香川県善通寺市にある「ハルハルファーム」は、ハリネズミ、ミミズク、メンフクロウ、インコ、ウサギなど、珍しい小動物とのふれあいが楽しめるアニマルカフェです。自家産の果物を使用したタルトや手作業で搾った天然100%のはちみつなど、敷地内にある豊かな自然がメニューにも反映されています。休日には大勢の客が訪れるほどの人気店です。

店を営むのは、動物好きの塩田薫さんと由紀さん夫妻。ハルハルファームで展開される“人と動物が共に築く、優しい世界”をのぞいてきました。

ハルハルファームの店内

小さな動物たちとのふれあい

小動物が活躍するのは、ガラス張りのふれあいルーム。ハリネズミやミミズク、インコ、ポーランドロップイヤーなど、珍しい小動物たちが出迎えてくれます。

【写真】カフェで出会えるかわいらしい小動物たち

ハルハルファームのふれあいルーム

動物担当の夫・薫さんは、1匹1匹を「カスタードくん」「シナモンちゃん」などと愛情込めて呼び、生態や習性、性格を丁寧に説明します。適切な指導下で人と小動物が互いに安心した距離感を保ち、ふれあいを実施。ハリネズミの毛の固さや、メンフクロウの体重の軽さ、ウサギの毛の柔らかさなどが体感できます。

ポーランドロップイヤーは全部で3頭います

コザクラインコの「ピスタチオくん」は、薫さんが発する言葉をいくつか理解しているそう。「さぁ、お姉さんのところに、いってらっしゃい!」という掛け声を合図に、ゲージから客の肩へと飛んでいきます。時にはふれあい最中のウサギの背中でくつろぎます。

コザクラインコのピスタチオくん。部屋の中を上手に飛び、薫さんの言葉を理解して、自分からゲージに戻るほど賢い子です

運が良ければメンフクロウの「カプチーノちゃん」が人の髪を“毛づくろい”する、珍しい場面にも遭遇できます。単純に見える仕草も、塩田さんの説明により、1つ1つの動きに性格や習性が現れていると分かります。

メンフクロウのカプチーノちゃん

展示やアニマルショーとは一味違う空気感が漂う理由を聞いてみると、「生き物さんたちには、それぞれ習性や性格があります。訓練をしているというよりも、僕の方が生き物さんたちに合わせていますね」と、薫さんはどこまでも生き物に寄り添う姿勢を見せます。

アニマルカフェで始まった第2の人生

薫さんの動物好きの原点は、実家が営む黒毛和牛の畜産業。幼い頃から牛やニワトリ、インコと共に育ち、生き物が傍にいる生活を送ってきました。前職は大阪府警の刑事課。15年ほど勤務する間も、生き物好きの経験を生かして、警察犬係に携わることもありました。

2005年に帰郷し、実家の畜産業を営みながら「四国にはない、畜産に連携するお店を作りたい」と思うようになり、ひらめいたのがアニマルカフェでした。妻の由紀さんが地元の産直で販売していた自家製タルトを提供し、さらに大好きな“生き物”にふれあえる場所を作ろうと考えたのです。

オキナインコのチョコミントくんを優しく見つめる薫さん

由紀さんも、仕事の関係で北海道旭川市に住んでいた際には、旭山動物園に毎週通い、どこにどんな動物がいるか知り尽くしたほどの動物好き。夫婦で協力し、展示だけに留まらない、ふれあいが可能なカフェ設立へと踏み出しました。

自家産の果物を主に使用したタルトが並びます。全て1カット330円

思い思いの時間を過ごしている小動物たちのなかには、この店に来るまでに苦労を経験した子たちもいます。

「コザクラインコの『ピスタチオくん』は、元は迷子でした。大阪の警察署で拾得物扱いされ、飼い主が見つからなければ殺処分されるところでした。ご縁あってここに来たタイミングが、ちょうど店のオープンと重なって、今では人が大好きな人懐っこいインコになってくれました」

コザクラインコのピスタチオくんは、人間が大好きとのこと

屋外でのんびりと過ごすケヅケリクガメの「マロンちゃん」も、長野県で“迷子”になっていました。長野県在住の獣医師が連れてきたことで、先住の「マカロンくん」とめでたく夫婦になり、今に至ります。

ケヅケリクガメのマロンちゃんを見て、不思議がるメンフクロウのフラペチーノくん

ハルハルファームは、塩田さん夫妻や小動物たちにとって“第2の人生”が始まった、晴れ舞台でもあるのです。

命のぬくもりを感じて

小動物にも気分や好みや癖があって、生きている。小さな命の息吹をより深く感じてもらうことが「僕たちの一番伝えたいこと」と薫さんは語ります。

ふれあいからパワーを得た元不登校生もいます。
「生き物とふれあった翌日から登校し始めたと、お母さんから喜びの電話をいただきました。今でもリピーターとして来店しながら、頑張っていますよ」
小さな命が何かを考えるきっかけに繋がったことに、薫さんは喜びをあらわにします。

「生き物さんたちは、ただ居心地よくそこにいるだけです。何かを勝手に感じるのは人間の方かもしれません。しかし生き物には何かを変える力があると、僕は思うんです」

ミミズクのエスプレッソくん。別店舗で長年くくられたままでしたが、薫さんが引き取り、今は大切に育てられています

小動物とふれあうことで“感じる何か”を信じる、塩田さん夫妻。小動物のぬくもりがもたらす笑顔や気づきが、ここハルハルファームの幸せな空気を生み出しているのでしょう。

この記事の写真一覧はこちら