テレビ記者だった女性。マザーテレサに憧れて…その後、現在の姿に「挑戦は続く」「おもしろい」

テレビ記者だった女性。マザーテレサに憧れて…その後、現在の姿に「挑戦は続く」「おもしろい」
被爆ピアノの取材風景。報道記者としてさまざまなテーマに向き合った。

広島駅では、2025年3月に新駅ビルminamoa(ミナモア)がオープンし、同年8月にはついに路面電車がミナモア内に乗り入れるなど、新しい風が吹き、これまで以上に賑やかさを増している。

このミナモアに入るファッションブランドのひとつ、マザーハウスで働く加藤紗千子さんは、テレビ記者から転身したユニークな経歴の持ち主だ。マザーハウスは「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念のもと、バングラデシュ、インド、ネパール、スリランカ、インドネシア、ミャンマーの6ヵ国で生産したプロダクトを、日本、台湾、シンガポールで販売している。

マザーハウスで取り扱っている商品はバッグ、ジュエリー、ストールなどがメインであり、開発途上国との繋がりが強い企業であるため、ファッションに関心がある人だけではなく開発途上国での活動を経験したJICA海外協力隊経験者も多く在籍している。一方で、おもしろいことに加藤さんはJICA海外協力隊経験者でもなくアパレル経験者でもなく、テレビ局勤務経験者である。

加藤さんがテレビ局から転身した背景にはどんな想いがあったのだろうか。

マザーテレサとの出会いから始まるグローバル思考

加藤さんが世界に興味をもったのはカトリック系の学校に通っていた高校生のころ。将来、何になりたいという強い想いがまだなかったあるとき、授業でマザーテレサの映画を見る機会があった。

マザーテレサの姿に感動し「英語も好きだし、国際関係の仕事につきたい!」という思いが湧いてきた。国際関係の仕事につくには何学部が良いのだろうかと考え、大学は法学部に進学し、国際取引法のゼミを選んだ。

しかし学んでいくうちに、国際関係業界には行きたいがやりたいことは法律ではない気がする…と思うようになった。大学2年生の頃には原体験となっていたマザーテレサを追い求めてインドを訪問したこともあった。

大学時代はゼミの活動として、大学対抗の大会に出場

大学3年生のときには国際協力であればJICAだろうと思い、JICAのインターンに応募。北海道にある帯広センターでインターンを経験した。

インターンを経験するまでは「国際協力の現場は途上国」と思っていたが、開発途上国から日本に来ているJICA研修員と一緒に地元企業やカルビーの貯蔵施設に見学に行ったり、市民向けのイベントを手伝ったりしているうちに、日本国内でも「ローカルな土地で世界に貢献できる術があるんだ!」と今後の人生において重要となる「ローカルから発信するグローバル」というキーワードをみつけた。

広島で見つけた新たな挑戦と成長の道

大学卒業後は広島のテレビ局に就職した。
大学卒業が近づき、インド渡航やインターンを経験した上で自分はどんな仕事に就きたいのだろうかと、改めて国際協力業界を目指すべきか悩んだ。そこで「人の心を動かすのは知ることだ」と思い、人にさまざまなことを知ってもらうことができるテレビ局を選んだ。

駆け出しのころはとにかく動き回り、現場に足を運び続けた。報道部ではアメリカ取材もさせてもらい、憧れだった「国際関係」にも関わることができた。報道を経て編成に移ってからは、全社視点での戦略が求められる中、自分のビジネススキルを高めたいと、テレビ局に勤めながら広島県内の大学院に通い、経営について勉強しながら、経営者目線で物事を見る練習や、生き方を問いかけられる授業を受講し、MBAを取得した。

そんなときに目に留まったのが広島に初出店を予定していたマザーハウスの求人だった。

おすすめのバッグのバッグを片手に素敵な笑顔の加藤さん

現場に行けないもどかしさと元々興味があった国際協力、そしてマザーハウスの「ビジネスとして途上国と成長する」というコンセプトがピッタリきた。

マザーハウスは全国展開していたものの、広島では初店舗。初めての業界であり、利益を生む事業も初めて。初めて尽くしの環境だったが「シミント広島店」の副店舗統括責任者として2年間働いた。

ミナモア広島店としてのローカルとグローバルを繋ぐ挑戦

マザーハウスでは、「店長は中小企業の経営者であれ」と言われ、店舗のビジョンから運営など店長の采配で決められる範囲が広い。
「シミント」で働いていたときに広島駅の新しい駅ビルに新店舗を出店することが決まり、新店舗の店舗統括責任者(店長)に抜擢された。

現在勤務する「ミナモア広島店」は2025年3月からスタートし、半年が経つ。同じ広島市内の店舗であっても原爆ドーム前にある「シミント」と広島駅ビル内にある「ミナモア」では客層やニーズが異なる。

バングラデシュの工場長が広島でお客様をおもてなし。

この半年間、ただ商品を届けるだけでなく、何のために店舗が存在しているのかを追求してきた。店舗には広島生まれのレンガやカキ殻粉末を使った店装など、グローバルな製品を取り扱いながらもローカルにもこだわった。

2025年4月には、レザーバッグや革小物の生産をおこなっているバングラデシュの自社工場「マトリゴール」(ベンガル語でマザーハウス)の工場長が「ミナモア広島店」を訪問!店頭で直接、バッグのメンテナンスを行うなど、バッグを通して、生産者と販売者、お客様がつながる場を作ることができ、ローカルとグローバルの架け橋となった実感が持てた。

ゴトウチ チャーム

加藤さんがマザーハウスに転職してから3年目になる。
高校生のときに受けたマザーテレサの影響は原体験となり、JICAやテレビ局を経て今の生き方に繋がっている。

「販売店舗であるがそれにとどまらず、ミナモア広島店だからこそできることを追い求め、お客様にとってほっとしたりふらっと立ち寄れたりする場所を作っていきたい。そして、地域に根付いたブランドを目指し、バッグといえばマザーハウスと思ってもらえるように盛り上げていきたい」

グローバル思考を持ちながらローカルを大切にする加藤さんの挑戦は続いていく。

マザーハウスの革小物

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