「鉄玉」とは字の通り鉄の玉で、鍋ややかんに入れて湯を沸かすと、鉄分が湯に溶出し、鉄分が補給できるもの。阪急うめだ本店やインターネットなどで販売中の鉄玉「TetsutaMacaron(テツタマカロン)」は、ピンク色の愛らしいパッケージと、ハート型の鉄玉が特徴です。大阪府にある鉄メーカー・池永鉄工と、梅花女子大学の学生によって、共同開発されました。

商品開発を進めたチームメンバー5名のうち、梅花女子大学心理こども学部心理学科2年の細田亜由美さん、若林みつきさん、松本なぎささんを取材。「テツタマカロン」の誕生秘話をはじめ、コロナ禍でのオンライン会議を円滑に進めた「心理学科」ならではの学びのポイントを聞きました。

心理学の学びを生かす

開発のきっかけは、2021年4月に心理学科の授業「問題発見・解決セミナー」に持ち寄られた、「女性の目線での商品開発のアイデアを、梅花女子大学から寄せてもらいたい」との池永鉄工からの依頼。2年生78名が15グループに分かれ、それぞれのチームで企画アイデアを練りました。グループワークはほとんどオンラインでのディスカッションでしたが、細田さんたちは心理学の授業で得た学びを生かしながらワークを進めました。

「心理学の授業で学んだ「相手の意見を批判しない」「質より量」「連想と結合(ブレーンストーミング)」を大切にしたので、とても良い話し合いの場が持てました」(若林さん)

梅花女子大学の、若林みつきさん、松本なぎささん。

心理学と企画・商品企画との共通点は「人」の存在。人が商品を手に取る際に何をどう考えるのか、どうやったら女性に興味を持ってもらえるだろうかなど、人の心の動きを考え、心理学の授業で学んだことを活かして会議を進めたと、細田さんは語ります。

梅花女子大学の細田亜由美さん

心理学を根底にした、鉄・心理学・女子大生という、異色の商品開発コラボレーション。そこで誕生したのが「テツタマカロン」なのです。

誕生は逆転の発想から

「鉄の塊をどうすれば女性に手に取ってもらえるのか、客目線を考えるのがとても大変でした。奇抜すぎるものは手に取りにくいだろう、という声が上がりました」(細田さん)

女性が鉄を必要とするのはどんな場面か。細田さんたちメンバーは鉄商品をリサーチしたり、既存商品との違いを出すための必要な要素を考えたりと、さまざまな観点から議論。試行錯誤が続く中、コロナ禍で多くの人たちが自炊をしていたり、健康に気を遣っている人たちが増えたりしていることに注目しました。そして、女性に不足しがちな鉄分を気軽に摂取できる「鉄玉」の存在に行き着きます。

次に、鉄という重厚な素材の商品をどうアレンジするか。可愛らしいもの、食べ物やキャラクターものなど、さまざまな意見が出た中で、鍵となるマカロンのアイデアは逆転の発想から生まれたと、松本さんは話します。

「鉄玉をマカロン形にする案より先に、パッケージに高級感を持たせるアイデアが先行しました。そして『このパッケージに合う商品の形はなんだろう』と話し合う中、焼き菓子のマカロンが候補に出たんです。見た目も可愛いし、いいな!と思いました」(松本さん)

梅花女子大学の正門風景

担当教員のひとり・瀧本優子さんは振り返ります。

「池永鉄工さんの『女性の目線で』という依頼から、健康に気をつける生活面でのリサーチを深め、さらにデータを収集。スライドも可愛らしくデザインされており、商品化へのプレゼンテーションにも説得力がありました。商品化につながるチームワークをしっかりと、プレゼンでも見せてくれました」

そうしてコンペを経て、見事このチームの案が採用されたのです。

「自分だけでは出せないようなアイデアも、誰かと相談しながら進めていくことで、ひとつのものを作ることができました。頭の中のイメージが現実化され、触れられるものになって嬉しい。またやってみたいです」(松本さん)

心理学を学ぶ学生のアイデアから生まれた「テツタマカロン」。販売先からも「可愛いですよね」と評判だそうです。

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