元マリメッコの石本藤雄さんらフィンランドを語る 高松市美術館35周年で対談

元マリメッコの石本藤雄さんらフィンランドを語る 高松市美術館35周年で対談
「フィンランドの記憶」と題して対談した石本藤雄さん(右)と平井千里馬さん

高松市美術館の開館35周年を記念した企画展「フィンランドのライフスタイル〜暮らしを豊かにするデザイン〜」が2023年4月15日、始まった。オープニングの記念対談では、フィンランドを代表するアパレルブランド「マリメッコ」のテキスタイルデザイナーなどとして、現地で30年以上活躍した石本藤雄さんが登場。82歳の石本さんは時々、笑顔を見せながら「フィンランドの記憶」を語った。

世界一周でマリメッコと出会う

「愛媛県砥部町出身で、実家はみかん農家です。ちょうど愛媛でみかん作りが始まった頃に子ども時代を過ごしました。砥部は焼き物の街でもあります。昭和12年ごろまで、東南アジアに砥部の焼き物が輸出されていたんです」

フィンラン…記念対談)
フィンラン…記念対談)

石本さんは2020年から、松山市内にアトリエとショップを構え、個展の準備などをしながら過ごしている。記念対談は、石本さんの幼少期の話から始まった。

東京の繊維問屋でグラフィックデザインを担当していた石本さんは1970年8月、世界一周の旅に出る。同じように世界一周を経験した会社の先輩から「お前は不満ばかり。外を見た方がいい」とけしかけられたという。

ヘルシンキでは、まずマリメッコを訪ねた。東京藝大で学んでいた頃から石本さんは、マリメッコに興味を持っていたという。そこで「テキスタイルデザインをやりたい」とアピール。すぐに採用はされなかったが、マリメッコの関連会社「ディセンブレ」で働くチャンスを得た。

フィンラン…石本さん)
フィンラン…石本さん)

そこでは年に1度、マリメッコにデザインを見せる機会があった。勤務時間内に、そうしたチャレンジに向けた作業が認められたという。石本さんは3回目の挑戦で、マリメッコに企画が通った。そして、およそ30年に渡ってテキスタイルデザインを手掛けることになる。

石本さんはヘルシンキ到着後の早い時期に、「フィンランド・デザインの良心」とも言われるカイ・フランクに会っている。「少年よ大志を抱け。頑張りなさい」という言葉をくれたエピソードも披露された。

フィンランド(布)
フィンランド(布)

なぜ陶芸の世界に

石本さんは、マリメッコの他に陶器ブランド「アラビア」にも在籍している。その経歴を導いたヒントは、子どもの頃に暮らした砥部町にあった。「家の裏から、陶器のかけらが見つかるようなところに住んでいました。フィンランドでも、自然に陶器に興味を持つようになったんです」

そんな思いを語ったら、カイ・フランクから「趣味の陶芸教室があるから、行ってみればいい」と言われた。石本さんが「もっと本格的にやりたい夢がある」と話すと、アラビアの奨学金制度を教えてくれたという。

奨学生に採用された石本さんだったが、ロクロを回してみた感触は「全然ダメだった」。学生の頃のように上手くできない。しかし、13か月目に発表会を開くことができた。

フィランド…レリーフ)
フィランド…レリーフ)

そして、さまざまな花をモチーフにした一連のレリーフ「陶の花」が誕生する。発表直後は、ダンス会場で声がかからない女性”壁の花”のように売れなかったというが、その後、大人気の作品になった。

「捨てられない物」をつくる

石本さんの対談は、フィンランドの名作シリーズを復刻販売している「スコープ」代表、平井千里馬さんをパートナーに進行した。平井さんは、陶器ブランド「イッタラ」で活躍したオイバ・トイッカと関係を深め、多くの作品を世に送り出してきた。

「フィンランドを初めて訪れた時に、ジュースを飲んだらビンに傷が入っていました。リユースなんです。捨てられないものを作るフィンランドの姿勢に、グッときました」

初の海外旅行で「捨てない文化」に心をつかまれた平井さんは、頻繁に現地を訪問するように。渡航回数は28回を数える。

フィンラン…(バード)
フィンラン…(バード)

ある時、トイッカに「(代表作の)バードを作りたい」と言ってみたら、「いいじゃない」という返事。平井さんは内心「吐き気をもよおすほど緊張」しながら提案したという。実際に工場で平井さんのバードを作ることになった。

「できそうに思えるけれど、実際やってみるとできない」ガラス製造の工程を踏んで、平井さんの新しいバードが完成した。この間、トイッカは「いいね」と反応するものの、「こうすればいい」と教えることはなかった。「彼は僕を鍛えてくれました」と平井さんは笑顔で語った。

暮らしを彩る約750点

会場から石本さんに対し、「松山市での暮らしはどうですか」と質問。石本さんは「よかったことは、いっぱいあります。『なんてたくさんの花が咲くんだろう』と思ったり、花を見ながら『すごい力だな』と感じています」と話した。

「フィンランドのデザインは、見せびらかすものではありません。外向きではなく、内向きにいいんです」。平井さんが対談をまとめた。

フィンラン…平井さん)
フィンラン…平井さん)

今回の企画展では、フィンランドの暮らしを彩る約750点を展示。石本さんの作品は、レリーフ「陶の花」やオブジェ「冬瓜」、マリメッコ時代のテキスタイルが並ぶ。また、平井さんとトイッカが復刻した作品も展示されている。企画展は6月11日まで開催している。

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