「ちょいワルじいさん」はコロナ禍も活動中! じいさんによるじいさんのための居場所づくり

「ちょいワルじいさん」はコロナ禍も活動中! じいさんによるじいさんのための居場所づくり
ちょいワルじいさんたちが企画した「ちょいワルな同窓会」

きっかけは引きこもりがちな高齢男性の居場所づくり

岡山県北部、那岐山の麓に広がる奈義町で、「ちょいワルじいさん作戦会議」が初めて開かれたのは2017年。保健師を長年勤め、現在は、生活支援コーディネーターとして活動している植月尚子さんが中心となり、奈義町内に住んでいる60〜80代の男性に声をかけ、一緒に活動するメンバーを募り、始まりました。

ちょいワル_1
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農村に暮らす男性高齢者の介護が必要になる過程のひとつは、車などの運転ミスが重なり、家族に免許証の返納を勧められて交通手段を失う。そのため農作業や少しの遠出も難しくなり外に出なくなる。(時間を持て余して飲酒が多くなるケースもある。)そして足腰が弱くなり要介護になるのだそうです。

この連鎖を断ち切るべく、奈義町で「ちょいワルじいさん」が出かけたくなるイベントを企画して「ちょいヨワじいさん」を連れ出そう!と立ち上がったのです。行政主導ではなく、自分たちから事を起こす。地元を良くしていく。

「ちょいワルじいさん作戦会議」はじいさんによる、じいさんのための作戦会議です。

コロナ禍でも月に1回の作戦会議は続けていこう。

ちょいワル_2
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これまで「介護付きちょいワルの旅」「ちょいワルバンド」等、ちょいワル心をくすぐるイベントを企画してきた、じいさんたちにとっても、まさかだったのが新型コロナウイルスの感染拡大でした。イベント開催は難しい状況ではありましたが、自粛が呼びかけられていた時期を除いて、感染予防を徹底した上で定期的に集まり、イベントが出来る様になったら何をしようかを考える「作戦会議」は、途切れる事なく続けてきました。

イケてるちょいワルじいさんも、そうは言っても立派な高齢者。それでも続けて来られたのは、コロナ対策に十分配慮しながら支えてくれる、植月さんや関係者の努力の賜物です。

ちょいワルな同窓会「小学校の思い出を話そうやあ」

2021年3月に開催された「小学校の思い出を話そうやあ」の企画は、2020年7月から作戦会議を重ね、悩みに悩んだ末に開催する事に決まりました。

決め手は「やりてえ!」のじいさんたちの声でした。

ちょいワル_3
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前回開催した「ちょいワルな同窓会」で、昭和初期の奈義町の写真を上映して好評だったことを受けての、今回は第2弾です。少しでもたくさんの人に楽しんで欲しくて、誰でも参加自由にしました。ちょいワルじいさんたちの幼なじみのおばあさんたちも参加しました。

ちょいワル_4
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当日はじいさんたちを含め、男女合わせて50人ほどが参加。中には同級生が5人も揃い、本当の同窓会になった人たちもいました。

ちょいワル_5
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奈義町には昔、5つも小学校があり、各校1学年あたり約30名のクラスが2,3クラスあったそうです。現在の奈義町は小学校が1つしかなく、1学年が約30名の2クラスほどなので、子どもが多かった時代だったのだと驚きました。

ちょいワル_6
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映像を鑑賞し、それぞれの小学校ごとに分かれ、思い出を語り合うことになりました。久しぶりに見る、懐かしいあの顔、この顔。みなさん、上映が始まるとぱっと顔が明るくなって、思い出話に花が咲きます。

ちょいワル_7
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優しくて美人な先生、厳しかった先生や家族3代でお世話になった先生の話など、次から次へ先生の名前があがります。

冬の弁当をストーブや角火鉢の周りで温めていたそうで、たくあんが入っていたらすごい匂いだったという笑い話や、学校の帰り道で食べた“さいじんこ(イタドリ)”、夜釣りに行ったウナギに、イナゴ。缶蹴り、ビー玉、けんぱ、ゴム跳びについての昔話。

「おいしかったなあ。」「楽しかったなあ。」記憶の糸が解けて次々と記憶が蘇ります。

ちょいワル_8
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ちょうど、終戦前後に小学生だった人も多く、貴重な戦争中の話も聞けました。「奈義町の豊沢の交差点。辻商店に面した奈義小学校に続く道。当時は“四つ道”と呼ばれていたその場所で、雨でぬかるんだ道を出征していく兵隊さんを見送った。」

ちょいワル_9
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イベント終了後、感想を聞いてみると、「楽しかった。来てよかった。同級生3人集まれて良かった。懐かしかった。」と皆さん、とても感慨深げでした。

ちょいワル_10
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じいさんもばあさんも、小学生に戻って、記憶の回路がビビビと繋がったようです。ちょいワルな同窓会「小学校の思い出を話そうやあ」は大好評のうちに幕を閉じました。ちょいワルじいさんたちも満足そうです。

生まれ育った奈義町を、いくつになっても生き生きと暮らせる町にする事が、ちょいワルじいさんたちの元気の源。楽しみは自分たちで企んで、みんなで楽しむ。「ちょいワルのワルは“悪”じゃないで。わるごのワルや。」じいさんたちはそう言います。( “わるご”は、やんちゃや、いたずらの意味を持つ。)往年のわるごは、現役のわるご。

これからも、ちょいワルなじいさんたちが、どんな楽しい“わるご”を仕掛けてくれるのか楽しみです。

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