2022年1月、東京都立川市に、カフェを併設したアフリカ布専門店「ADEGO」がオープンした。西アフリカを代表するアフリカ布「WAX」の販売や、WAXを使用したオーダーメイドのアパレルの販売を行っている。

アフリカ布を使い、セミオーダーで自分だけの洋服を作ることができる。

同店のコンセプトは、アフリカ布を通して、アフリカの文化や魅力を伝えること。その背景には何があるのだろうか? オーナーの椎野あやこさんに出店までの経緯や思いを聞いた。

ギャップを感じて知ったアフリカの良さ

店内には数多くのアフリカ布が100反以上ある。広げて見るだけで楽しい気持ちになれるのがアフリカ布の魅力だ。

椎野さんにはガーナ人の父がいるが、生まれ育ったのは日本だった。

「8歳のときに1年間だけガーナに住んでいたのを除き、ほとんどの時期を日本で過ごしてきました。そのため、子どもの頃は自分が他の人と違う見た目だとあまり認識してきませんでした。でも、会話の中で日本とアフリカのハーフですと伝えると、『アフリカの人なのね』と、そこだけ切り取られてしまうんです。英語が話せないことを『もったいない』と言われたこともあります」

小さい頃に感じた、”自分は日本人だと思っているのに、周りからは日本人として見てもらえない”という違和感。

「大学生の時に働いていたバーで、アフリカの歴史についてお客さんが話していたんです。その会話を聞いていた時、自分はアフリカの歴史や文化を全然知らないんだなと感じました。もしかしたら、アフリカのことを学ぶことで自分自身と周りが持ってるイメージにギャップを感じにくくなるのではないかと。それから、徐々に興味を持ち始め、自らアフリカの文化を学ぶなかで、アフリカの魅力を更に知ることができました」

母の一言で始まったアフリカ布専門店

ADEGOの洋服のデザインも椎野さんが行っている。(椎野さん提供)

「ADEGO」というブランドが生まれたきっかけは2016年、椎野さんが大学2年生のときに訪れた。

「母がアフリカ布を使った服を作ってほしいと言ってきたんです。周りにアフリカ布を使ってブランドを立ち上げている方はいたのですが、皆さんカジュアルな洋服が多くて。でも、母はシャツやジャケットなどフォーマルで着れるような洋服が欲しかったみたいなんです。私が少し英語も話せたこともあって、一緒にアフリカ布を買い付けにいきました。それがスタートですね」

母の要望を聞き、椎野さんが洋服のデザインをしながらアフリカ布で洋服を作るADEGOが生まれた。

ADEGOのファッションショーの様子。(椎野さん提供)

イベントの出店も行うようになり、デザインや宣伝など徐々に椎野さんが主導でやるようになった。イベントがきっかけで、クルーズ船でのファッションショーも行い活動の場は徐々に広がっていく。

コロナ禍で動いた実店舗の構想

ADEGO店舗の一部では個人作家が制作したアクセサリーや洋服、地域のお菓子屋さんのスイーツなども販売する。(椎野さん提供)

大学生活の傍ら、ADEGOの活動を精力的に行っていた椎野さんは、ADEGO1本でやるには店舗を持たないと無理だなと思っていたという。だが当時はまとまった資金がなかったため、大学卒業後は派遣社員として働き、店舗資金を貯めながらADEGOの活動を続けていく道を選んだ。

「やっと店舗の資金が貯まり始めたという頃、コロナが広がり始めてしまって。コロナ前にアフリカ布を仕入れていたので、その出費や経費はかかるのにイベントができない。店舗資金も減る一方でした。そのときに母が、『小さいところからお店をやってみなよ』と言ってくれたんです。当初は都心にお店を出すつもりでしたが、母の助言もあり地元の立川市でお店を開こうと思いました」

ピーナッツバナナトースト :イートイン715円(税込)、テイクアウト702円(税込)。このほか、オーガニックのアフリカンコーヒーやアフリカの家庭料理も食べられる。

クラウドファンディングでの資金調達や知り合いの人たちの協力もあり、ADEGOの店舗は次第に形になっていった。

「いろんな人に助けられながら進めていった1年でした。コロナがなかったら、今でもお店を持てなかったと思います。ある意味、良いきっかけでしたね」

アフリカのプラスの側面を発信したい

アフリカ布の種類によって、雰囲気の違ったオリジナルの服が仕上がる。(椎野さん提供)

将来的には都心にも店舗を増やし、アフリカの文化を知ってもらえるような活動をしていきたいという。

外出も楽しくなりそうなアフリカ布を使った日傘。

「日本ではアフリカのイメージというと、飢餓や虐殺などニュースや情報が多い気がします。もちろん、アフリカには支援や医療が必要な地域があるのも事実です。でも、私はガーナを訪れたり、父から聞いたガーナの話を聞いて、アフリカの魅力や文化を発信をする人がもっと増えても良いんじゃないかと思ったんです。ADEGOを通じて私はそこに関わっていきたいですね」

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