東日本大震災から今年で13年。
「街を元気にしたい」という思いから、陸前高田市で新品種のお米を作っているまーちゃんファーム(Instagram:@machanfarm)。今回はまーちゃんファームの戸羽さんに話を聞きました。

陸前高田市を元気にしたい

東日本大震災により、陸前高田市の農家は農業を再開することが困難な状況に。農機がすべて流されてしまったり、田んぼが瓦礫の山になってしまったりと大きな打撃を受けました。
さらに、高齢者が多く、農業を再び始める人はかなり少ない状況だったといいます。
家族を失った方も多く、町全体も落ち込んでしまっている状況。しかし、戸羽さんはやる人がいないからこそ「農業をやりたい」という気持ちが芽生えたそうです。

お米作りを始めたまーちゃんファーム。しかし、道のりは険しいものでした。

津波による塩害で土の状態は悪く、土の入れ替えを。さらに、大きな石により機械の刃が欠けたり、雑草が生えてきたりと、土の状態が落ち着くまで時間がかかったそうです。

戸羽さん自身も教員から一転して農家になったため、何もかもが初めての経験。農具を揃えるにも高額のお金が必要でした。栽培技術についても、たくさんの人からアドバイスを受けた戸羽さん。自分なりの良い方法を見極めるまでが大変だったとか。

この田んぼのお米粒は高田で作られるすべてのたかたのゆめの種になる(@machanfarmさんより提供)

「強風の日に田植えをして苗が全部抜けしてまったり、雑草が田んぼの中にいっぱい生えてしまったり。情報を聞いたり読んだりしながら妥協せず雑草対策を行いました。一日何度も田んぼに足を運び苗の状況を見ながら追肥をしたり、雑草を抜いたりと、米の生育具合をよく観察して最善の方法を見つけて行きました。そうすることでお米の生育が良くなり収穫量が増えていったんです。知識も技術も未熟な分、誰よりも田んぼに足を運び手をかけることを意識しました」

たかたのゆめが誕生

東日本大震災による津波で、甚大な被害を受けた陸前高田の農地。この土地の誰もが農業を諦めかけたとき、日本たばこ産業株式会社が「陸前高田の農業の復興に役立ててほしい」と新品種『いわた13号』を寄贈してくれました。そして生まれたのが『たかたのゆめ』でした。

「たかたのゆめの名称は全国公募により『たかたのゆめ』と決定されました。復興に立ち上がった農家たちにより、大切に丁寧に栽培されています」

たかたのゆめを生産している農地の多くは、津波被害を受けて土を入れ替えた復旧田。復旧田は、通常の田に比べて地力が弱く、安定した収穫量を確保できない傾向が強く見られるそう。

陸前高田市でしか作れない「たかたのゆめ」(@machanfarmさんより提供)

しかし「陸前高田の水田で、もう一度お米を作りたい、夢と希望をのせたお米になってほしい」という農家の願いを込めて土づくりに励み、多くの関係団体・企業に支えられ、地域限定栽培米として栽培されています。

たかたのゆめは、一般社団法人おにぎり協会さんから“おにぎり認定米”と認められた(@machanfarmさんより提供)

一般社団法人おにぎり協会さんからは「大粒でしっかり粒感があり、さっぱりと滋味ある味わいで、あらゆる具材と相性がいい。冷めてからの食感があまり変化せず、冷めてもおいしい、おにぎりの特性を活かすお米である」とコメントをもらい、たかたのゆめは“おにぎり認定米”と認められています。

『大切な家族に食べて欲しい安心なお米』

できるだけ農薬や体に有害なものを使わず作っているたかたのゆめ。そのため草刈りをこまめに行い、除草剤はなるべく使わないようにしているそうです。

お米の生産過程において、どこを見られても恥ずかしくないよう、まーちゃんファームでは作業工程をInstagramで投稿しています。
口に入るものがどのように作られているのかを消費者にも見てもらうことにより、より安心感が生まれますね。

生産10年目の目標

「10年目はたかたのゆめ、生産量日本一の農家を目指したい」と戸羽さんに意気込みを語ってもらいました。

「まーちゃんファームのお米の安全性も上げていき、それを皆様に分かるように伝えたいです。そして、農業を盛り上げていきたいです」

私たちが普段何気なく食べているお米。その裏には、生産者のたゆまない努力があります。今度お米を食べるときは、生産者の方に感謝しながら食べてみてくださいね。

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