認知症の飼い主「覚えていない」置いていかれた犬 →保護した数ヶ月後の姿に「幸せな時間をたくさん感じて欲しい」「よく頑張ったね」「涙がとまりません」

認知症の飼い主「覚えていない」置いていかれた犬 →保護した数ヶ月後の姿に「幸せな時間をたくさん感じて欲しい」「よく頑張ったね」「涙がとまりません」
目ヤニでドロドロな姿(@teamoppo_comさんより提供)

「外で飼育している犬が取り残されるので、どうしたらいいのだろうか?」

ある日、突然届いた1本の電話。この電話がゆうちゃんという犬を救うことになりました。
飼い主さんが高齢となり認知症を発症したことで、ゆうちゃんは一匹取り残されることに。そんなゆうちゃんを保護した「おっぽの会(@teamoppo_com)」さんが保護された当初の様や、現在の姿をInstagramに投稿すると「幸せな時間をたくさん感じて欲しい」「よく頑張ったね」「涙がとまりません」と多くの方の心をつかんでいます。

当時の様子と保護活動の現状についておっぽの会のスタッフさんにお話を伺いました。

保護されたゆうちゃん、想像を絶する状態だった

当初、おっぽ会と連携している地域包括センターではご高齢の夫婦を担当していました。奥さんが認知症、旦那さんも認知機能が低下していたことから同じ施設へ入所することになったのだとか。そのため、夫婦が飼っていた犬だけが連れていくことができず、居場所をなくしてしまうため、どうしたらよいのか途方に暮れていたところ、おっぽ会に連絡をすることに。

この電話で、当日中におっぽの会のスタッフさんはゆうちゃんを保護しに現場へ向かいました。しかし、ゆうちゃんの状態は想像をはるかに超えるひどい状態でした。
当時10〜14歳くらいと見られるゆうちゃんは、ドロドロの目やにで目が覆われ、オオカミのように伸びた爪は肉球に刺さり、歩行も困難なほど。

爪が食い込んでしまっている肉球(@teamoppo_comさんより提供)

全身はかさぶただらけのひどい皮膚炎で、フケやノミ・ダニが大量についていました。当時、台風が接近していた季節。暑さと湿気の中、糞尿の匂いが充満する屋外の犬小屋には、毛布も暑さ対策もなく、餌や水も数日間与えられていない様子。スタッフさんがが飼い主であるはずのご夫婦に尋ねても、認知症のためか「覚えていない」とのことでした。

その時のゆうちゃんは、まるで感情を失ったかのように、静かにたたずんでいたと言います。
「ボロボロの雑巾のようで、すべてを諦めているような顔をしていました」。

それでも保護された当日は愛情に飢えていたのか、スタッフさんに抱かれて頭をなでてもらっていたそう。
その後、ゆうちゃんは伸び切っていた爪や傷ついていた肉球の治療、汚れた体を洗ってもらい、入院して数日間の治療と投薬、薬浴によって少しずつ回復していったのです。

スタッフさんに撫でられている様子(@teamoppo_comさんより提供)

保護活動のいま

多くの動物を保護し続けているおっぽ会。ゆうちゃんの出来事を発信したSNSでは大きな反響があったのだとか。
「この一件で地域の包括支援センターとの連携がより深くなりました。当時、緊急保護ライブを見てくださっていた方からは、タイミングごとに近況を伝えると、当時を振り返り本当に良かったと言っていただけます。高齢者の飼育放棄については継続的に問題提起をしていますが、投稿のコメントをみると真剣に受け止めてくださる方の母数が近年遥かに増えたように思います」。

保護活動を続ける人だけでなくとも、人々の意識の変化を感じているようです。

あくびをするゆうちゃん(@teamoppo_comさんより提供)

「ありのままのゆうちゃんでいてほしい」

保護から時が経ち、現在のゆうちゃんは穏やかな日々を過ごしています。ゆうちゃんの年齢も高齢なので寝ていることが多いですが、誰かと一緒にゆったりと寝るのが好きなのだそう。犬だけでなく猫とも仲良く寄り添って寝ている姿にスタッフさんは癒されていると言います。

他の子と一緒に過ごすゆうちゃん(@teamoppo_comさんより提供)

また、そのような姿を見て「ゆうちゃんらしく生きてほしい」とスタッフさんは願います。
「もう暑さや寒さや飢えと戦わなくていいんです。ありのままのゆうちゃんでい続けてほしいです。」

そう語る言葉からは、ゆうちゃんへの深い愛情と、心から幸せを願う気持ちが伝わってきます。そして、その命を支える人々の温かさが、ゆうちゃんのこれからの犬生を豊かに彩っていくことでしょう。

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