何気ない一言に、その人の持つ優しさや機転が光り、周囲の心を温かくすることがあります。そんな中、今回「育ちの良さを感じました」と語るのは、30代でアルバイトとして働く女性。
大学時代の部活動で目の当たりにしたという、同期の友人が見せた見事な気遣いのエピソードについて、お話を伺いました。
合宿中のアクシデント。受診をためらう先輩
それは、大学時代の運動部の合宿での出来事でした。A先輩が、練習中に膝の調子を悪くしてしまったのです。
周りの部員たちは「すぐに受診した方がいいですよ!」「近くの病院を探しますから!」と心配して声をかけますが、A先輩は頑なに首を縦に振りません。
「病院に行って『大したことありませんでした』って言われたら、めっちゃ恥ずかしいやん。大げさなことしたって思われるやんか」
「周りに心配をかけて、もし何でもなかったら申し訳ない」という、A先輩なりの気遣いと照れ隠しが、受診をためらわせていたのでした。
「何もないのがいちばん」空気を変えた、同期の一言
どうしたものかと、その場の空気が少し停滞した瞬間でした。輪の中にいた同期のBさんが、A先輩にすかさずこう声をかけたのです。
「いや、何もないのがいちばんですよ」その一言で、場の空気がふっと軽くなりました。「大したことなかったら恥ずかしい」というA先輩の不安を、「何もないのが一番良い結果なのだから、それを確認しに行きましょう」というポジティブな行動へと、瞬時に変換して見せたのです。
この言葉にA先輩も納得し、無事に病院へ行くことに。私もBさんの言葉に深く頷きながら、心の中で「さすが!」と舌を巻いていました。
相手の心を軽くする言葉。私もそんな風に在りたい
Bさんの咄嗟の一言は、A先輩の心を軽くし、正しい行動へと導きました。その見事な機転と気遣いに、私は「育ちの良さ」のようなものを感じずにはいられませんでした。
思い返せば、Bさんは普段から気遣いのできる人でした。飲み会で会話の輪に入れていない人がいれば、さりげなく話を振ってあげる。そんな優しさを何度も見てきました。
この出来事を通して、私は大切なことを学びました。「『こんな症状で病院に行って大げさだと思われたら…』と、受診をためらっている人がいたら、私もBさんのような声をかけられる人間でありたいです。何もなければそれで安心ですし、もし何か見つかれば早期治療に繋がるのですから」
Bさんのたった一言は、ただ先輩を病院に行かせただけでなく、相手の立場を深く思いやる言葉が持つ力の大きさを、周りの私たちにも教えてくれたのです。
このお話のように、誰かの何気ない一言にハッとしたり、救われたりした経験はありますか?
