生後4ヶ月で関節の病気が発覚した女性。しかし母「できることは自分で」病気への向き合い方と、現在の活動に迫る

生後4ヶ月で関節の病気が発覚した女性。しかし母「できることは自分で」病気への向き合い方と、現在の活動に迫る
実際に絵を書いている様子(ご本人より提供)

生まれつき複数の関節が固くなる「先天性多発性関節拘縮症」という病気を患っている六鹿(むしか)さん。手足を動かすことが難しいため、日常生活の多くを口を使って行っています。

高校卒業後は介護施設で働きながら、自分にできる方法で仕事に取り組んできました。現在は「口と足で描く芸術家協会」に所属し、口で絵を描く画家として活動しています。

絵を描き始めたきっかけや、作品が評価されるようになった思いを聞いてみました。

複数の関節が固くなる「先天性多発性関節拘縮症」

1999年生まれの六鹿さんは、生後4ヶ月のときに「先天性多発性関節拘縮症」と診断されました。
先天性多発性関節拘縮症は、複数の関節が固くなるため手足を動かすのが困難になるほか、関節が曲がったまま伸びにくいことや筋力が弱いことなどが特徴です。

日常生活では衣服の着脱や排せつ、入浴などに介助が必要となりますが、六鹿さんは幼いころから口を使って身の周りのことをこなしてきました。小学校は特別支援学級で学び、中学校、高校は特別支援学校に進学します。

生まれつきの病気でしたが、自身が病気ということを自覚したのは、保育園や小学校で周囲の子どもたちと同じように活動できない場面があったことからでした。

運動会の徒競走では、六鹿さんも参加できるよう距離を短くするなどの配慮がありました。ありがたい一方で、かえって目立ってしまうこともあり、そうした状況に苦手意識を感じるようになります。こうした経験から「自分は他の子と違う」と感じる場面もあったそうです。

また、小学校では通常クラスで授業を受けることも多く、支援の先生はいたものの、できることは自分で取り組んでいました。しかし、できないことの多さや周りに置いていかれてしまう場面で、周囲との違いを実感することもあったといいます。

「できることは自分で」両親が大切にしてきた教育方針

六鹿さんの両親は、病気がわかったとき、大きな不安や戸惑いを感じたといいます。
「私たちに障がいのある子どもを育てていけるのだろうか」と、当時の思いを振り返りました。

家庭での教育方針は「自分でできることは、可能な限り自分で」ということ。その背景には、時間はかかっても自分でやり遂げる経験を大切にしてほしいという思いが込められていたこと、また自分でできたという経験が、喜びや自信につながると考えていたからでした。

両親にとって、今は六鹿さんの存在がとても頼もしくもあり、一番の相談相手となっているそうです。

アニメ好きから始まった絵との出会い

もともとアニメや漫画が好きだった六鹿さん。好きな作品のファンアート(既存作品のキャラクターなどをもとに、ファンが制作した作品)がSNSに投稿されているのを見て「自分も描いてみたい」と思ったことが、絵を描き始めたきっかけでした。

幼少期の様子(ご本人より提供)

中学校3年生のころからアニメの絵を描き始め、高校からiPadを使ってデジタルで描いているといいます。

口で描くことについては、描きやすい紙のサイズやペンを選ぶなど工夫してきたため、大きなハンデだと感じることはあまりありませんでした。それよりも、構図や色づかいなど表現面で悩むことのほうが多いと話します。

口で描く画家として広がった可能性

その後、16歳のときに賞を受賞し、作品が評価されるようになっていきます。

現在は画家として活動していますが、絵を学校や習い事で専門的に学んだ経験はありません。中学3年生ごろから趣味で描いていたアニメのファンアートが、現在のオリジナル作品を中心とした画家活動の練習になっていたのではないかと語ります。

「レモネード」(口と足で描く芸術家協会より提供)

絵を描くことに対して「障がいがあると、趣味の選択肢が限られてしまうこともあります。ですが絵を描くことに関しては、障がいがあることで苦痛を感じることはなく、むしろ忘れられる時間だと感じています」と六鹿さん。

また「口と足で描く芸術家協会」では、他の人の力を借りて生きるだけではなく、自分でお金を稼いで生活をすることを目標にしています。そこで、アーティストが描いた絵から文具や生活雑貨などに複製して販売をしているため、自分が口で描いた絵で収入を得ることにもつながっているのです。

「フルーツポンチ」(口と足で描く芸術家協会より提供)

六鹿さんの場合は、くまのデザイン画からチャームが誕生しました。そこで六鹿さんは、絵を描くことが趣味としてだけでなく、仕事にも繋がったことがとても嬉しいと語ります。
「絵を描いてきて本当によかったと思います」とも話していました。

また、協会に提出する作品については紙や画材の指定がなく、自分に合った方法で制作ができます。
「そのおかげで、楽しく絵を描くことができていて、その環境にも感謝しています」と語っていました。

これからも自分らしく絵を描き続けたい

六鹿さんは、同じように障がいのある人へ「 障がいについてのエッセイなどで前向きな話を読むと、つい自分と比べてしまい、かえって落ち込んでしまうことがあります。そこで、私の話も『こういう人もいるんだな』くらいの軽い気持ちで読んでいただけたら嬉しいです」とメッセージを送ります。

六鹿さんは最終的な自立は両親と別に暮らすことと考えており、一人暮らしという大きな目標を叶えました。

そして今後については「今の環境を大切にしながら自分らしく絵を描き続け、見てくれた人が少しでも楽しい気持ちになってくれたら嬉しいです」と話していました。

六鹿さんの絵からは、かわいらしさだけでなく、どこか優しい雰囲気も感じられます。これからも、自分らしい作品を描き続けていく活動に注目が集まりそうです。

※作品の無断転載・複製・二次利用を禁じます。

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