当たり前の日常は、ある日突然失われてしまうこともあります。
バレリーナを夢見ていた13歳の@ma___r_ia_さんを襲ったのは「白血病」でした。これまで当たり前だったバレエの日々も、突然途切れてしまいます。
それでも、バレエへの情熱は治療を乗り越える支えとなり、再び舞台に立つことができました。今回は、治療中の思いや現在の活動について、@ma___r_ia_さんに話を聞きました。
コンクールの目前に診断された病
@ma___r_ia_さんは、バレリーナを目指し、日々レッスンに励んでいました。
中学2年生の秋ごろ、頭痛や視界の不調といった異変が現れます。症状は数日続きましたが、当時はレッスンによる過労やストレスだと思っていたそうです。

しかしある日、発熱に加え、座れないほどの腰の痛みに襲われ、近所の小児科を受診しました。血液検査を行ったところ、結果を見た医師の表情が変わったといいます。
その日のうちに大きな病院へ搬送され「急性混合性白血病」と診断されました。診断を受けた瞬間は「なぜ今、私なの?」と言葉にならないほどの衝撃を受けます。
さらに、数週間後にはバレエの国際コンクールを控えていたこともあり、練習を続けられない現実に、悲しさと悔しさから涙がこぼれる日々が続きました。

@ma___r_ia_さんは、描いていた未来が崩れていくような感覚に襲われました。命に関わる不安というよりも、当たり前だった日常を突然失ったことへの喪失感が大きく、しばらくは現実を受け止められなかったといいます。
無菌室で続けた“バレエへの想い”
「急性混合性白血病」と診断後、@ma___r_ia_さんは数回にわたる抗がん剤治療を受け、その後、骨髄移植に臨みました。入院生活は約1年に及び、その大半を無菌室という隔離された空間で過ごします。

闘病生活のなかでつらかったのは、一緒に踊っていた仲間がコンクールに出場したときの様子や、舞台で楽しそうに踊っている姿を見たときでした。
「早く踊りたい」という一心で、@ma___r_ia_さんは自分にできる限りの練習を始めました。医師の管理のもと、体調と相談しながら、点滴台を支えに病室の窓を鏡に見立てて一人でバーレッスンに励みます。ベッドでもストレッチや甲伸ばしを欠かさず続けました。
しかし、体は動かせても無菌室から出られないことにもどかしさを感じていました。同時に、抗がん剤の副作用で髪が抜けていく様子に、強い不安や落ち込みを抱えていたそうです。そのため、髪がどのくらいで生えそろうのかをインターネットで調べることもありました。
そんなつらい闘病生活の心の支えとなったのは、家族の存在でした。毎日、両親のどちらかが病室を訪れ、話をしてくれたといいます。
自由の利かないもどかしさや苛立ちから、きつく当たってしまうこともありました。それでも両親は、どんなときも話に耳を傾け、支え続けてくれました。今は感謝の気持ちを伝えたいと話しています。
また、バレエは@ma___r_ia_さんにとってパートナーのような存在でした。いつか再び舞台に立ちたいという思いが、苦しい治療を乗り越える大きな支えになっていたと振り返ります。
不安を乗り越えた復帰までの日々
@ma___r_ia_さんは14歳ごろに退院し、徐々に通院治療へと移行しました。しかし、すぐに元の生活に戻れたわけではなく、脱毛により髪の毛も生えそろっていなかったため、ウィッグを被っての生活が始まります。
復学のときには、ウィッグがどう思われるのか不安が大きくなりますが、先生方や友達たちが温かく迎え入れてくれたため、徐々に慣れていきました。
また退院直後は、筋力の低下や後遺症により、歩くことさえままならない状態からのリスタートでしたが、バレエへの復帰も果たします。

「少しずつ練習を重ね、退院から4ヶ月後、再びバレエの舞台に立てたときの喜びは一生忘れられません」と、そのときの思いを振り返っていました。
「いのち」と向き合い続けて
@ma___r_ia_さんは白血病と診断され、さまざまな治療に向き合ってきた経験から「いのちの尊さ」と伝えたいという気持ちになります。そのためにまずは医療のこと、そして患者さんとの関わりについて深く知る必要があると考え、看護師国家資格を取得しました。

現在、ダンサー・指導者として多くの方にバレエの基礎はもちろん、踊る楽しさを伝えている@ma___r_ia_さん。自身の経験を交えた講演活動やメディア出演を通じて、生きる喜びや「いのち」のメッセージを広く発信しています。

2025年7月には「アートと社会を繋ぐ」を軸に、多彩なイベントの企画・運営を手掛ける、一般社団法人「ART LINK」を設立。社会貢献活動の一環として小児がん支援のための「レモネード販売」を展開し、売上の一部を寄付に充てるなど、持続可能な支援の仕組みづくりにも尽力しています。
検診や献血、骨髄ドナー登録の重要性を伝えていきたい
自身の体験や現在の活動を通して、@ma___r_ia_さんが伝えたいのは、「当たり前は決して当たり前ではなく、すべてが奇跡の連続である」ということです。
「学校で勉強ができること、仕事ができること、家族に会えること、好きなことに打ち込めること、友達と話すこと。そして、今こうして生きていること。すべてが奇跡です。皆さんの勇気ある行動によって、救われるいのちがあることを忘れないでほしいです」と語っています。

@ma___r_ia_さんは今後も、検診や献血、骨髄ドナー登録の重要性を、一人でも多くの方に届けていきたいと考えています。
毎年、多くの方が白血病などの重い血液の病気と診断されています。その中には、骨髄バンクドナーからの移植を必要とする方もいますが、移植には白血球の型が適合する必要があり、その確率は数百から数万分の1とされています。
こうした現状の中で、@ma___r_ia_さんの活動が、骨髄バンクドナー登録や検診、献血について考えるきっかけの一つになっているのではないでしょうか。

