全国各地の古墳から出土し、社会科や歴史の教科書に登場する埴輪(はにわ)。人や馬の形をした素焼きの土器で、死者の魂を守ったり、鎮めたりするものだと考えられています。
今、九州国立博物館のある展示の様子がツイートされ話題になっています。写真は、特別展「加耶」の一部で、馬の形をした埴輪が放牧されているかのように展示されています。なかには仔馬もいるようです。

このツイートをしたなちさん(@OeiDz1)と、九州国立博物館に話を聞きました。
なちさんは、現在大学4年生で日本古典文学を専攻しているそうです。旅行でこの九州国立博物館を初めて訪れ、特別展「加耶」※で埴輪の展示を見ました。
※加耶(かや)は3世紀から6世紀にかけて、朝鮮半島中南部に興った国々の総称。(九州国立博物館HPより抜粋)

ー放牧されている埴輪を見て、どう思いましたか。
第一印象は「メッチャかわいい〜〜〜!!」の一言に尽きました。普段であれば整列して展示されている埴輪たちが自由にスペースを闊歩しているさまがあまりにも可愛らしく、思わず撮影してしまったのがツイートの写真です。埴輪の紹介文も飼育されている馬風に書かれており、他の博物館では見たことの無い個性あふれる展示だったと思います。

ー周りのお客さんも写真を撮っていましたか。
私が訪れた日は加耶展初日ではあったものの大寒波が直撃、積雪予報で外出を控えている人が多かったようで……ツイートには「かわいい展示あるからみんな行こ!!」という気持ちも少しあったかもしれません。

『お馬さんそれぞれの一言コメントもかわいい』(なちさん撮影)

ー放牧されている埴輪以外にも面白いと思った展示はありましたか。
個人的にお気に入りなのは5世紀後半ごろのガラス容器です。1500年近く前の技術でもこんなに透明感があって綺麗なガラス製品が作れるんだなあと感心したのを覚えています。また、これは加耶展に限らず常設展も見て感じたことなのですが、大陸由来の所蔵品が充実しているように感じました。お隣の国と大変近い地理が所蔵品にも現れているのかなあと個人的に感じました。

どうしてこのような展示になったのでしょうか。九州国立博物館の文化財課長白井克也さんに話を聞きました。

ー牧場にいるかのような展示にしたのはなぜでしょう。
通常、動物など生物や物をかたどった形象埴輪は、造形の面白さを鑑賞していただいたり、さまざまな形の埴輪と共に古墳の上での配置を再現し、当時のお祭りを想像していただけるように展示されることが多いと思います。しかし、今回の特別展「加耶」の第9章は、加耶などから倭(当時の日本)にやってきた渡来人たちが馬や牛を飼育する牧(牧場)の経営にかかわったことをテーマとしています。そこで、これらの埴輪も、「牧場で飼育された動物」を描写したものとしての側面を強調しました。

ー特におすすめの埴輪はありますか。
仔馬形埴輪(《四條畷市指定文化財》、大阪府四條畷市・忍ヶ丘駅前遺跡、四條畷市教育委員会蔵)です。たいへん珍しい子どもの馬を表した埴輪で、まだ鞍などの馬具もつけていません。古墳の祭りのためにこのような埴輪を作ることは、馬を子どもの段階から育て上げることによって地域の有力者に貢献した人物がいたことを示しています。

仔馬形埴輪(《四條畷市指定文化財》、大阪府四條畷市・忍ヶ丘駅前遺跡、四條畷市教育委員会蔵)(九州国立博物館より画像提供)

ー九州国立博物館で「これは見て欲しい」という場所はありますか。
特別展「加耶」は、朝鮮半島南部に3~6世紀に栄えた小国群である加耶についての、国内では30年ぶりの大規模な展覧会です。加耶は古墳時代の日本(倭)との交流も盛んで、加耶と倭の文化には合わせ鏡のように対応している部分があります。加耶の興亡にかかわる豊富な鉄製品や、金銀のアクセサリー、さらに渡来人の日本列島での活躍を示す品々から、国際交流の大切さや、今日につながる日本文化の起源を体感していただければ幸いです。

今回、なちさんのツイートに反応して「え、なにこれめちゃくちゃかわいい」「でも、太っちゃうからエサをあげちゃいけないですよね」「Yogiboを置いたらジオラマの完成度がグッと上がると思う」などクスッと笑ってしまうコメントも見られました。九州国立博物館特別展「加耶」は3月19日まで開催中とのこと。かわいい馬を見に気軽に博物館へ行くのもいいですよね。

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