大きな事故や突然のけがは、心にも大きな負担を残します。そこから立ち上がり、前に進み続ける人の言葉には、強さと深い想いが宿るもの。
片目シンガーとして活動する@katamesongさんも、その一人。眼球破裂の事故により片目の視力を失い、精神的にも不安定な時期を経験しました。それでも歌うことを選び、その想いを発信しています。
事故を乗り越える過程で、どんな気持ちと向き合ってきたのでしょうか。@katamesongさんに話を聞きました。
眼球破裂の事故で片方の目の視力を失い…
居酒屋でのアルバイトを始めて3日目、@katamesongさんは掘りごたつで足を踏み外し、グラスを持ったまま転倒。手にしていたグラスは壁との間で割れ、破片が左眉の下に刺さる事故につながりました。
倒れ込み、何が起きたのかも分からないまま強い衝撃と目が開けられないほどの激痛だけが残ったといいます。

病院で医師から「視力は戻りません」と告げられました。大きな怪我を負った自覚はあったものの「きっと治るはず」と信じていたため、その言葉を聞いた瞬間、心の中で何かが崩れ落ち、頭が真っ白になった@katamesongさん。
「当たり前だった日常が一瞬で奪われた現実を受け止められず、悔しさや悲しさに加えて、未来への不安が一気に押し寄せました。しばらくは現実を認められませんでした」と振り返ります。
それまでは家族や友人を心配させまいと涙をこらえていましたが、このときばかりは気持ちが堪えきれず、病院のフロアに響くほど泣きました。

片方の目だけで生活するようになってからは、距離感がつかみにくく、人や物にぶつかったり、階段で転びかけたりと、日常のあらゆる動作が難しく感じられるようになります。メイクもうまくできず、これまで無意識に両目でバランスを取っていたことの大きさを痛感。
さらに、自分の顔を見るのがつらい、人の視線が怖いなど、精神的な負担も重くのしかかりました。
素晴らしい出会いによって前を向けるように…
@katamesongさんは、人生のタイミングごとに素晴らしい出会いがたくさんありました。怪我から立ち直るときに背中を支えてくれた出会い、夢との出会い、それに飛び込むために背中を押してくれた出会い。涙を拭き、地に足がつくよう助言をくれる友人や人生の先輩たちとの出会いがあり、少しずつ前を向けるようになったのです。

また「今までは、怪我のことを恥だと思っていた部分がありました」と@katamesongさん。その気持ちは、今の事務所(@coco.de.7)に入り、同じように困難を抱えながら前を向いている人たちと出会い「ひとりじゃなかった」と気づけたことで、前に進む力へと変化していきました。

活動を続ける中で、温かい言葉をかけてくれる人や応援してくれる方とも出会えた@katamesongさんは「人とのご縁は今の私にとって宝物です」と話します。
さらに「その出会いをつかめたのは、自分が小さくても行動を続けてきたからだと思っています。今は、あのとき一歩踏み出した自分の勇気にも感謝しています」と振り返っていました。
歌うことは自己表現であり、生きる力
怪我をした当時に比べ、現在の@katamesongさんは、片目での生活に慣れ、自分なりの工夫で多くの場面を乗り越えられるようになりました。
とはいえ、片目だけに頼る生活のため、疲れやすさや眩しさ、負担の大きさは今も続いています。
「もしもう片方の目が見えなくなったら…」という不安も抱えながら、見える右目を大切に過ごしているといいます。
「時間はかかりましたが『見える世界が変わった』ことで、以前より精神的な視野が広がった部分もあると感じています」と@katamesongさん。
当初は“失ったもの”ばかりに目が向いていたものの、今では「片目だからこそ出せる強さ」「伝えられる言葉」があると実感しています。そして現在「片目シンガー」としてメジャーデビューを果たしました。

「歌うことは私にとって自己表現であり生きる力でもあるので、今の自分に誇りを持てるようになりました」と明かしています。
自分が痛みを知ったからこそできることがある
怪我をした当時は「自分だけがつらい」と感じていた@katamesongさん。しかし「片目の視力を失った自分でさえ苦しいのなら、もっと厳しい状況にいる人はどんな思いでいるのだろう」と考えた瞬間、じっとしていられなくなり「自分にできることは何か」と向き合うようになりました。
日常生活では、初対面の人からも毎日のように「目をどうしたの?」と聞かれることが多かったため、この“目立つ見た目”が誰かの力になれるのではと考えます。そして、国や言語を越えて届く“音楽”なら自分の思いを伝えられるかもしれないと感じ、SNSでの発信をスタートしました。

@katamesongさんは「私には誰かの根本的な痛みを取り除くことはできません。病気を治すことも、戦争を止めることなど何もできないけれども、歌で誰かの痛みに寄り添うことはできるのではないかと思っています。そのため誰かの心に寄り添える歌を歌っていきたいです」と語ります。
メジャーデビューを果たした@katamesongさんは「これからもっと素敵な歌を作り上げていき、誰かの痛みに寄り添えるシンガーとして活躍できるように頑張りたいです」と話していました。
同じような悩みを抱える人たちへ、@katamesongさんは、怪我をした当時は苦しさばかりに目が向いていたことを振り返りながら、受け入れられなくても少しずつ前に進めば、理解してくれる人や優しさに触れる瞬間が必ず訪れると伝えています。そうした積み重ねの中で、自分を肯定できるようになる日が来ると実感したそうです。
また、優しさだけでなく傷つくこともあるけれど、その痛みもやがて強さや魅力、そして“武器”になると信じていると伝えていました。
最後に「どうか自分の人生を諦める前に少しだけ、一歩踏み出してみてほしいと思います。その一歩に誇れる日、感謝できる日がきます!」と想いを語った@katamesongさん。
つらい経験を抱えながらも、自分の歩幅で前に進む姿は静かに私たちの心をあたためてくれました。@katamesongさんの歌が、これからも多くの人の力になりますように。

