250gあるチャーハンは100円、エビや魚のフライ、天ぷらは1つ40円。その時々に安い冷凍食品を仕入れては格安で販売。北海道石狩市の「北海道そうざい企画」は、そのあまりにもお得な値段設定と、人柄の良さで地元の人に愛されている総菜店です。看板娘の及川亜樹子さんに話を聞きました。

母から愛を受け、愛を学ぶ

名物の100円チャーハン。250gと食べ応えもあり。

20年以上愛されてきた「北海道そうざい企画」は元々食品の工場で、亜樹子さんの母・小林まゆりさんが経営していました。

「人の喜ぶ姿が見たい」という思いから、工場だけでなく直接商品を売ることができるようにと、札幌市の宮の沢で店をオープン。「生前、母はとにかく人が好きでしょうがなかった」と亜樹子さんは語ります。

10年前に一度会った人の顔を覚えていたり、母に会いたいがために毎週買い物に訪れる家族がいたり……。とにかく人を愛し、愛された母の背中を見てきました。一時期経営が困難になってしまったときは、自宅を手放してでもこの店を守るなど、いつも来てくれている人への愛を第一に考えて行動する母だったそうです。

母が亡き後、愛されていた店を守ることを決意

フライだけでなく天ぷらも40円均一。特に年配客が喜んで購入していた。

そんな母との別れは突然でした。当日も売り場に立っていましたが、帰宅後、心筋梗塞で帰らぬ人に。

急遽葬儀を執り行うことになりましたが、葬儀当日には想像以上の参列者が。店の常連客や、古くから付き合いがあった家族、亜樹子さんが勤めていた美容院の店長も大粒の涙を流していたところを見て「このお店はなんとしても守らなければいけない」と強く思うようになりました。

生前、「自分のしたことは絶対に返ってくる。だから皆を愛するべきなんだ」と事あるごとに母が言っていた意味を、亜樹子さんはここで理解したといいます。

母と一緒に石狩の店に来るためにアイコンへ

母のアイコンと亜樹子さんと亜希奈さんの3ショット。

元々、移転前の店は法律改正によって基準を満たすことができなくなり、移転先を探していました。なかなか良い移転先を見つけることができず頭を悩ませていましたが、母が亡くなった後とんとん拍子にお店が見つかり、無事移転できることに。亜樹子さんは「母が最期の土産に残してくれたのかなと思います」としみじみと語ります。

その際、「母と一緒に新しい店に来るために」という思いから母をモチーフにしたロゴを作成しました。北海道そうざい企画の顔として、店を今も支えています。

これからも値段をなるべく上げず、家族で続けていきたい

40円の惣菜。大人気で取材中も次々と売れ、どんどん追加されていた。

2021年10月に石狩に移転した後、店を構えたもののどんなメニューを出そうか悩んでいました。悩んだ結果、揚げ物40円セールを実施。期間限定のはずでしたが、その安さから訪れる人々がみんな笑顔に。「この笑顔を見てはやめられないね」との父の一言で、値上げせずに今も継続しています。

また、現在は名物となっている100円チャーハンは、近くの工場で働く常連客の「ご飯物が欲しい」という一言から生まれました。移転してもなお、客を愛し客に愛される店です。

現在は、父と妹の亜希奈さんを中心に、兄と亜樹子さんを加えた4人で店を切り盛り。「これからも家族経営で、お値段も上げずに行けるところまで頑張ります」と、亜樹子さんは笑顔で語ってくれました。

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