日常の仕組みや街の所作に、国ごとの“当たり前”の違いがにじみます。
フィリピン出身のロサさん(仮名・30代/女性/フリーランス英語教師)は、来日当初に体験した小さな驚きと、のちに心に残る出来事を教えてくれました。
便利さに驚き
「東京駅で初めて新幹線の切符を買ったとき、みどりの窓口で現金払いにしました。あとで『券売機でクレジットカードが使える』と知って、本当に驚きました。母国では券売機はコインが基本なので」
支払い方法の違いに触れてから、ロサさんは買い物や切符購入の前に情報収集をするようになったと言います。
「今では当たり前になりましたが、来たばかりの頃は新鮮でした。調べるのは最初は大変。でも慣れるととても便利で、行動の幅が広がりました」
落とし物が戻ってきた
忘れられないのは、友人と電車で移動していたときの出来事です。
「大阪環状線に乗った後、すでに姫路にいた時に、友人がジャケットを網棚に置き忘れたことに気づきました。駅員さんに相談すると確認してくれて見つかり、後日、友人の職場に着払いで配送までしてくれたんです」
母国では「なくしたら戻らない」と諦めることが多かったというロサさん。日本では、落とし物が届く文化や運用に驚き、安心感を覚えたと話します。
「個人の体験ですが、落とし物が戻ってくる確率に驚きました。誠実に対応してくれる人が多いと感じ、胸が温かくなりました」
これから日本で暮らす人へ
ロサさんが伝えたいのは、困ったときに「諦めない」こと。
「物をなくしても、まず交番や駅の遺失物窓口、インフォメーションに相談してください。見つかるかもしれません。
また、多くの人が親切に対応してくれます。敬意を持って接し、公共マナーを守ることが気持ちよい毎日につながると思います」
日本で暮らす私たちにとっては当たり前の「券売機でカードが使えること」や「落とし物が戻る仕組み」も、初めて来た人には驚きや不安になり得ます。
だからこそ、表示や案内をわかりやすく整え、困っている人にひと言添える、そんな小さな配慮を続けたいと感じました。
ロサさんの視点は、日本の“便利さ”と“誠実さ”を支えるのは日々の行動だと気づかせてくれます。日本人として学びの多いお話でした。
