京都に住むフランス人として、日本での暮らしや文化の違いについて、YouTubeやInstagramで発信しているフロリアンさん。
最近では、日本での暮らしの中で感じたことや、価値観の変化を自分の言葉でまとめた書籍『なぜフランス人の僕が、日本を「天国」と呼ぶのか ― 京都で10年暮らして見つけた「奇跡のような日常」』を出版しています。
初めて泊まった日本のホテル。
お風呂場に入った瞬間、正直、戸惑いのほうが先に立ちました。
「カーテンがない」
「これ、どうやって使うんだろう」
今回は、「京都に住むフランス人」として日本での暮らしを発信しているフロリアン さんに、「戸惑う」「日本人でよかった」「最高だよね」などのコメントが寄せられた“日本のお風呂”をめぐる価値観の変化を描いた投稿について伺いました。
1日目、日本のお風呂は「不親切」に見えた
来日して間もない頃、フロリアンさんはホテルのお風呂を前に、
フランスでの習慣どおりに行動しました。
浴槽のすぐ隣にバスマットを敷き、
シャワーを浴びる。
ところが足元はすぐにびしょ濡れ。
シャワーカーテンも見当たりません。
「なんでこんなに床が濡れるんだ」
「設計がおかしいんじゃないか」
そう感じたのも無理はありません。
フランスでは、浴槽の外は濡らさないのが前提。
お風呂は“限られたスペースを、濡らさず使う場所”だからです。
この時点では、日本のお風呂は
使いづらく、よく分からない空間でした。
1ヶ月目、「前提」がまるごと違うことに気づく
バスマットを、お風呂場の「外」に敷きます。
そして気づきます。お風呂場の中は、濡れても問題ない空間なのだと。
床が濡れることは失敗ではなく、前提。
浴槽の中でシャワーを浴びれば、
外に水が飛び散ることもありません。
「そういう仕組みだったのか」。
日本のお風呂は、
空間全体を使う設計になっている。
その考え方を理解した瞬間、
不満は、静かな納得に変わっていきました。
1年後、「お風呂最高」にたどり着くまで
日本での生活が1年を過ぎた頃。
フロリアンさんのお風呂の使い方は、完全に変わっていました。
・洗い場で体を洗う
・そのあと、湯船にゆっくり浸かる
一連の流れが、自然な習慣になっていたのです。
「日本のお風呂は、本当によく考えられている」。
広さ、機能性、快適さ。
一日の終わりに、体と気持ちを切り替える場所として、
お風呂がしっかりと設計されていることに気づきました。
今では、他の国のお風呂を使うと、
少しストレスを感じてしまうほどだといいます。
空間をどう使うか、という思想
この投稿が印象的なのは、
日本のお風呂を「清潔だからすごい」といった表面的な評価で終わらせていない点です。
日本のお風呂には、
・濡れることを前提にする
・区切るのではなく、活かす
・快適さを空間全体でつくる
そんな思想が込められています。
それは、
「失敗しないように制限する」発想ではなく、
「どう使えば心地よくなるか」を先に考える設計でした。
分からなかったからこそ、気づけたこと
最初は、文句を言いたくなるほど分からなかった。
でも、仕組みを知った瞬間、感動に変わった。
フロリアンさんが日本のお風呂で体験したのは、
単なる生活習慣の違いではありません。
前提が違えば、正解も変わるその事実でした。
日本のお風呂は、「こう使うべき」と教えてくれるわけではありません。
使いながら、気づかせてくれる。
この投稿は、違和感の向こう側にある“よく考えられた日常”を、そっと教えてくれます。
あなたが今、「使いにくい」「よく分からない」と感じているものも、もしかしたら、前提をひとつ変えるだけで、「最高」に変わるのかもしれません。




