「畑に行く八百屋」――市場から仕入れた野菜を販売する、従来的なビジネスモデルを尻目に、採算度外視の文字通り泥臭い経営手法にこだわる店が、香川県高松市にあります。その名は、Sanukis(サヌキス)。代表の鹿庭大智さんは、まだ日も昇らないうちから県内各地の農家のもとをまわり、新鮮で「力のある」野菜を地元の消費者に送り届けています。

このように表現すると一見、シンプルな営みのように思えるかもしれません。しかし、鹿庭さんが現在のSanukisを形づくるまでの過程には、農家との粘り強い交渉の積み重ねがありました。

Sanukisの外観

「市場に行かんと農家から直接仕入れるんで、(商品を)揃えてくっていうのがかなり難しいですね」

顔が見える小規模販売を貫くには、安定した仕入れが期待できる市場を通すのがより確実な方法です。それでも、あえてリスクを取るのには、持続可能な農業、そして地域経済を思い描く鹿庭さんなりの哲学が。街の小さな八百屋を通して見えてくる、単なる地産地消には留まらない新たな経済の形をレポートします。

農家と真摯に向き合い続けて、不可能を可能に

もともとは塩田だった畑には、大根だけでなくさつまいもなど季節に応じて良質な作物が育つ

2021年1月、鹿庭さんの案内で訪れたのは、瀬戸大橋から近い坂出市の大根畑。器用な運転でワゴン車をバックさせ畑に横づけすると、鹿庭さんはそのまま次々と大根を収穫していきました。畑を管理する宮下泰典さんからはすでに連絡が入っており、いくら獲ったかは事後報告制。お互いの信頼関係の深さがうかがい知れます。

「(有機栽培でありながら)少量多品種じゃなくて、しっかり量を作って。自分の販売ルート見つけてっていうのを本気で」

このように、宮下さんの農業のスタイルを明瞭な言葉で語ってくれた鹿庭さん。現在、取引のある農家は年間で100軒近くに上りますが、Sanukisの店内で目を引く色鮮やかなPOPからも明らかなように、それぞれにきちんとした思い入れがあります。

「作物と話ができるようにならんといかんのや」と語る宮下さん(右)

もちろん、最初からいまのような付き合いができていたわけではありません。アスパラガスの栽培から八百屋に転じて間もなくは、小口の取引先という理由から直接仕入れの話を持ち込んでも断られてばかりでした。それでもあきらめずに農家と向き合い続け、独自にルートを開拓していったのです。

「市場だったらね、市場に行ってあるもん仕入れたらいい。何も気つかわんくてもいいけど」
「いろんな農家と付き合って、自分が何を選んだらいいのかとか、どういうふうにしたら農家の人たちに少しでも還元できるか、ずっと考えてますね」

直接仕入れだからこそ、商品についてより突っ込んだ情報を提供できる

鹿庭さんの商売のあり方は、気配りそのもの。一人ひとりの農業への思いを把握するほか、じゃがいもや人参など1年中ニーズのある品目は、欠品を防ぐために「これは」というものがあっても複数の農家から仕入れます。さまざまな策を尽くしてこそ、Sanukisならではの販売手法は成り立つわけです。