「札幌市 無料で雪かきしに行きます【北大生】」という名前で突如として登場したTwitterアカウント。2022年2月9日から3月5日の期間、雪かきのボランティアを行ったアカウントの正体は、北海道大学3年生の藤田道郎(ふじたみちろう)さん。21歳の青年が思い描く理想の未来と、その頭脳に迫ります。

ボランティアは社会的実験

淡々と冷静に語る様子。その言葉1つ1つに様々な意思が感じられた。

以前から「これから単身の高齢者がどんどん増えていく」と感じ、その社会問題に対して何かできないかと考えていた藤田さん。そこで思いついたのが、記録的な豪雪で被害が出ている札幌での雪かきボランティアでした。

SNSを巧みに使いこなす藤田さんでしたが、このTwitterアカウントを開設するまでは、一切Twitterをやったことがなかったといいます。

「SNSはいい人にも悪い人にもなれるんですよね。なので一種の社会実験という感じでした。どんな人が依頼してくるんだろうという興味があったので。結果的には善行ですけど、善行しようという思惑はそれほど無かったです」と言い切ります。

善意だけでは続けられない

雪かきのボランティアという言葉を聞いて、口コミでその存在は広まっていき、藤田さんの元にいくつもの依頼が舞い込んできました。想像以上の反響に驚きましたが、同時にボランティアという文化に違和感を覚えたといいます。

「年齢的に雪かきが困難な老人などの本当に困っている方の助けになるのであれば構わないんですが、まだまだ現役世代の方が依頼してきたケースもありました。いわゆる“できるのに面倒くさい”という人ですね。そんな人に対しても同じくボランティアで対応しなくてはならないって思うと、この仕組みは善意だけで続けられるものではないと感じました」

水色の車を出す依頼を受け、3人がかりで雪かきしている様子。

実際にあった依頼の中には、ボランティアとはいえ正当な対価を払う人がいたり、ボランティアだからと無償で危険な作業をすることになったりなど、様々な現場があったといいます。ですが、そこで腹を立てることはなく、全ての現場を全力で取り組み、依頼をこなしていくことで様々な「経験と知見」を得ることができたと、藤田さんは冷静に話します。

高齢者と若者を繋げるシステムを作る

藤田さん(一番右)と協力してくれた大学の仲間たち。

大学3年生になったので就職するのか尋ねたところ、藤田さんは「休学します」と言い切りました。

「老人をはじめとする普段から困っている人と、若者を繋げるマッチングシステムがあったらいいのではないかなと。お金を払って、バイト感覚で近くに住む若者とマッチングして行ければと思っています」と話します。

そこには、壮大な考えがありました。

「これから高齢化がすすんで、老人は増え続けていきます。それなら高齢者と若者がいいマッチングができれば、それは社会にとっていいことだなって思うんです。あと、オレオレ詐欺に騙される理由って結局は寂しさだと思うんですよね。話すことで詐欺の対策もそうだし、認知症予防も防げるし、これからの社会にとって意義があると考えています」

あまり表情を変えず、淡々と物事を話していた藤田さん。ですが、その目の奥には静かに燃える熱意が感じられました。

藤田さんの思い描く「社会のあるべき姿」を実現する戦いは、まだ始まったばかりです。

雪かきを終え、帰宅する藤田さんたち。帰るころには既に日が暮れていた。

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