アパレルショップで買い物をしているとき、広げた服を「きれいに戻さなきゃ」と丁寧に畳んで戻した経験はありませんか?実はその親切心が、プロの販売員さんをちょっぴり困らせてしまっているかもしれません。
今回お話を伺ったのは、以前アパレル販売員として店頭に立っていた、40代の女性。
良かれと思って丁寧に畳んでくださるお客様の行動の裏で、販売員さんが感じていた意外な苦悩について語っていただきました。
「あれ、どの商品?」完璧すぎる畳み方に焦る理由
店頭のラックにカットソーなどの商品が畳んで陳列されているお店で働いていたときのこと。忙しくバタバタしている時間帯に、広げた商品を「元通りに」と一生懸命に畳んで戻してくださるお客様がよくいらっしゃったそうです。
「ブランドや店舗、並べる場所によって、畳み方はミリ単位で細かく決められています。お客様が丁寧に畳んでくださるほど、実はスタッフが畳んだものと区別がつかなくなり、『どのお品物を広げられたのか』が分からなくなってしまうんです」
一見するときれいに見えても、プロの目から見ると「いつからこの状態だったのか」と焦る原因になるのだとか。
「シワ」と「ブランドイメージ」…丁寧な畳み方が生むリスク
せっかく畳んでくれたのに、なぜ困ってしまうのでしょうか?そこにはアパレル特有の「商品管理」の難しさがありました。
「カットソーなどは、袖を内側に折り込む位置などが少しでも違うと、変なシワがついてしまいます。また、お客様が一生懸命に商品を畳んでいる姿を他のお客様が見ると、ブランドや店舗への信頼を損ねてしまう可能性もあるんです」
お客様の気遣いが、店舗にとっては商品のコンディション維持やイメージ管理の面で、予期せぬハードルになっていたのです。
「いらない」と言っても大丈夫。販売員が一番嬉しいこと
元販売員の女性は、お客様が丁寧に畳んでしまう心理についてもこう分析します。
「『広げたけれど買わないのが申し訳ない』『勝手に触って気まずい』という気持ちから、気遣いで畳んでくださるのだと思います。でも、私たちはもっと気軽に声をかけてほしい、いらないなら気軽に断ってほしいと思っていました」
自身が客の立場になったときは、スタッフに声をかけるか、セルフ店であれば「広げたことが一目でわかるよう、あえてふわっと畳んで戻す」ように意識していると言います。
最後に、現場で戦い続けたプロとしての本音を教えてくれました。
「販売員に話しかけにくい空気があるのは、私たちの力不足かもしれません。ですが、本音を言えば、商品は崩れたままでも、そのまま置いておいていただくのが一番助かります。私たちがプロの技術で完璧な状態に戻しますので、お客様にはただ、お買い物を楽しんでいただきたいんです」
お互いを気遣うからこそ生まれる、この「すれ違い」。次にアパレルショップへ行ったときは、思い切ってスタッフさんに「これ、戻しておいてもらえますか?」と声をかけてみるのが、一番の親切になるかもしれません。
