妊娠・出産・育児雑誌「たまごクラブ」「ひよこクラブ」の創刊プロデュースを手掛けた、三好洋子さん。現在は一般社団法人「オトナ思春期をデザインするプロジェクト」で代表理事を務め、体や心、暮らしの変化に直面した、40代~50代の人たちの学びやコミュニティづくりをプロデュースしています。話を聞くと、参考にしたいビジネスの精神、そしてエネルギッシュな生き方の秘訣が見えてきました。

ママのニーズやリアルを集めた雑誌

雑誌「たまごクラブ」「ひよこクラブ」(以下たまひよ)は1993年、2誌同時に創刊され、ママの口コミが集まる雑誌として一世を風靡しました。三好さんはこれらの雑誌を、“十月十日(とつきとおか)で創刊した奇跡の雑誌”だと話します。

ひよこクラブ創刊号(提供:ベネッセコーポレーション)

「実はこの雑誌を手掛ける前に、ファッション雑誌を廃刊にしています。当時は『万能感』みたいなものを持っていて、廃刊になったときは自信をなくしました。でも新たにチャンスをもらえて、ちゃんとゼロから始めようと思えました」

創刊当時は女性が少しずつ社会進出を始めた時期。当時はまだ仕事と育児を両立するということも難しく、妊娠・出産を機に社会との接点がゼロになってしまう状況……。そんな中、三好さんが考えたのが「ママ記者」の募集でした。

「雑誌の中に彼女たちの力が生かせる場を作りたかったんです。ママみんなで作るから、みんなのリアル・ニーズが分かるママ記者の力が必要だと思いました」

たまごクラブ創刊号(提供:ベネッセコーポレーション)

新聞に記者募集の掲載をした日、朝から問い合わせの電話が鳴り止まなかったといいます。そして、「たまひよ」はママたちのニーズやリアルを反映した雑誌に成長しました。

こうして、三好さんの活動の原点となる「ニーズを見逃さない」精神が育っていったのです。

声にならないニーズを見逃さないように

三好さんは現在、「オトナ思春期をデザインするプロジェクト」で代表理事を務めています。オトナ思春期(以下オトハル)とは、体や心、暮らしの変化が訪れる40代~50代、いままでと同じやり方では乗り越えられない、いろんな変化が訪れる時期のことを指します。

三好さんは、オトハル世代こそ「ニーズを見逃さない」ようにしなければならないと話します。

「ライフイベントがたくさんある40代~50代は、自分に起きている変化に気づけません。『なんかしんどい』『何かが前と違う』と感じても、自分に何が起きているのか分からない人がほとんどなんです」

イベントでの講演(本人提供)

そのためにも「場」づくりを大切にしている三好さん。「オトナ思春期をデザインするプロジェクト」では、着物の着付け講座を開催したり、お金や医療などのプロからアドバイスを聞ける場を作ったりしています。

また、コロナ禍ではリアルなイベントの開催が難しいという状況から、ラジオでの発信を開始。日本のみならず、海外に住むオトハル世代とも情報共有する場を作りました。ラジオの相談室コーナーには、たくさんの相談が寄せられました。

「みなさん『場』さえ用意すれば、自分で選んで行動するんです。自分に起こっている変化を相談したいとか、新しい友達が欲しいとか、ニーズはたくさんあって。ちょっとしたきっかけだったり、誰かに背中を押してもらったら人は動くんだなって思いました。みんな相談する場所や相談する人がいないだけなんだと」

2019年9月のオトハル関連イベントでスタッフとともに(本人提供)

挑戦するエネルギーを持ち続けたい

最後に三好さんの今後の目標について聞きました。

インタビューに応じる三好洋子さん

「年を重ねても、新しいことに挑戦するエネルギーは持っていたいです。自分が表に出なくても、誰かを応援する形でも、新しいことに取り組むことを恐れない人でいたいなと」

現在もオトハルの活動も行いながら、各プロジェクトごとにチームを作り、挑戦の幅を広げています。「食で未来を創るアカデミー(食アカ)」での活動もその中の1つ。「食を支える人」がより良い人生を歩み、誇りと安心を持って仕事ができる環境づくりに取り組んでいます。

オトハルと食アカのパンフレット

「なんか常にこれやったら喜ぶ人いるんだろうな……ってことを見つけちゃうんですよね。そしてそれがどうやったら実現できるのか常に考えていると、いろんなことをやりたくなってしまうんですよね」

エネルギッシュに語る三好さん。これからも世の中のニーズに耳を傾けながら新たな挑戦を続けていく、そんな姿に筆者も励まされました。

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