1946年創業、75周年を迎えた香川県高松市の写真館・福家スタジオ。町の写真館として新しい形を追及し、5月末に全館をリニューアルしました。「写真にできることを、写真館から発信したい」と語るのは、2019年に社長に就任した、3代目の福家大介さんです。

“50年後を想像して残すこと”の大切さを胸に

愛機を手に。撮影に際して「撮られる側の気持ちも分からないといけませんね」と笑顔で応えます。

祖父、父、そして自分。75年目を迎えた老舗写真館3代目として、福家スタジオを継ぐ福家さんが大事にしているのは「一写入魂」、そして「写真を残すこと」。

「僕たちは、家族写真やお宮参り、七五三や成人式、ブライダルなど、人生の節目に“写真”という形で関わっています。その人の人生に長く付き合う中、写真の本質は“残すこと”だと思っています」

人生の節目、卒業式パーティーや誕生日会まで、さまざまなシーンを撮影し続けてきました。

福家さんは家族写真を撮る時に、ぷいっとそっぽを向いた反抗期の子どもがいても、そこをあえて撮ります。
「僕も反抗期を経験したから、その子の気持ちが分かるんです。そして思い出になることも。いつか写真を見返した時『ああ、あの頃は反抗期だったね』って思い出が甦るんですよね」

2階へ続く階段はギャラリーにも

写真に残ったシーンや記憶は、いつか思い出として蘇る。そのお手伝いをしていると言います。

「写真を残していてよかったなと思う時が、いつか絶対来るんです。例えば50年後に、ひいおばちゃんが子どもだった頃の写真が残っているって、素敵だと思いませんか?」

写真には思い出も記憶も写っています

魂を込めて1枚の写真を残す「一写入魂」を掲げ、祖父は1946年に写真館を創立し、父は現在の場所へ移転するなど、それぞれの代で挑戦を繰り広げてきました。福家さんもその跡を継ぐことで「残すこと」の重みを感じると同時に、自分のやってみたいことにも積極的に挑戦。継承と革新、その両方にトライしたのが今回のリニューアルです。

町の写真館にできる、新しい形を求めて

1階の受付。ショップコーナーにはカラフルなカメラストラップや、フィルムなどが並ぶ

掲げたコンセプトは「全館どこでもロケーション」。待合室や倉庫として使っていた部屋をリニューアルし、どの場所でも撮影ができるようにしました。

待合室を改造してできた部屋。状況によって部屋を区切ったり、つないだりできます

3階は撮影はもちろん、食事やパーティーにも活用可能。打ちっぱなしの壁に映像が写せるように、プロジェクターが設置されています。またコース料理からお弁当、スイーツなど、食事ができるプランが新設されています。

3階のパーティルーム

「お宮参りや七五三などの撮影後、お客様によっては移動が大変だったり、小さなお子様がいても大丈夫な食事場所が見つからなかったりします。なら別の場所へ移動せず『ここで食事をしませんか?』と声をかけたかったんです」

コース料理をオーダーすることもできます

1つの建物内で、写真撮影と行事が完結できる形。「写真を撮るだけではない、場づくり」、それが町の写真館にできる新しい姿のひとつと、福家さんは考えます。

福家さんは、自身が姉妹店として運営しているナチュラルフォトガーデンmokkiで、写真撮影に加えてパーティーやワークショップなどを実施しており、多くの人に楽しんでもらった経験が、今回にも生かされました。

「2019年に社長を交代し、このスタジオも活性化したいと考えていました。その後にコロナ禍でブライダル撮影が激減する中、自分たちの力で直接お客さんと繋がりたいと考えたんです。最初は『狭いかな?』と心配していましたが、少人数に対応するスタイルは、今の時代にぴったりだと思いました」

グリーンが好きな福家さん。「緑はほっと癒されますね」

ソファコーナーの壁は元気いっぱいの黄色に塗られ、本物の観葉植物が天井から彩りを添えています。ビルの屋上エリアには緑がふんだんに配置され、ブライダルシーンにも活用できそうな雰囲気です。

緑あふれる3階のテラス部分

気軽にお店に入ってもらえる工夫も施しています。

「写真館という存在は、写真を撮る以外ではなかなか入りにくい。だからギャラリーを設置したり、若者の間で人気のフィルムカメラ関係のグッズやストラップを置いて、ショップコーナーを設けたりしています。いずれはコーヒーを出したいですね」

「店の若い人も、今、フィルムカメラを使っているんですよ」フィルムカメラ関係のグッズやストラップが並びます

また、福家さんも猫2匹を家族として迎えており、お客さんの「ペットは家族」だと思う気持ちがよく分かるそう。ペット入館を可能にし、ペットと一緒に撮影できるプランも準備。入りやすい上に楽しく過ごせる写真館を目指しています。

福家さん宅の「つくし」ちゃん。表情豊かなシーンを切り取る

福家さんは「つくし」ちゃんのスタンプを愛用中

人が集うベンチは、町の写真館としての象徴

新しいスタイルを打ち出す中、変わらずに守り続けたい姿もあります。交差点に向かった壁を利用してできたコンクリートのベンチも、その1つ。福家さんの父である現会長が作ったものです。

高松市街に位置する福家スタジオのベンチ。多くの人が行きかう交差点の前にあります

「ベンチは先代が作ったもの。信号待ち時、道行くおじいちゃんやおばあちゃんが座ってくつろいでくれたらいいと考えたのですが、僕も好きでよく座ります。小学生とおばあちゃんがここに座って話す雰囲気が好きで、僕もたまにおしゃべりするんですよ」

建物に込められた思いを受け継ぎ、写真を通じて、より人が自然と集まり会話や思い出が生まれる“場づくり”に力を注いでいるんです。

写真館ができることをここから発信したい、と福家さん

“残すこと”の大切さを心に宿し、シャッター越しに数多くの人生に向き合う福家さん。さらなる「町中に溶け込んだ、町の写真館」を目指し、写真の可能性を信じながら、きょうもシャッターを切っています。