病院でエコー検査をした結果…医師「あれ?」 その後、生後5日で心停止した息子。「どうか抱え込まないで」支え続けた母の切実な思いに迫る

病院でエコー検査をした結果…医師「あれ?」 その後、生後5日で心停止した息子。「どうか抱え込まないで」支え続けた母の切実な思いに迫る
6分間の心停止を乗り越え(@shoma_3113さんより提供)

「左心低形成症候群」という病名をご存じでしょうか。
匠真(しょうま)くんはこの病気を抱えて生まれ、生後まもなくから複数回の手術と長期入院を経験してきました。

匠真くんには年の近い兄と妹がいます。35日ぶりに再会したときの様子は、家族の愛情と絆を強く感じさせるものでした。

今回は、左心低形成症候群と向き合った日々、そして兄妹との特別な絆について、ママさんにお話を伺いました。

妊娠7ヶ月、エコー検査で知った事実

妊娠7か月の定期健診で、担当医がエコー画像をいつもより長く見つめ首をかしげました。
「角度の問題かもしれませんが、心臓が少し気になります」と告げられ、1週間後に再受診するよう指示を受けます。

再検査の結果、胎児の左心室が確認できず、胎児心臓専門医のいる病院へ紹介されました。
その日のうちに「左心低形成症候群」と診断されたのです。

心臓は左心室・左心房・右心室・右心房の4つの部屋で構成されています。左心室は全身に血液を送り出すポンプの役割を担うため、発達不全は重篤な心疾患とされています。
生存には出生直後の処置と少なくとも4回の手術が必要とされ、在宅酸素療法が求められる場合もあります。

「普通に妊婦生活を送っていて、普通に生まれてくるとしか思っていなかったので、とにかく絶望的でした」
ママさんは眠れず食べられず、当時1歳4か月だった長男の育児さえままならない日々が続きました。

それでも「私たちの元に来てくれる以上、できることは全力でやろう」と決意し、治療実績の多い病院を探し家族で県外へ転居。出産に備えました。

6分間の心停止を乗り越え(@shoma_3113さんより提供)

6分間の心停止、そこからの奇跡の回復

匠真くんは生後5日目に1回目の手術を受けました。
両親は院内で携帯型PHSを渡され待機していましたが、突然の呼び出し音が鳴ります。

「まさかもう終わったの?」
医師から伝えられたのは「心停止し、現在蘇生中です」という言葉でした。
匠真くんの心臓は6分間止まっていたのです。

ママさんは「もうだめかもしれない」と頭が真っ白になりましたが、匠真くんは懸命に蘇り、その後ぐんぐん回復。
「2歳頃までは元気すぎるほどやんちゃで、さすがあの経験を乗り越えた子だよね!と皆に言われていました」

笑顔で頑張る匠真くんからパワーを…

生後6か月までの入院後も、手術・カテーテル検査・感染症などで再入院を繰り返し、最終的には1年3か月連続での入院生活となりました。

匠真くん(@shoma_3113さんより提供)

「匠真はとても人懐っこく、アイドル的存在でした」

匠真くん(@shoma_3113さんより提供)

言葉を覚える時期だったため、「看護師さん」と言えるようになったときは病棟中が沸いたそうです。

面会は平日がママさん、週末がパパさんの交代制。高速道路を使い片道40分の病院に、ママさんは仕事後にも通いました。体に管がいくつも付いていても匠真くんは笑顔を絶やさず、その姿に家族は何度も勇気づけられました。

35日ぶりの再会に、家族が感じた絆

匠真くんには1歳6か月差の兄と1歳10か月差の妹がいます。
35日ぶりの帰宅の日、兄は少しずつ病気を理解し、妹はハイハイで駆け寄って手を差し伸べました。

長期入院で忘れているかと思いきや、おもちゃの場所も覚えていて、すぐに兄妹と遊び始めたそうです。

ハイハイで近づく妹さん(@shoma_3113さんより提供)
手を差し出しています(@shoma_3113さんより提供)

「特別扱いしすぎない」家族が大切にしたこと

ご両親は「病気だからといって特別扱いはしない」と決めていました。
感染症のリスクは高いものの、可能な限り普通の経験をさせたい。その思いが、ずば抜けてやんちゃな性格を育みました。

ママさんは、匠真くんを通じて「元気に生まれることを当たり前と思わないでほしい」と語ります。
また、同じ病気と向き合う家族にこう伝えます。

「ひとりじゃありません。SNSなどで仲間を見つけられます。どうか抱え込まないで。そしてこの病気の存在を多くの人に知ってほしい」

兄妹3人で(@shoma_3113さんより提供)

姿はなくても、家族の中にいる匠真くん

2023年7月16日、匠真くんは空へ旅立ちました。
今も家族は「まるでそこにいるように」話しかけ続けています。

「しょーちゃん、おはよう」「いってきます」「ただいま」

お菓子も必ず3人分。
兄妹は「しょーちゃん、お菓子もらっていい?」と、お菓子を狙って声をかけることもあります。

兄妹3人で(@shoma_3113さんより提供)

「私たちの中で匠真は形を変えて生き続けています。涙の日もありますが、前を向いて歩んでいきたい」

「とても強くて可愛くて頑張り屋さんの匠真が大好き。これからも家族で歩んでいきます」

小さな体で大きな試練を乗り越えた匠真くん。
その勇姿と家族の絆は、これからも多くの人の心に残り続けるでしょう。

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