東京・府中市にある公園の砂場に突如現れるサンドアートが、地域住民の間で話題を集めている。子どもたちに人気のキャラクターやハロウィン、クリスマスにちなんだサンドアートたちは、小さな命が吹き込まれたようなかわいい作品ばかりだ。砂と水だけでできるこのサンドアートを作っているのは井上敏幸さん。あるきっかけからサンドアートに魅了され、今まで作った数は130作品にも及ぶ。

きっかけは公園で出会った女の子 

取材中にも手際良く作品を作り上げる井上さん。

井上さんがサンドアートを始めたのは、3年前に出会ったある女の子との出来事がきっかけだった。

「テニスが好きなので、以前から壁打ちをしに公園へ行くことが多かったんです。その公園で遊んでいた子どもたちと顔見知りになり、次第に仲良くなりました。ある日、そのうちの一人の女の子の誕生日がもうすぐだと聞き、何か買ってあげるのもな、と考えていた時に砂場の砂でバースデーケーキを作ってあげようと思いついたんです」

砂で作ったバースデーケーキを見た女の子は、とてもびっくりした様子だったという。

「当時はサンドアートの知識がほとんどない状態でした。ですが、作っている時の砂の感触や削る音に強く惹かれるものがあったんです。そこからネットで調べ、公園の砂場の片隅にサンドアートを自己流で作るようになりました」

見てくれる人たちの声が続ける原動力

今年もハロウィンにちなんだ作品を制作予定だ。

サンドアートを作り始めた当初は、イラストや写真を見ながら事前に紙粘土で模型を作り、形などを把握してから制作していたという。徐々に近所の子どもたちが大人たちが見にくるようになり、声をかけてくれる顔見知りも増えていった。

2年前からは、遠方で直接見に来れない人のためにインスタグラムやYouTubeで作品を発信している。

取材中制作してくれたラッコ。愛らしい顔立ちに癒される。

「最初は近くに住む子どもたちが喜んでくれるといいなと思っていましたが、意外と大人の方から癒されると言った感想を聞くことが多いですね。ですが、2年ほど前から、すぐに壊されることも増えたので、そろそろ制作をやめようと思っていました。そんな時に、制作中に出会った女性が『ぜひ続けてほしい』と涙目で伝えてきてくれたんです。それならば続けてみようと今に至っています」

サンドアート制作の道具は自作することも。そんな時間も楽しいと井上さんは話す。

取材中にもサンドアートを制作している井上さんに声をかける人や、写真を取りにきた親子との交流があった。そういった人たちから作品のリクエストをもらい、制作した作品も少なくないという。

「幼少期はプラモデルなどのモノづくりは興味がなかったし、絵も大の苦手でした。でも大人になってから不思議なことに、昔嫌いだったものを好きになっていることが多いんですよ。きっかけはどこにあるか本当にわからない。サンドアート制作も3年目になりますが、作品を見た人に癒しの時間を届けられたらいいですね」

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