砂と水を混ぜて、手で丸めていく泥団子。幼児期や小学生の頃に砂場で作った人も多いのではないでしょうか。筆者の記憶にあるのは、少し触るとポロポロと砂が落ちてくるようなものです。
しかし、その泥団子をつるつるピカピカに作って、10年保存しても状態が変わっていないというツイートが、17.7万いいねになるなど話題になっています。「宝石ですやん」「なんか孵化するんじゃない?」と、そのあまりのつるつるさに驚くコメントが多く寄せられています。

このつるつる泥団子の作者は、小林哲朗さん。9年前まで保育士として勤務していました。現在は主に工場の夜景を撮る写真家で、「夜の絶景写真工場夜景編」など写真集を7冊出版しています。この泥団子を保育士時代につくったという小林さんに、詳しい話を聞きました。

小林さんが写真家として撮っている工場夜景の写真『姫路にある機械城の鮮烈な佇まい』(小林哲朗さん提供)

―どうしたら泥団子がこんなにつるつるになるのですか。
実は、子どもでは達することの出来ない領域なのですが、初めは普通に泥団子をつくるんです。その湿った状態の泥団子の上に、(砂場の砂をふるいにかけた)さら砂を3~4時間まわしてかけ続けます。それを磨いていくんです。そうしたら団子の表面がきめの細かい粘土質のような状態になります。それを乾かしてまたさら砂をかける事を繰り返します。
水分は、中身の泥団子の水分だけです。水気がないのにつるつるした状態です。落としたら割れますし、素手で触ったらひっついてはがれます。だから素手では触れないです。

―作る工程で一番難しいのはどこですか。
泥団子の中心部の水分を徐々に抜いていく事が難しいです。さら砂をかけて磨いてつるつるにした状態で、その辺に置いていると、乾燥して真っ白になるんです。(そうならないために)水分を徐々にぬかないとダメなんです。(泥団子を磨いた状態で)ビニール袋に入れて、6~8時間寝かします。そうしたらビニール袋の中に水滴がつきます。ちょっと水分が抜けているということです。中に入れていた泥団子を取り出して、またさら砂をかけて磨いて、再びビニール袋に入れます。そうしてちょっとずつ水分を抜くんです。大体3日くらいの作業になります。水分がビニールにつかなくなって、つるつるが保てていれば、10年以上保存ができます。
水分を抜くタイミングが難しくて、いまだに理解はしていないんです。今回出来ている泥団子はたまたまできた奇跡の1個です。何回もチャレンジしているんですけど、僕の中でも完全な作り方は確立していないです。

―当時働いていた保育園での園児の反応はどうでしたか?
「すごーい!」とは言うんですが、多分本当のすごさは分かっていないんです。
年長さんくらいになったら何となくすごさは分かるんですけど、年長さんよりもちっちゃい子って、(完成された物を)割りたくなるんですよ。だから、あまり見せていないです。

―今回のツイートには何かきっかけがあったのですか?
実は過去に何回かツイートしているんです。普段はツイート写真の唐草の模様の風呂敷に置いて、プチプチ(気泡緩衝材)をまいて筒に入れているから見えないのですが、たまに取り出して、確認するんです。その時にツイートしています。たまたま作って10年だったので、反響があったのかなと思います。

―ツイートの反響にいかがでしたか?
工場の夜景の写真でバズったことがあるんですが、それを軽く超えてしまいました。泥団子って誰でも作ったことがあるので、それを突き詰めればこうなるということと、最近泥団子キットが売られていますが、そういうのじゃなくて、その辺の砂と水だけでできるというのが衝撃的な事実だったんじゃないのかなと思います。
この泥団子自体は今の仕事には関係ないことですけど、仕事で会った人に「あのツイートあなただったのですね」となったら面白いと思います。

―ツイートを見た方に一言お願いします。
(僕にとって)この泥団子はお金にかえられないもので結構大事です。その1個を作るために僕は保育士をやっていたのかと思うほどです。
コメントを見ると、「やってみようかな」と書いてくれている人がいますが、その辺の公園で無心で出来るのでストレス解消にもなるのでお勧めしたいです。仕事とかには役に立たないけれど、逆にそこがいいのかなと思います。普段の嫌なこととかと切り離して出来るので、童心に帰ってやると楽しいです。

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