みなさんは自分の住んでいる町の歴史や魅力をどのくらい知っていますか?

普段何気なく目にしているものの中に、その町を作り上げてきた先人たちの様々な思いが隠れているかもしれません。

住民の手で作り上げてきた金光町大谷

岡山県浅口市金光町大谷地区は、江戸時代末期に開かれた金光教の門前町として栄えてきた町です。

安政6年(1859年)に金光大神によって金光教がこの地に開かれたことをきっかけに、農村だった大谷地区へ数万人もの人々が参拝に訪れるようになりました。この参拝者のニーズに応えるため、道路が整備され、商店が立ち並ぶようになりました。明治24年には山陽鉄道が通り、同時刻に大勢の人が到着するようになったことをきっかけに、教会へ向かう途中にある川に住民らの手で橋が渡されます。参拝者のため、住民同士で課題を一つひとつ解決していた大谷地区では、電気や水道の導入も他の地域に比べて早かったといわれています。

自分の町の「あれはなに?」を見つけるきっかけに

築80年の元食堂だった空き家を改装した「スペース金正館」で、今月28日(日)まで「まちかど写真館」が開催されています。事前に開催されたカメラ教室の参加者による、大谷の町を切り取った写真が展示されています。カメラを通して大谷の町を見ることで、街並みの気づかなかった表情を発見してもらおうと、地元住民の有志のグループ「大谷archive(アーカイブ)」が企画しました。

大谷archiveは、地元の各種団体・金光図書館から構成され、地域の文化や歴史資源と地域住民とを繋ぐことを目的として20198月に結成されました。

今回、大谷archive代表の金光英子さん(71歳)に話を伺いました。

金光さんー金正館の前でー

まちかど写真館では、117日(日)に開催された「大谷門前町カメラ教室」に参加した8名の方たち(35歳~77歳)の写真が展示されています。カメラ教室には岡山市・笠岡市と大谷地区以外からの参加も見られました。

他地域からも参加してもらえたことで、住んでいると当たり前になりすぎて気がつかない「あれはなに?」がたくさん見つかったそうです。例えば、金光教の屋根の作りが珍しいと質問があがり、調べてみると「天地神明造り」という伊勢神宮と同じ技法で作られているということが分かったそうです。

大谷の町には素敵な場所がたくさん

活動のきっかけは図書館に残された無声映画

金光さんは、金光図書館職員として40年間勤務(2020年まで館長)する中で、図書館に眠っている町の貴重な歴史資料を住民へ伝えていきたいと考えていました。

図書館に本の他にも古いレコードやフィルムなど、町の歴史資料がたくさんありましたが、なかなか住民にその存在を知られていませんでした。

資料の中には大正13年の大谷町が映った無声映画フィルムがあり、図書館職員が、なんとかこの映画を復活させられないかと、当時の新聞に載っていた映画の紹介記事を参考にあらすじを書き起こしました。そのあらすじを歴史家で40年来の図書館利用者が目にし、時代背景や主人公の人物の成育歴を創作して脚本にしていきました。

すると、一人の男性が大阪からはるばる金光教へ参拝するために、汽車に乗ってやってくるという物語が立ち上がってきました。

この物語を伝えるために「映像だけではなく声優か活動弁士の方がいればいいのになあ。」そう金光さんが思いはじめた頃、縁があって倉敷市在住の活動弁士や楽士に出会うことができ、上映に協力してもらうことになりました。

活動弁士・楽士などの専門分野の人たちが地元にいたなんて驚きだったといいます。

ご先祖様が映っているかも?!

眠っていたフィルムが地域の人の地元への関心を呼び起こす

こうして無声映画を蘇らせる役者たちが勢揃いし、遂に20201114日、初めての上映会が行われ、1121日には岡山映画祭でも上映されました。

上映会の様子

コロナ禍のためYouTube配信を行ったところ、地元の方から「家族全員そろってみていたら、なんと映画の中にひぃじいちゃんが映っとったんじゃ」という反響がありました。

上映をきっかけに、当たり前だと思っていた町の風景に今まで以上に愛着を感じ、自分たちの地域にもっと目を向けたいと人々の気持ちが高まってきているのを感じたと金光さんは言います。

そんな気運が高まりつつある中で開催された「門前町カメラ教室」、その写真の展示を行う「まちかど写真館」でさらに地元住民の地域への思いを高めていくきっかけになれればと、今後も定期的に開催していきたいと思っているそうです。

「一隅を照らす」をモットーに

金光さんは、阪神淡路大震災や東日本大震災など災害が起こるたび、絵本を寄贈したり移動図書館へ本を貸し出すなど、図書館職員として様々な支援を行ってきました。「もともと地域の外に目が向いてしまうタイプの人間だったのですが、コロナ禍で移動ができない状況の中、地元へ目が向くようになったことが、地元の新たな人たちとの出会いに繋がったのではないか。」

個人的にアフガンへ文房具を送る活動も行う中で、現地で活動していた中村哲医師と知り合い「一隅を照らす」という言葉に出会いました。大きなことだけでなく「あなたがあなたらしく、今いる場所を大切に周りを照らしていけばいいんだよ」というメッセージを持ったこの言葉に感銘を受けたといいます。

「今の私にとって一隅を照らすことは、大谷archiveの活動を通して大谷のみなさんのお役に立っていくこと。今年はコロナのことがどうなるか分からないけれど、時代の変化を受け入れながらその時の自分ができることを続けていきたい。」と語る金光さん。

状況が許せばこの活動を地域だけでなく、参拝客のみなさんをはじめ町外にも発信していくことも視野に入れているそうです。

金光さんはじめ、大谷archiveはじめ大谷町の人々の思いと歴史が感じられる「まちかど写真館」は、今月28日(日)まで開催されています。

金正館に展示された写真たち

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