サッカーの真髄は「自由」だ。サッカー選手になりたいと思えば、Jリーグはもちろん、世界中のクラブと契約を目指せる。
実際に、クラブからオファーを受け移籍した選手ではなく、サッカーのために「留学」という形でドイツに渡った選手だけでも、累計2,000人を越える。ただそのほとんどはプロ契約にいたらず、留学の期限を迎えるかビザの期限が切れるタイミングでの帰国を余儀なくされている。
今回はそのドイツへのサッカー留学からスタートした選手で、プロとして3部リーグのクラブで活躍するまでに上り詰めた、山田真史選手に話を聞いた。

ドイツでキャリアアップを目指す

試合後の表情

奈良県の強豪・奈良育英高校出身の山田選手は、毎年冬に行われる全国高校サッカー選手権に出場。走力と1対1の強さを示し、同大会で優れたプレーを見せた35名前後が選ばれる「大会優秀選手」に選出された。

その後は近畿大学へ進学し、Jリーガーを目指していた。ところが監督らとの進路相談で、未来が大きく変わる。

「真史のプレーは、日本より海外のほうが合うんじゃないか」

この言葉で、高校時代の記憶が蘇った。前述の「大会優秀選手」から選ばれる高校選抜に抜擢され、ドイツへ。そこで同じ年代の選手達と対戦し、レベルの高さに大きな刺激を得ていたのだ。コーチの知り合いにコーディネーターがいたこともあり、渡独を決意。2016年、ドイツ6部のFCドルンドルフへ入団した。

「サッカーにコミュニケーションはすごく大事で、言葉を話せないとなと思っていました。そこで語学学校に通え、かつレベルをあまり落とさず試合に出られそうなところを選んだんです」

活躍すればオファーが来る環境で半年、または1年ごとに所属先を変えながら、5部の2クラブ、4部の1クラブで仕事をしながらプレー。2019年にはついに、4部のFCヴィクトリア1889ベルリンとプロ契約を結んだ。さらに主力として戦った2020-21シーズンに昇格。2021-22シーズンは3部でプレーした。

競り合いでは屈強な選手たちともしっかりと渡り合っている

山田選手のキャリアの考え方

ドイツ3部は平均年俸約1400万円を誇る、完全なプロリーグ。元々1部にいたベテラン選手も多く所属する。スタジアムの規模もサポーターの数も、もちろんレベルも4部以下とは大きく異なっていた。

ここまでカテゴリーを上げられた理由を「運もあったかな」と謙遜する山田選手だが、明確な要因も語ってくれた。

「チームメイトや監督とドイツ語でコミュニケーションを取れるようになってから、信頼関係が生まれて試合に出してもらえるようになりました。その国の言葉でコミュニケーションを取るのはすごく大事。あとは、その国のサッカーを理解することですかね」

楽しそうにプレーする姿が印象的だ

ただ、残念ながらチームは4部に降格。チームとは契約満了になる予定で、移籍先を探すことになる。

「移籍先が3部のチームに決まれば活躍して、2部昇格を目指していけたらなと。30代半ばぐらいまでサッカーを続けていきたいですね。現状に満足はしてません。サッカーの面でも人間としても、まだまだ成長できると思っています。ドイツ1部でプレーすることを諦めてないですし、できると信じています」

守備も献身的にこなす

ドイツで6年を過ごした山田選手に、サッカーに限らず海外挑戦を考えている方へのアドバイスをお願いした。

「お金はどうしてもかかっちゃいますが、あんまり不安がらずに一歩踏み出してほしい。コミュニケーションや信頼関係は大事なのでその国の言葉を多少なりとも学んでおいて、行きたいと本気で思うのならすぐにでもチケットを買って行ってみてほしいなと思います」

積極的に仕掛ける姿

サッカー選手ののちも、人生は続いていく。山田選手は30代半ばまでに生活基盤を整えるため、ドイツで日本人の良さを出せるようなビジネスを考えているそうだ。

「人生の最後に、やり切ったな、楽しかったな、とはっきりいえるような人生にしたいんです」
そのために、山田選手はこれからもドイツの地で走り続ける。

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