、この女性の温かい対応と、娘が宝物だという言葉に心が救われました。

ーこの体験を通して、何か意識していることや気持ちの変化などはありましたか?
正直、今まで道端で声をかけられることに抵抗がありました。なので軽く笑顔でかわしていましたが、今回の経験をきっかけに、話しかけてくれた方にはこっちも温かさをもって丁寧に返そうと思うようになりました。

広い心をもつことが大事

ー育児をする上で、大変なことはどのようなことでしょうか?
自分が寝不足や体調不良だったときに、子どもたちの機嫌に振り回されることが一番大変です。「お母さん今しんどいの」と伝えても、子どもは自分が不機嫌なことしか考えられませんから、放っておくことしかできません。
でもたまに攻撃してきたり、八つ当たりしてきたりすると、こっちもイラッとしてつい感情が爆発してしまいます。大好きな子どもに愛情以外の感情をぶつけることが一番ストレスに感じてしまいます。なので、自分が不調のときが一番大変なことです。

ー同じように育児に悩む方に伝えたいことなどを教えてください。
「暴力的かしら」「テレビ見すぎかしら」「好き嫌いが多いどうしよう」と悩まれている方、私も常に悩みが現れては消えての繰り返しです。でも、正直周りを見渡せるほど完璧な大人なんかいませんよね。だから「自分の子どもも、不完全な部分があってもちゃんと大人になれる、と広い心をもつことが重要だ」と、いつも自分に言い聞かせているので、共有できたら嬉しいです。

つい”しっかり育てないといけない”と思い、完璧を目指してしまうのが育児。しかし、一番大事なのは完璧を目指すことではなく、心に余裕をもって笑顔で過ごすことなのかもしれませんね。

※こちらは実際にユーザーから募集したエピソードをもとに記事化しています。

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