「フレー、フレー、キナシ!」
2021年6月5日、香川県高松市のキナシ大林病院で、高松西高校の応援部が、医療従事者と患者に向けてエールを送りました。

43代応援部団長・塩淵美輝さんの夢は看護師。幼い頃の経験から、1人でも多くの人を笑顔にできる看護師になろうと日々努力してきました。“誰かを応援する側になろう”と思って選んだのが、西高応援部。そして今回仲間と力を合わせ、医療従事者へ向けての演舞を行いました。

キナシ大林病院でエールを送る、塩淵さん

“夢は看護師” 今は応援部として、誰かを応援する側に

塩淵さんは小学生の頃、双子の兄が病気になってしまったことから、寂しい思いをしていました。しかし看護師さんから「大丈夫?」と優しい声をかけてもらったことで立ち直ることができ「自分もいつか、患者さんはもちろん家族の不安も解決するような、看護師になりたい」と思うようになりました。

高校に入学し、選んだのが応援部。「私は誰かを応援する側の方が向いているのでは?」という気づきと、看護師という夢に重ね、声の大きい自分の特性も生かせるのでは、とも思ったそう。

初めて「振り」をした時は、3分で根をあげたとか。今はもう大丈夫ですとのこと

応援部の部員は、リーダーとチアリーダー合わせて22名です。応援団長であり部員を引っ張る塩淵さんのモットーは「楽しくないと続かない」。明るく楽しい雰囲気でトレーニングを続けてきました。また、屋外練習でも密にならないように注意しつつ、「声だし」「振り」といった演舞の練習を重ねていました。

共に練習をするのは後輩であり2年の副団長・後藤桜希さん(左)

声を出すときは屋外でもマスク。一列になって、ソーシャルディスタンスを守りながら練習します

塩淵さんが1年生の時、応援部は年間約20回以上の地域イベントやフェスティバルなどに出演していましたが、コロナ禍になりイベントは激減。応援部は発表の場を失っていました。

塩淵さんはじめ応援部メンバーは「何かやりたい。エールを直接届けられないだろうか」と、顧問や校長に積極的に相談。そして2021年4月、高松西高校は学生の自主的な企画を地域との関わりに生かそうと「『君の出番だ!』プロジェクト」をスタートさせました。その第1弾が今回の、応援部による医療従事者へのエールでした。

顧問の図子恵太さんも、応援部の出身。「生徒の自主性に任せています」と、あたたかく部員の活動を見守っています。

後輩と共に“感謝の気持ちを届ける”舞台へ

今回の舞台となったキナシ大林病院の駐車場には、応援部の凛としたエールが響き渡り、高校野球でおなじみの応援歌や、華やかなチアリーディングが披露されました。西高応援部にとって、2020年8月に高松市のレグザムスタジアムで行われた無観客の『応援団一斉エール』以来、約10か月ぶりの演舞でした。

チアリーダーと合わせて「応援部」として、医療従事者へエールを送りました

「新型コロナウィルス感染拡大を防ぐため、医療従事者の方々は日々努力し、私たち以上に不安を感じられていると思います。“感謝の気持ちを届ける”をテーマに、頑張ってエールを送りました。演舞が終わると、病院の窓から手を振る医療従事者の姿も見られました。私たちに向かって皆さんが窓から手を振ってくださったのが1番嬉しかったです。私たちの感謝の気持ちが届いたかな?と思いました」

塩淵さんは2020年の夏、大切な先輩たちと一緒に高校野球の応援ができず、寂しい思いをしていました。しかし今回、これからの西校応援部を担う後輩たちと共に演舞でき、場が持てたことに感謝しています。

「今回は医療従事者や患者さんにエールを送ると同時に、私たち応援部がそろって演舞できる貴重な場でもありました。4月に入った1年生がここでデビューし、私は先輩として、彼女たちの成長を実感できました。演舞できたことは、私たちも嬉しいし、ありがたかったです」

演舞の場が持てたことに感謝しているという塩淵さん

7月6日に学内で予定されている野球部の壮行会が、塩淵さんら3年生にとって最後の舞台。応援部として受け継いできたものを後輩たちに託し、引退する予定です。応援部で培った経験と思いを胸に、塩淵さんは看護師という次の夢に向かいます。

「誰かを応援する側でいたい」、次は看護師として誰かを支える側になるのが夢の塩淵さんです。

この記事の写真一覧はこちら