「学校を休んでいる自分が嫌だった」。不登校を経験した小中学生の多くは、自分を否定する傾向にあるという。リアルな学校に通学しなくてもオンラインで学べる場があれば、不登校の子どもたちは救われるのではないか。そんな解決策を考えた元教員らが2023年9月1日、オンライン型フリースクール「NIJIN(ニジン)アカデミー」を開校する。

リアルに近いバーチャル校舎設計

「この小さな丸い円のエリアが、子どもや先生の声が届く範囲です。周りの雑談が聞こえたり、肩をポンと叩かれたり。オンラインの教室にリアルな空間を再現します」

校長に就任する元小学校教諭の星野達郎さんが、校舎の様子を説明した。

バーチャル空間の教室でアバター姿の子どもが学ぶ。一人で集中することもできれば、子どもが自分の意思で友達や先生の近くに移動することも可能だ。3階建ての校舎には、運動場も準備する。

NIJINアカデミーのバーチャル校舎1階。アバターと本物の姿の両方を映し出せる(提供)

NIJINアカデミーは不登校になった子どもを主な対象に、小学1年生から中学3年生が学ぶオンラインのフリースクール。1クラス5人という少人数で、担任の先生が子どもの「自然な姿」を引き出し、教科学習に力を入れることが特徴だ。

「リアルな学校に通えなくなった子どもたちに、まずはオンラインの空間で自信を取り戻してもらいたい。そこから『子どもが本当に学びたいこと』が見つかるような、良い循環が生まれると思います」

忘れられない女子の言葉

星野さんは青森県内の元小学校教諭。しかし、一人の女子児童との出会いをきっかけに、学校という学びの場を改革するために起業した。

その女子児童は教室で静かに本を読んでいることが多かったが、1学期のある日、「私、学校が合わないんです」と打ち明けたという。

「この子は学校で”仮の姿”を見せていると、その時に気づきました」と星野さん。

その後、女子児童の観察を深めて、さりげなく周辺からサポートすることを心掛けたという。「本当はどんな自分になりたいのか。心の中にあるものは何だろう」と自問自答しながら。

数か月が経過し、女子児童は笑顔で学校行事の企画に取り組むようになった。3学期には「最高に学校が楽しいです」と笑顔を見せるほどに。星野さんは「子どもたちは『本当の自分』でいられることが一番ハッピーなんだ」と、学んだという。

「不登校の児童生徒は、全国に24万5000人もいます。自分を出せずに苦しんでいる『不登校の子どもを救いたい』と思うようになりました」

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