医師から告げられたその言葉は、どれほど重く響いたことでしょうか。
10万人に数人といわれる難病「福山型先天性筋ジストロフィー」と共に生きるサリちゃんと、そのご家族を紹介した記事は、多くの読者に命の尊さと家族の絆を伝えました。
前回の記事公開当時、3歳だったサリちゃん。
あれから季節は巡り、現在は来年度に「年長」クラス進級を控えるお姉さんへと成長しました。
発語への新たな挑戦、お母様の緊急入院という予期せぬ試練、そして迫りくる小学校入学への選択。
一歩ずつ、けれど着実に未来を切り拓くサリちゃんご一家の「今」を追いました。
違和感から始まった不安と、1歳で突きつけられた診断結果
サリちゃんが生まれたのは、コロナ禍真っ只中の東京でした。
生後2ヶ月から幼児教室に通い始めましたが、月齢が進むにつれて周囲のお友達との発達の差が目に見えてわかるようになりました。
「お座りができない」「転がるボールを目で追いきれていない」そんな様子を心配した先生からの助言もあり、ご両親は定期健診で医師に相談することを決めました。
生後9ヶ月での検査を経て、サリちゃんが1歳になった頃、確定診断が下されました。
病名は「福山型先天性筋ジストロフィー」9番染色体の異常による先天性の難病であり、一般的に10歳前後から進行が顕著になるといわれています。
「まあ何もないよね」と軽い気持ちで結果を聞きに行ったお母さんに対し、医師から告げられた現実はあまりに過酷なものでした。
「歩くことは難しいでしょう」「知的な遅れもあります」「遺伝子疾患なので治療法はありません」
想定外の宣告に、お母さんは頭が真っ白になり、動揺のあまり「車で来たんですが、このまま運転して帰れますかね?」と医師に尋ねてしまうほど、心は混乱していました。
SNSでつながった「ふくやまっこ」の絆と前向きな決意
診断直後、ご両親は情報の少なさに戸惑いましたが、患者会に入会したことで、先輩パパ・ママから行政の手続きや療育制度について丁寧に教わることができました。
絶望の淵にいたご両親を救ったのは、SNSを通じた出会いでした。
「お子さんの存在自体が不安を和らげるかもしれません」先輩ママからの温かい言葉や、同じ病気の子を持つ家族が明るく過ごす姿に、暗闇の中に光が差し込んだようだったといいます。
当時3歳だったサリちゃんは、移動には抱っこやバギーが必要で、食事や排泄にも全介助が必要でした。
それでも、歌に合わせてリズムを取る愛らしい姿を見せてくれていました。
ご両親は、自身が救われた経験から「恩送り」としてSNSでの発信を開始。
「障害があることは不便ではあるけれども不幸ではない」と語り、普通の育児で体験できることには躊躇なくチャレンジする姿勢は、多くの人々に勇気を届けていました。
年中さんになったサリちゃん、豊かになった感情と広がる世界
「お子さんの病気に治療法はありません」
前回の取材から1年以上が経ち、年中さんの学年になったサリちゃん。
現在は週4回の保育園に加え、週1回の児童発達支援所と理学療法、月1回の作業療法に通い、多忙ながらも充実した日々を送っています。
さらに最近では、発語を促すための「言語療法」も新たに始まりました。
保育園ではたくさんのお友達に囲まれ、楽しく通っているそうです。
訓練の先生方も遊びを取り入れながら工夫してくださり、サリちゃんは楽しみながら力をつけています。
その成長は、日々の行動にもはっきりと表れています。
YouTubeから流れる歌の真似をするレパートリーが増えたり、音が鳴る絵本のボタンを自分で押せるようになったりと、できることが確実に増えました。
一方で、自我の芽生えとともに感情表現もより豊かになりました。
不機嫌なときの絶叫の声は以前より大きくなり、妹さんに嫉妬する場面も増えてきたといいます。
これらはすべて、サリちゃんの心がすくすくと育っている証拠です。
母の緊急入院で痛感した「家族全員の健康」の大切さ
サリちゃんの成長の一方で、この期間中にご家族を襲った大きな出来事がありました。
サリちゃんが夏風邪をこじらせ、気管挿管が必要になるほどの重い肺炎にかかり、長期入院を余儀なくされたのです。
と同時に看病に奔走していたはずのお母さんが持病で倒れ、同時期に入院することになってしまいました。残されたお父さんは退院したばかりの長女であるサリちゃんと、次女の2人を1人で面倒見なければなりませんでした。福祉サービスや保育園の助けを借りながらではありますが、いわゆる「ワンオペ」での生活は、想像を絶する大変さだったそうです。
「母が倒れたら家族に影響が出る」この痛烈な体験を通じて、お母さんは家族皆の健康が第一であり、介護者自身が休息をとることの重要性を身をもって実感しました。
サリちゃんを支え続けるためには、まず支える側である親自身が健やかでなければならない。
そのあたり前で大切な事実を、深く再確認した夏となりました。
迫る「就学」への選択と「やるしかない」という親の覚悟
来年度、サリちゃんはいよいよ保育園生活最後の年「年長」クラスに進級します。
それは同時に、小学校入学に向けた準備が本格化することを意味しています。
地域の小学校に通うのか、それとも特別支援学校に通うのか。
さらに、どのような福祉機器が必要になり、何を新調すべきなのか。
就学に向けて決めるべきことは山積みです。
お母さんは「今から怖じ気付いています」と、正直な不安を吐露してくれました。
しかし、その言葉のあとには「が、やるしかない!」という力強い決意が続きました。
不安は尽きませんが、サリちゃんの本人のいいところを伸ばしてくれるような学校、先生、そしてお友達に巡り会えることを願いながら、ご家族は「就学」という新たなステージに向けて、前を向いて歩みを進めています。
提供元:@happyday20210204さん(Instagram)

