人が一番後悔するのは、実は“やったこと”よりも“やらなかったこと”かもしれません。
今回話を聞いたのは、40代の女性・美咲さん(仮名)。
彼女が胸に抱え続けていることについて伺いました。
素直に言えなかった
美咲さんは大阪で育ち、結婚後も仕事や育児に追われる中で、何かと母に助けられてきました。
忙しい日に突然家に来て夕飯を作ってくれたこともあったといいます。
「ありがたいと思いながらも、“自分の家庭に口出しされたくない”という意地がありました」
そんな中、母が体調を崩し、手術が必要に。
入院が決まった時、母は弱った声で「迷惑かけてごめんね」とつぶやきました。
美咲さんは「そんなことないよ、今まで感謝しかしていないよ」と言いたかったのに、結局言葉にできませんでした。
強がっていた自分と、押し寄せる後悔
当時の美咲さんには“強く見られたい”という思いがありました。
母に頼る自分を認めたくない。弱いところを見せたくない。
その意地が、素直な気持ちを口にするのを邪魔していたと言います。
しかし母の体力が落ちていく姿を見て、ようやく気づきました。
「気持ちは、伝えられる時に伝えないと間に合わない」
後悔が教えてくれたこと
この出来事をきっかけに、美咲さんは人との向き合い方が変わりました。
職場でも「ありがとう」「ごめんね」を自然に言えるようになり、
家族にはできるだけ言葉で気持ちを伝えるよう心がけています。
「完璧じゃなくていいし、弱さがあってもいい。そう思えるようになりました」
同じ後悔をしないために
美咲さんが感じた後悔の理由は、こう語られました。
「言えるチャンスはいくらでもあったのに、自分の意地で逃してしまったことです」
母の行動は全部“愛情”だったのに、素直に受け取れなかった自分を思い返すと、今も胸が痛むといいます。
だからこそ、美咲さんは誰かに伝えたいと話します。
「大切な言葉は後回しにしないでほしい。照れても下手でも、伝えることに意味があります」
もし当時の自分に声をかけるなら
最後に、美咲さんは少し笑いながら、でも静かにこう言いました。
「意地を張らなくていいよ。お母さんはずっと味方だから、大丈夫だよ」
そして、過去の自分へもうひとつ。
「言葉は人を傷つけるより、救う力のほうが大きいよ」
美咲さんの話は、家庭の事情が特別だったわけではありません。
“近すぎる存在だからこそ、素直になれない”
そんな経験を持つ人は少なくないはずです。
忙しさや照れ、言いにくさに押されて後回しにしてしまうひと言。
そのひと言が、誰かの心を支える時間になったり、
未来の自分を救うきっかけになることがあります。
「伝えたい人の顔」が少しでも思い浮かんだのなら、今日、その一言を届けてみてもいいのかもしれません。
